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なぜか混ざる水と油のゆりっぷる  作者: 壊れ始めたラジオ
貴女の全ては私の物〜You are mine〜
17/30

欲「映×翡翠=ベストマッチ!」

 それから、わたしは住み込みで執事としての技術を仕込まれながら、お嬢様に仕えることになった。


 正直言って以前より快適にはなったが、決して楽なものではなかった。


 一人になる時間など、まったく無かった。


 食事の時も、お嬢様と共に。

 着替えの時も、お嬢様と共に。

 お風呂の時も、お嬢様と共に。

 寝る時も、お嬢様と共に。


 学校でもお嬢様のお側にいるために、小中高全ての教員免許を取らされた。もちろんそれだけに時間は取れないため、厳島いつくしま家から出された特殊な方法で、二年でこれら全ての資格を手に入れた。


 お嬢様はわがままばかり言っていた。


 あれは嫌だ。

 これも嫌だ。

 あれがしたい。

 これを見たい。


 振り回されてばかりだった。


 そんなとき、お嬢様は言った。

 お嬢様が、十歳の頃だった。


「ふふん、私の目は間違っていなかった。やっぱり翡翠ひすいは最高の執事ですわ!」

「…………お誉めに預り、光栄でございます」

「ありがたく思いなさい!」

「……お嬢様」

「なにかしら?」

「……なぜお嬢様は、わたくしにだけ『拒否権は無い』や『嫌だとは言わせない』などと、否定させないような言い方をされるのですか?」

「……不思議に思う?」

「……はい」

「……なにか勘違いをしているのなら、教えてあげますわ」

「……」

「いいこと? 貴女は、これからずっと、私と一緒にいるの。たとえ死が私達二人を別つことがあったとしても、貴女は永遠に私の隣にいないといけないんですの」

「……はい」

「常に私の隣にいないといけない貴女には、いつも気持ちよく仕事をしてもらいたいんですの。だから、貴女はいつでも絶好調でなければならない」

「……それと、どのような関係があるのでしょうか…………?」

「……いつも絶好調なら、私が何を言っても嫌だとは言わないでしょう? 私がどんなことを言っても拒否しないくらい、貴女には幸せでいてほしいんですのよ?」

「……お嬢様…………」

「……貴女を幸せにしてみせますわ。私といる限り」

「お嬢様……!」


 あれは、お嬢様による一種の洗脳だったのかもしれない。


 ……ただそれでも、あの言葉に救われた自分がいたのは、紛れもない事実だった。



 ◆



「……あれから、いろいろなことがありました」

「そうですわね。……翡翠ひすい

「なんでしょうか、お嬢様」

「……今、貴女は幸せ?」

「はい、お嬢様」

「そう。それはよかったですわ」

「……ところでお嬢様。どうぞ、食後のサプリメントでございます」

「気が利きますわね。……はむ。…………で? 一体どんな効果があるんですの?」

「お嬢様の全身の感覚が敏感になります」

「ぶほっ! な、なんてもの飲ませるんですの!?」

「なんの疑いもなく飲んだお嬢様にも非はあるかと」

「余計なお世話ですわ!」


 それでもお嬢様は、笑っていらっしゃいました。


「……お嬢様」

「なんですの?」

「……大好きです。愛しております」

「な、なんですの突然……。……ふふん、当然ですわ! なんたって私は絶世の美少女、厳島映いつくしまうつりなんですもの!」

「熱い自己肯定感でございますね」

「……とはいえ翡翠ひすい、貴女がどれほど私のことを好きでいようとも、私の意中の相手が秋村柑奈あきむらかんなであることは変わりませんわ。それはよろしくて?」

「はい、お嬢様」

「もしそれでも貴女が私のことを好きであるなら……」

「………………」

「……私のことを落としてご覧なさい」

「……承知しました、お嬢様。……では早速ですが、お嬢様には今からこの◯薬入りのお水を一気に飲み干していただきたく…………」

「そういう方法はナシの方向でお願いしますわ!」

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