ふうすみの補導!?
「こんな低俗なところに、本当に秋村柑奈を骨抜きにするアイテムがあるんですの?」
「ええ、もちろん」
「……ところで、どうして私を連れてきたんですの?」
「想い人をロウラクさせるための物なので、是非ともお嬢様に現場で直に触れていただきたくて」
「そう」
説明しよう。
私、厳島映と執事の石見翡翠は、空の宮市の繁華街に繰り出していた。徒歩で。道が細すぎたため、リムジンは繁華街の入り口に置いてきたのだ。
そんなとき。
「おや?」
「……」
「あっ……」
「…………」
二人の少女が、ホテルらしき建物から出てきたのを見かけた。
「……これはこれは、高等部二年の木隠墨子さんと倉田楓さんではありませんか」
「な…………なんということですのぉぉぉっーーー!」
◆
「……まあ、たまにはこういうところも悪くないんじゃないか? なあ?」
「……無理」
「ぅえ!? さ、さすがにこれは、恥ずかしくて……」
後ろを振り向きながらアタシ達についてくる二人へ問いかけると、木隠墨子は顔を真っ赤にしてモジモジし始めた。倉田楓はまあ、いつもの反応だ。
アタシ、巣原椎名とアタシの同居人であり星花女子の教師である緒久間明梨は今日、同級生の木隠墨子と倉田楓の二人……というよりアベックを連れて、空の宮市の繁華街にあるとあるホテルにやって来ていた。
というのも、このホテルの部屋の雰囲気はなかなか二人に合いそうだと前から思っていたのだ。ゆっくりお付き合いするのも悪くはないが……アタシが元気なうちに「イイ感じ」にはなっていてほしいからな。ちょっとくらい、こういう勉強もいいだろう。
「……ま、アンタ達二人は、場所よりも技術の勉強をした方が良いかもしれないけどなー。特に……」
「そ、そんなことありませんよ!」
アタシが倉田楓をチラ見すると、木隠墨子が珍しく突っかかってきた。
「へー。アタシの言ったことの意味がわかるなんて、アンタも以外とむっつ…………」
「そ、それより!」
「ちぇっ」
「楓ちゃん、わたしと一緒に暮らしてからいろいろと練習しているんです! そのおかげで、楓ちゃんも輪っか付きのお箸なら使えるようになったんですよ!」
「……ブイ」
「あー、そりゃよござんしたー」
ブイしてピースって…………かわいいなおい。かわいすぎるだろおい。ホントにあの男からできたのかよ。つーか思いたくねぇ。……アタシと木隠墨子の会話の意味も理解しないでブイとか言っているんだろうな。そこがまたかわいいのだが。
「……んじゃ、アタシ達はロビーで会計済ませてくっから、お二人さんは先に外に出てなよ」
思えば、アタシのこの発言は迂闊だったと後悔……しても時既に遅し。
「椎名、あれ…………」
「ん? ……あ…………」
透明な自動ドアの向こうには、星花女子の教師、石見翡翠と一人の女子生徒らしき少女と鉢合わせた二人が見えた。
「あちゃー、やっちまったー」
輪っか付きのお箸とは、いわゆる「エ◯ソンのお箸」的なあれです。