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花言葉

黄薔薇

作者: 如月 透羽
掲載日:2026/09/23

「最近。無理してない?」


「無理なんてしてないよ?」


そう言って、笑った。

限りなく本当に見える、嘘(・)の(・)笑(・)顔(・)を。


けれど、そこは流石彼氏。

最近話してないといえど、見破られてしまった。


「嘘ついてるだろ」


そう言った彼は、まるで失言をしたかのような顔をした。

その顔の方が傷つく……なんて、言えないのだけれど。

いつも通りを装って、私は言う。


「そんなことないよ」


付き合い始めたときも、こんなふうに、嘘つき、って言われたっけなぁ。

そんなことを、ぼんやりと思っていた。


「莉冬」

何度も呼んだのだろう。声に、少しだけ焦りが滲んでいる。


「……あぁ、ごめん。ぼーっとしてた。どうかした?」


その返答に、少しだけ安堵したらしい。

優海の身体から、少しだけ力が抜けている。


「最近、寝れてるか?」


そういえば、昨日何時に寝たっけ。

そう思いながらも、優海に言う。


「…………ちゃんと寝てる。余計なお世話」

「そうかよ」


そっぽを向く彼の姿が、私に、あ(・)の(・)日(・)のことを思い出させた。


〜〜〜


空白が埋められたかのように、音が鳴った。

誰もいない家。仕方なく、インターホンの方へと向かう。


「どちら様ですか」

「莉冬」

インターホンの先にいるのは、確かに私が大好きな彼だった。


「優海?ちょっと待ってて、今開けるから」

そう言って、部屋の廊下を小走りになりながら歩く。


「おまたせ!どうかしたの?」

「これ、渡しに来ただけ」


そう言って、紙袋を差し出しながら、優海はそっぽを向く。

中には、薔薇が3本、咲いていた。


「これ……私に?」

「今日、誕生日だろ。ケーキとか、用意出来なくてごめん」


どうして自分さえ忘れているようなことを、優海が覚えているのだろう。

そして、祝いに来てくれるんだろう。


「……ありがと」


〜〜〜


そんなことがあったのは、いつだろう。

去年だろうか、それとも今年だろうか。


そのことがあってからも、私は優海と話し続けた。

恋愛にうつつを抜かしていたからだろうか。


テストの点数が落ちた。

親に叱られる自分が惨めだった。


そんなときに見てしまった。

あの花の意味を。


【黄色い薔薇は、愛情の薄らぎ、などの意味もあるため注意!】


その言葉が、私の中で回る。

優海は別に、そんな意味で贈ったりしてない。

わかっていても、私は思ってしまったのだ。


__優海は、私のこと嫌いなのかもな、って。


「ねえ、」

気づけば、優海を呼んで、こうして話しかけている。


「何だよ」


息が出来ない。

まるで水の中にいるようだ。


「別れよっか、私達」

目も合わせずに言った。


「どうして」

「合わないから」


もう、これ以上追及しないで。

その願いは、叶った。


いや、叶(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)。


「わかっ、た」

「今までありがとう、優海……いや、冬野くん」


そう言った瞬間、私達は恋人ではなくなった。

ただの同級生に戻った。


「じゃあまたな、白雪」

「うん、またね」


その瞬間、家にあった薔薇のことを思い出した。

私達の思い出のように、色褪せた薔薇を。

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