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ねた的な小説  作者:
19/28

ベタで王道な物語

世の中には割りとベダな台詞や王道展開が多いとわたくし、思うのですよ。

特にわたくしが御仕えしているお嬢様なんか特に典型的。


「むっきー!!なんですの!なんですの!!なんなんですのぉぉぉぉ!!!あの娘は!!」


扇をへし折らんばかりに握り締め、天に向かって雄たけびを上げているのはリリアンヌ公爵令嬢。美貌と知性と身分で王の王妃の座に一番近いと言われたご令嬢はしかし悔しげに宝石のような澄んだ青の瞳に涙を溜めていた。


まぁ、お嬢様がここまで荒れる理由は判るのですがね。ずっと想い続けてきて、やっと内々ではありますが王妃にと打診されそうな矢先に王に想い人が出来てしまったのですから。

リリアンヌ様は王をずっとずっと好きでいらっしゃいましたから。それこそ出会ったばかりの幼い頃から一途に想い続けられておられました。振り向いてもらうための努力はなんでもされていましたよ。

でも、王がリリアンヌ様に向けられるのは友情と家族に向けるような愛情だけでついに恋心を抱いてはくださらなかった。何年も傍にいたのにぽっと出の娘に想い人の心を掻っ攫われたらそりゃ心中穏やかではいられませんよね。

ここは長年仕えたメイドらしく適切な言葉でお嬢様を復活させてみせましょう!


「………リリアンヌ様、ムキーは死語です。古いです。語彙の古さを露呈しています」


ただでさえ、王道主人公の恋敵的な位置にいらっしゃるのですから言動は新しくしていかなければ!!


一瞬の沈黙の後、何故だか攻撃対象がわたくしに移りました。………なぜ?



「ふぅ………お嬢様のひすてりーにも困ったものですね」


「ヒョイヒョイと投げつけたもの全てを避けるあんたのどこが困っているのよ!!すこしは当たりなさい!」


「え~~~~、痛いから嫌ですよ」


「~~~~っ!!クビよ!クビ!あんたみたいなメイドなんてクビにしてやるんだから~~~!」


「それは困りますね」


「大して困ってない顔で言うな!」


1日に一回は飛び出すクビ宣言はしかし実行に移されたことなど一度もない。なんだかんだで矜持の高いお嬢様は不当に使用人を解雇したりできないのです。


矜持の高さは中々なものです。己の願いにだって貪欲です。

主のそんなところをわたくし、大いに気に入っております。それは終生お仕えしてもいいと思えるぐらいに強く。初めてお仕えした主以来、はじめてそう思えた人間、それがお嬢様です。


「見てなさい!小娘!王の心は渡さないわ!!」


「元々、お嬢様のものでもなかったのにさも、一度は所有していたかのような発言は如何なものかと思いますよ~~~?」


二度目の攻撃は苛烈を極めました。………何をそんなに激怒されたのでしょうか?意味がわかりません。



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