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学校から帰ると見知らぬ外人さんがいた。

思わず警察に電話を掛けようと携帯に手を掛ける。

最近、物騒ですから。


「あ、その人留学生よー」


洗濯物を取り込んでいたらしい母が洗濯カゴを持って戻って来た。


「え、聞いてないんだけど!」


そういう話は早く言ってほしい。

私と母の会話にニコニコとしている外人さんは、例に漏れずイケメンだった。

外人さんって大体イケメンに見えるから困るよね。


「今朝決まったのよー。山田さんっていうの、仲良くね?」


山田さん…なんだか名前がすごく日本人っぽい響きですね。


「山田じゃないです」


あ、山田さん(仮)が母に訴えてる。

まぁどう考えても山田さんって顔じゃないもんなぁ。

母への抗議は終わったのか山田さん(仮)はクルリとこちらを向く。


「申し遅れました。私の名前は%¥☆ヤマダァです」


あ、山田さんだわ。

日本人にはない発音なのか、聞き取れない箇所が多い中「ヤマダァ」の部分だけかろうじて聞くことが出来る。

母はそこから山田さんと勝手に解釈したらしい。

実に母らしい。


「山田さんは学生ですか?日本語上手ですね」


笑いを堪えながら山田さんに尋ねる。


「ですから私の名前は%¥☆ヤマダァです。あと私は魔法使いです」


やばいキャラが濃過ぎる。

もう笑いは堪えきれなかった。


「お母さん、この人どこで拾って来たの?」


ひとしきり笑い終えた後、今度は母に尋ねた。

母は留学生と言ったが、大方母の拾いグセが関係しているのだろう。

母は犬でも猫でも何でも拾って来る。

さすがに人を拾って来たのは今回が初めてだが。


「庭に埋まってたのよー」


母よ、人は庭に埋まりません。


「あの時は助かりました」


どうやら本当に埋まってたらしい。

どういう状況だ。


*****


その日の晩ご飯は山田さんの歓迎会だった。

珍しく豪華な晩ご飯だが、山田さんはお箸が使いにくそうである。

そこはフォークが使えるスパゲティとかにしようよ母さん。


「山田さん魔法使えるんですか?」


ちくわの天ぷらを箸で掴むのに苦労している山田さんに尋ねてみる。


「当たり前じゃないですか。じゃなきゃ魔法使いじゃありません」


もう山田さん呼びには突っ込む気がないらしい。

それにしても、この人ブレないなぁ。

どうしてもその設定でいくらしい。

今日小学生でも現実みてますよ。


「えーじゃあ何か見せてください」


どんな手品を見せてくれるのだろう?

ちょっとワクワクする。


「少しだけですよ?」


そう言って山田さんは指先にチョロっと火を出した。

ライター並みの火力である。

それでも間近で手品を見たことがない私には十分だった。


「すごーい!何?どうやってるの?」


私の反応に気分を良くした山田さんは「魔法ですよ」と自慢気に言う。

他にも空のコップに水を入れてみたりだとか色々な手品(彼曰く魔法)を見せてもらった私は興奮でその日は眠れなかったことは内緒である。

ちなみに私の家には客間などないので山田さんはリビングで寝てもらった。


*****


それから早くも2週間の月日が経過した。

山田さんはすっかり家族の一員として山田さん用の箸や食器が与えられていた。


しかし、私は気付いてしまった。

私が学校に行く時も、帰った時も山田さんが家にいることを。


「山田さん、もしかしてニートなんですか?」


休日のある日、私はかねてからの疑問を尋ねてみた。

私の言葉に山田さんは首を傾げて「ニート?」と呟いた。

すっかり山田さんを見慣れた私にはイケメンの首を傾げる仕草などには動揺しない。

ちょっとコップからお茶零れただけで、ど、動揺なんてしていないのだ。

くそぅイケメン…


「それだけ日本語喋れてて何しらばっくれてるんですか。ニートとは仕事もせずに家にいることです!山田さんのことです!」


誤魔化すように声を荒げて山田さんに詰め寄った。

言い逃れなど出来まい。


「仕事ならちゃんとしてますよ。家で魔法の研究です」


まだ言うか。

本格的にダメ人間である。

山田さんのことは家族として好きだけれど、これはいただけない。


「じゃあいつ帰るんですか?」


「時が来れば帰れます」


時っていつだ。

もしかしてこの人…


「帰れないんですか?」


うちはお金持ちではないので山田さんの面倒をずっと見てあげることは出来ない。


「いや、帰り方が分からないだけです」


「それを人は迷子と言うんです!」


母さん!なんで拾って来たの?

この人迷子です!


「違うんです。こっちには手違いで来てしまって。何故か大きな魔法が使えないんです」


聞くと、山田さんが魔法の詠唱をうっかり間違えウチの庭に埋まったらしい。

戻ろうと思い、魔法を発動させようとするが力が弱まっていることに気付いた、と。


誰が信じるか、こんな話。

小学生時代の私なら騙せただろうが、私も高校生である。


「ふざけるのもいい加減にしてくださいよ!山田さん!」


その日から数日、私は山田さんと口を聞かなかったが、キレた母に和解をするように言われ、渋々山田さんに謝ったのだった。


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