承「嫉妬×ストーカー=ベストマッチ!」
「ん……」
「んう……。ふっ、ふんうっ……!」
説明しよう。
網橋理子と秋村柑奈は、熱い口づけを交わしていた。
空気の冷えたこの時期。
朝のホームルーム前の、少し早い時間。
空き教室。
そこで、女と少女は愛し合っていた。
「ぐぬぬぬぬぬぬ…………! いつ見ても悔しいですわ……! あんな女といつまでもいちゃいちゃいちゃいちゃ……。許せませんわ、網橋理子………………!」
再び説明しよう。
私の名前は、厳島映。この町、空の宮市が属する県にそこそこの土地を持っている家系の一人娘。言ってみれば「ちょっとリッチな家のお嬢様」である。
私は、「ちょっとリッチな家のお嬢様」である。大事なことであるため、二回言った。
「……ん? ……柑奈、ちょっと待って」
そしてさらに説明しよう。私、厳島映は、秋村柑奈に恋している。
もう大好きである。
愛しているのである。
……それを!
先に!
一学年上の先輩の!
網橋理子が!
秋村柑奈と!
くっついてしまったのである!
「先を越されてしまいましたわー!」状態である。
「……口、開けて」
「……なによ、どうしたの?」
「いいから開けてって」
「もう……」
だからこうして、この二人が別れるのを日々陰ながら待っている次第である。
「……やっぱり。なーんかざらざらしてるなと思ったら、歯に苺の果肉が付いてた。今朝、歯磨……いたっ!?」
「磨いたわよ! ……こんな時にそんなこと言うなんて。ホント、デリカシー無いわよね。理子って」
「はぁ!? 舌入れようとしたら変な感触がして注意しただけなのにデリカシー!? ビンタとかあり得ないし!」
「こっちはえらく傷ついたのよ!」
「傷ついたからって暴力なんて単細胞にも程がある!」
「そんなことでキレる方が単細胞よ!」
「あーあーそうですか! もうついていけないわ! 終わりだこんな関係!」
「上等よ! あんたなんて、こっちから願い下げよ!」
「「ふん!」」
……私にとって、好機っぽい状況ではあったのだが。
…………昼休み、この二人が仲良く学食に現れたのは、言うまでもない。