49歳 婚活サイトという名の動物園
部屋の隅っこに置いた娘の学習机で
私はノートパソコンを開ける。
古い扇風機がゆっくり回っている。
カチカチッ。
クリック音だけが響く。
部屋にはテレビすらない。
49歳。
私は本気で恋をしようと思った。
バツ一。
離婚後、小さな小さな総菜屋を営んだ。
自分の料理スキルを信じて、無謀にも、ドシロウトなのに自分の店を持った。そこには、私の夢が詰まっていた。
小さなお城で、それこそ、寝る間を惜しんで、身を粉にして、働いた。
必死のパッチで頑張って、少しづつ売上が伸びる。でもその分、仕事が増えていく。小さな店は、いくら売っても高々しれている。
楽しい。でも苦しい。
何とか生活はできたけれど、どんどん自分が消耗していく。
6年後。限界がきた。気力も体力も、尽きた。
ちょうど決まった、下の娘の大学進学を期に、私は店をたたんでバイト生活を始めた。
体は楽になったがお金がない生活。先が見えない。
このままでは、将来娘に負担がかかってしまう。
女の給料なんて結局のところしれてる。
どんなに働いたって、20年後には行き詰まるのは明白。
どうする?
そうだ、男探そう♪
人生に少しヤケを起こしていた私は、
婚活サイトという名の動物園に足を踏み入れた。
人生は、多様性の宝庫である。
主に残念な方向で。
その動物園には、様々な種族が混在していた。
まず1割が「ミコン」。
基本草食のようだが、生態は不明。
ここまで一人で生きている分、アセリは見られないが、マイペースで、空気は読めない。
50年かけて、何考えてるか分からない不思議ちゃんに仕上がっているので、多分これからも変われない。
コレでは、海千山千のおばちゃんには、きっと勝てんよ。
6割が「バツイチ」だ。
雑食性。草食を装ってはいるが、やはり変なオーラが漏れ出てしまう。
たいがいはモテナイ系で、薄い実像の後ろに、過去が見え隠れしているのは、間違いなく自信のなさの表れだ。
勘違いが甚だしく、家事をやってくれる女が好きで、実際料理作ってやると、とても喜ぶ。
でもな、女はな、過去じゃない。
今と未来を見てるんや。
あんたら、ズレてる。
そして3割を占める、「キコンシャ」と言われる種。
同年代で検索しているのに、確率高すぎるこの「キコンシャ」は、肉食獣である。
慣れてくると、プロフィールを見ただけで分かってしまう程、自分の身元を隠しきれないのに、◯欲だけがダダ漏れしている、おぞましい種族である。
ちなみにプロフの写真は車内自撮りだったりするが、意外と見た目はいい。でも、その上っ面の自信は、この年になれば醜いだけで、何の意味もないことが分かっていない、大馬鹿者である。
そして「バツニ」というツワモノも。
ちなみに後で出てくる「パパちゃん」は「バツニ」である。
正直なところ。
「キコンシャ」にも「バツイチ」にも「ミコン」にも当たってはみた。
やっぱりアラフィフでこんなサイトやってる人って、ちょっと変。と、完全に自分を棚に上げて、思う。
半年が過ぎた頃
以前当たったことのある「バツイチ」が、プロフの名前を変えていた。
モロバレなのに。
バカめ。
アカン。やっぱりアカン。
マジであきらめがついた。
まぁ最後に、もう1回見とこうか。
ポチポチッ
出会ってしまった。
おまけ
熟年婚活のススメ
子供の養育を考えず、二人のことだけに集中できるので、案外ラブラブが持続します。
熟年は、すでに見た目劣化が完成形なので、あまり気になりません。
誰だって50年も生きれば、人に言いたくないことのひとつやふたつは、絶対にあります。
過去の詮索はほどほどに。墓場まで持っていく勇気も愛です。
意外と早く介護が始まるかもしれませんが、気にしてはいけません。
お互い様ですから。
若さに憧れてはいけません。
時折鏡を見て、冷静さを取り戻しましょう。
フィルター無しの現実が、だいたい真実です。
婚活サイトは、決して恥ずかしくはありません。
私なんて、人に馴れ初めを聞かれたら、堂々と
「ネットでーす♥」
と答えています。
ただ、動物園であることは確かなので、細心の注意を払わないと、噛まれます。
指で突っつくのは、柵の外からよーく観察してからにして下さい。
あなたにウソがなければ
きっと上手くいく、はず。
.....たぶん。




