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SCENE 04-1 : 日曜日に喋る猫

 日曜日、一人暮らしのユウジには一週間()め込んだ家事が待っている。洗濯や掃除はもちろん、4LDK庭付き一戸建てに住むユウジは庭の草むしりの仕事までしなければならない。

「メイド、ほしいな」

「ユウジー」

 玄関から真奈美が、庭仕事に精を出すユウジに手を振っている。

「遊びに来てあげたわよ」

「真奈美、最近言葉遣いがツンデレっぽくね?」

「そ?」

「で、なんだ? 俺のメイドになる決心がついたか? メシとか作ってくれるのか?」

「無理」

「だよな……伊集院さんなら――」

「言っとくけど、加奈はお嬢様なんだからね。元茶道部だけあって、お茶入れるのは得意だけど、家事とかは出来なさそうよ」

「そうなのか……で、何しに来たんだよ?」

「うん、新しく作った曲のことでユウジに意見を聞こうと思って」

「ふーん、まあ、あがれよ」

 天気がいいので、二人は縁側えんがわでジジババのようにお茶をすすりながら話すことにした。

「うん、予想通りユウジのお茶はまずい」

「うっせ」

 どこからかやって来たちっちゃな三毛猫が、縁側に上がって尻尾しっぽをぷらぷらさせている。

「あー、かわいいー」

 仔猫は真奈美のひざの上にのって、気持ち良さそうに目を閉じた。

「わしのように数百年も生きておる猫は世界に200匹あまり。だがそのむかし天使だった三毛猫というとそうはおるまいて」

「ひえっ」

「わしの猫名ねこなはシャミセン。天使だったころは天使シャミエルと呼ばれておった。――おお、おお、ここはよく結界が効いておってよい場所じゃ。わしが三毛猫でなかったらものの十秒でくだけ死んでおるわい」

「よくわからんが、なんか各方面からパクリまくってないか?」

「おぬしらいずれかの守護天使の仕業しわざか、はたまた他の誰かのための結界か……いずれにせよ、おぬしらの守護が本物ならば、またどこかで会うこともあろう。苦悶くもんの死を運命さだめられた身とあらば、戦うしか道はないのでのう――おお、おお、蝶々が飛んできおった、おお、おお」

 三毛猫は無邪気に蝶々を追って、どこかへ行ってしまった。

「あ、でね、新しい曲のことなんだけど」

しゃべる猫は華麗にスルーかよ!」


「懐かしいー、この杏子あんずの木。小さいころよく登って遊んだよねー」

 真奈美は庭の杏子の木にいとおしそうに近寄る。

「はあ? 何で真奈美が俺の子供のころの話、知ってんだよ」

「え、ユウジそれマジで言ってるの?」

「確かに五歳まで俺はこの家に住んでたけどな。母親が死んでからは田舎の親戚のうちで育ったんだ」

「で、去年までこの家は菊池さん一家に貸してたけど引っ越しちゃったから、この春大学入学をにユウジ一人で戻ってきたんでしょ?」

「そうそう。詳しいなあ、真奈美、卒業後はストーカーか探偵か霊能力者になれるぜ……ていうか、もしかして――真奈美って幼なじみの、まなみん?」

「うわ、信じらんない……十三年も経てばそりゃあ変わるけど――ていうかずっと気付いてなかったわけ?!」

「信じらんねー。あの天使のように可愛いかったまなみんがこんな凶暴な美人になってるなんて……」

 真奈美は凶暴と美人を天秤にかけ微妙な表情かおをした。だが凶暴が勝ったようだ。真奈美の拳がユウジのあごに入る。

「うごッ」

「ユウジ……あの優しそうだったユウ君がどうやったらここまで憎たらしくなるかな。良くなったのは見てくれだけね!」

「痛ってーなー、俺の美しい日々の思い出を返せー!」

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