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SCENE 03-3 : 天使の役目

「じゃあこういうことか? りんちゃんは天使の中でもごん天使というヤツで、人間を使役しえきして悪魔を倒す、と」

 邦研ほうけんのメンバーと凛は、焼肉屋『どんぶらこ』で加奈の歓迎会兼タムラノドンとの戦闘の打ち上げをしている。もちろん凛がタムラノドンから巻き上げたお金でだ。

「そうなのー。ちなみに、そこにいる加奈ちゃんは守護しゅご天使で人間を祝福する役目、そっちのヤジさんはしゅ天使で天使たちの動向を見守る役目……」

「ちょーっと、ユウジ、それ私が育ててたやつなんだけど!」

「え、俺のために焼いてくれてたんじゃねーの?」

「あんたねえ、どういう育ち方したらそういう考えになるのよ!」

「まあまあ、真奈美さんには私が育てたこのお肉をあげますから」

 焼肉屋では定番の会話。

「でね、でね、大天使ミカエルって人がね……」

「相変わらず凛ちゃんは想像力、立派ですよねー」

「あーっ! 柚木、お前、焼肉にマヨネーズかけるな、気持ち悪いだろうがっ!」

 定番じゃない会話も盛り上がり、何かと騒がしいメンバーだ。


 一同が十分に腹を満たし焼肉屋『どんぶらこ』を出ると、邦研の先輩が通りかかった。

「あーミッチェルさんだ」

「わー偶然ねえ。練習がんばってる? 最近、派手にやってるらしいじゃない? いいなあ、なんだか楽しそう」

と、三年生のミッチェルさん。なぜミッチェルなのかはわからないが、見た目はバリバリの日本人女性だ。

「まあな。そっちはスタジオか?」

とヤジさん。優しそうな声だ。

 邦楽研究会ほうけんでは伝統的に、新人がサークル会館の練習室を使い、二年生以降は大学横のスタジオで練習することになっている。だから合音前のこの時期、ユウジたち新人メンバーが先輩たちと顔を合わせる機会はあまりない。

「うん、まあ……」

「どうかしたか?」

 ミッチェルさん、少し声をひそめて、

「うん、色々あってね」

 少し疲れた感じのミッチェルさんは色っぽい。

「そうか……あ、ちょっとミッチェルと話あるから、先帰るわ」

と、ヤジさんはユウジたちに軽く手を上げミッチェルさんと並んで去っていった。


「はああ」

と、ケイスケが大きなため息をついた。

「何だよケイスケ」

と、ユウジ。

「ガキだよなあ、俺ら」

「はあ?……そうかな?」

「ミッチェルさんのギターって、すっげーカッコいいんだよ」

「……そっか」

「ユウ君、ユウ君」

「何だ?」

 ユウジが振り向くと、天使の人差し指がぷにっとユウジのほおに突き刺さった。

「だから何なんだよ」

「うふ」

「……ちっくしょー、凛ちゃんのばかー」

 ケイスケは涙をぬぐいながら走り去った。これを後ろのほうで見ていた真奈美たちは、青春だねい、などとしみじみしている。凛は馬鹿と言われたショックでその場に立ち尽くしている。

「馬鹿って言うほうが馬鹿たぃ、馬鹿大臣!」

「お前が空気読めずにひっかき回すからだろ!」


 例によってメンバーは飲食街の出口で別れ、それぞれの家路についた。ユウジは真奈美をアパートまで送ると、凛と二人でとぼとぼと帰り道を歩く。

「で、このバッテリーの切れたリングだけど、どうやって充電すんだ?」

「えーとそれはケータイを充電するときみたいに充電器にひっつければいいんだけど、そのリングは外せないからユウ君が体ごと引っ付けばオケイ」

「何に引っ付けば、いいんだ?」

「天使に」

と、凛は自分を指差している。

「あ、そ。じゃ、いいわ。別に光ってても光らなくても関係ねーし」

「えーそんな、遠慮しなくていいってば、タダなんだから」

「タダとかそういう問題じゃねー」

「一晩もひっついてれば満タンになるよ?」

「泊まるのかよ!」

「抱き枕になってあげるから」

「イラね」

「照れちゃって、ユウ君たらかわいい」

「うぜえええ」

 ――そんなこんなで長い一日が終わった。

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