隣の席のあなたとわたし
属性: ひっそり教室片隅タイプ。
外見:地味系前髪うっとおしい類
それがわたし。
同じクラスの人間にさえ名前をちゃんと覚えられているか怪しい、卒業したら「そんな人いたっけ?」と言われるタイプ。これ、予測ではなく絶対。
誰からも注目されることなく、周囲に埋没することに安堵すら抱いていたわたしだったけど………。
「………………」
隣の席から注がれる隠す気が全くない、ちょっとは隠せと言いたくなる視線に顔が引き攣る。胃が今迄感じたことのない鈍い痛みを訴えてきて軽く息を吐いた。
こっそり胃の辺りを手を当てながらわたしは顔を横に向けた。
「…………(ちらり)」
「(にこ)」
「(さっ)」
キラキラ笑顔に耐えきれずに光の速さに挑む勢いで顔を元に戻す。
ドキドキバクバクする心臓。だけど決してラブ的な意味ではない。キラキラした有名人にやたら視線を送られ必然として周囲の視線を集めてしまった事で生じたストレスによる心臓の負担だ。
地味系で生きてきた小市民にはこの状況本気で厳しい!
元凶はにこにこと微笑ましいものを見るかのような目でその日一日私を見続け、ストレスに耐え切れなかった私は胃の痛みで早退した。
私はよく考えるべきだった。
接点が無いはずの学校の有名人……紅崎くんが急にクラスの地味系女子などに注目しだしたのかを。
「あのね、お母さんね……再婚したいとおもってるの」
紅崎くんの奇行が始まったのが母の再婚話を聞いた翌日だったことの関連性をもっとよく考えるべきだったのだ。
そうすれば少なくとも…………。
「私がお付き合いさせてもらってる紅崎斗真さんとお子さんの北斗くんと美斗ちゃんよ」
「…………」
「妹が増えるのすごく嬉しいんだ。よろしく!梨香さん!」
両家の顔合わせの席で人見知りをして紅崎くんの背中に隠れる美斗ちゃんと満面の笑顔で握手を求めてくる彼の目の前で衝撃のあまり気絶するなんて失態だけは避けられたはずなのに!
私が望む地味で目立たない生活が遠ざかり、目立ちまくりの騒々しい毎日がやってくることを目をまわして美形一家に介抱され、目立ちまくっていた私には知る由もない。