私「奴隷×オーナー=ベストマッチ!」
わたしは、誰なのか。
それを決めてくれたのは、厳島映お嬢様でした。
◆
わたしは、とある街角のゴミ捨て場で倒れていた。
そんなわたしを偶然見つけた店長は、世話をする代わりに働けと言った。わたしに拒否権は無かった。
どれほどの時間を過ごしたのだろうか。わたしは、来店した何人もの男性達に奉仕した。いろんなことをさせられた。気絶しても、店長に無理矢理叩き起こされた。
ある日、そんな店長が捕まった。わたしは、とある施設の一室に連れていかれた。
カウンセラーに、いろんなことを聞かれた。名前、住所、などなど。
けれど、わたしには分からなかった。一体、自分が何者なのか。わたしには店長に拾われるまでの一切の記憶が無かった。
わたしには、なにもなかった。
わたしは、それまで「六六六番」と呼ばれていた。理由は分からない。
そんなとき。
「私のために尽くしなさい。拒否権はありませんわ」
わたしは、見知らぬ少女に命令された。
「ニュースで、一瞬だけ映りこんでいたの。私、決めましたわ。あなたが、私の執事ですわ。……パパ、『これ』を買ってちょうだい」
「いいだろう。警察や他の機関には、パパから言い聞かせておこう」
ああ、また働かされるのか。
「あなた、名前は?」
「……」
「答えなさい」
「……」
「おかしいですわね……。これ、本当に生きているんですの?」
「……」
「……もしかして、名前が無いんですの?」
「……」
「答えないってことは、そうなの? ……だったら、私が名前を付けてあげますわ」
名前……?
「S県で見つけた、宝石……。そうですわ!」
「……?」
「……翡翠」
「…………ひ……す……い………………?」
「S県という鉱山で見つけた宝石。だからあなたは今日から、『石見翡翠』ですわ!」