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第9話:冬への備え!洞窟の貯蔵庫と食料管理


翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。


「よしよし、ルーク。おはよ。今日も一日、頑張るか!」


優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。その愛らしい仕草に、ユウキの顔も自然と緩む。この「嘆きの森」での日々は、ルークというかけがえのない相棒と、そして「食」への飽くなき探求心によって、ますます充実したものになっていた。


今日一日でクラフトできるものは一つだけ。大型の石釜が完成し、一度に大量の肉や根菜をローストできるようになった。これで料理の幅は飛躍的に広がり、日々の食卓は豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**「増え続ける食料を、どこにどうやって効率的に保存するか」**という新たな課題が浮かび上がっていた。洞窟内とはいえ、湿気や虫、そして何より魔物の侵入から食料を守り、来るべき冬に備えるためには、きちんとした保存場所が不可欠だ。特に、石釜で大量に調理した保存食(ロースト肉など)を腐らせずに保管する方法を確立することは急務だった。


「よし、今日のクラフトは……**『簡易貯蔵庫(乾燥棚・貯蔵穴)』**に決めた!」


これで、食材を乾燥させたり、冷暗な場所に保管したりして、長期保存が可能になる。食料の鮮度を保ち、無駄なく消費するための重要な設備だ。素材は、洞窟内に豊富にある石材と、乾燥棚にするための木材を使う。


早速、クラフトに取り掛かる。洞窟の奥、水源にほど近い、比較的乾燥していて、かつ外敵から見つかりにくい場所を選定した。ここなら、食料の鮮度を保ちやすいだろう。まず、石の出刃包丁を使い、地面を掘り進める。深さユウキの腰ほど、広さも十分な貯蔵穴を掘り、その周囲を石で補強していく。冷気がこもるように、そして湿気が溜まらないように、工夫を凝らす。


脳内で「クラフト:**簡易貯蔵庫(乾燥棚・貯蔵穴)**」の文字が浮かび上がり、ユウキの魔力が素材に流れ込んでいく。石材が正確に組み合わされ、貯蔵穴の壁面が補強されていく。掘り出した土は、乾燥棚の土台に利用する。木材は、石の出刃包丁で薄く加工され、風通しの良い棚板へと変化する。やがて、光が収まると、洞窟の一角に、地面に掘られた**貯蔵穴**と、その上部に設置された**木製の乾燥棚**が形を成した。貯蔵穴は冷暗で、根菜や一部の果物の保存に適している。乾燥棚は風通しが良く、肉や魚、キノコなどの乾燥保存に最適だ。


「よし、これで冬が来ても、食料の心配がなくなるぞ!」


ユウキは満足げに貯蔵庫を眺めた。これで、この洞窟は、食料の生産から加工、そして保存まで、全てを完結できる「食の要塞」へと進化していく。


早速、貯蔵庫の試運転だ。昨日石釜でローストした肉の残りや、燻製にした魚、そして今日森で採集してきたばかりの根菜や野草を、それぞれの貯蔵方法に合わせて整理していく。乾燥棚には、薄切りにした肉や魚、キノコなどを並べ、風通しを良くする。貯蔵穴には、土を軽く払った根菜や、一部の果物を丁寧に並べていく。


その様子を、ルークがユウキの足元にチョコンと座り込み、キラキラした青い目で貯蔵庫の中を覗き込んでいる。整然と並べられた食料を見て、どこか安心したような表情を浮かべているようだ。


「ルーク、これで冬が来ても、美味いもんがいっぱい食えるからな!」


そう声をかけると、ルークは「ワフッ!」と小さく鳴いて、ユウキの足に頭をすり寄せてきた。まるで「うん、安心だね!」と言っているかのようだ。

今日の料理は、貯蔵庫に収める前に、新鮮な食材を味わうことにした。石釜で焼いたばかりの根菜と、小川で捕まえたエビを、万能調味料の塩でシンプルに炒める。出来上がった料理は、木の皿に盛り付けられ、洞窟の食卓を彩る。


ルークも、いつも以上に美味しそうに料理を平らげ、満足げにユウキの足元で丸くなった。食料がきちんと整理され、必要な時にすぐに取り出せるようになったことで、ユウキの料理への意欲はさらに高まった。


簡易貯蔵庫の完成は、ユウキの異世界生活に大きな安心感をもたらした。食料の確保、調理、保存の基盤が整ったことで、この「嘆きの森」での生活は、ますます充実したものとなった。


一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークの頭を撫でる。次は何をクラフトしようかと考える。食料の心配はほぼなくなったが、**塩という基本調味料に加えて、もっと料理の味の幅を広げ、風味を豊かにする調味料**が欲しいという欲求が芽生えていた。前世の食卓で欠かせなかった、あの香ばしい液体を求めて。


「よし、明日は、この洞窟での食卓をさらに豊かなものにするための、あれを作るぞ!」


次なるクラフトに期待を膨らませ、ユウキは静かに目を閉じた。


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### 連載スケジュールについて


**本日(7月26日)と明日(7月27日)で、初回として各日10話ずつ、一挙に公開いたします!**


その後は、**平日(月~金)は朝と晩に1話ずつ**、そして**週末(土~日)は朝・昼・晩に1話ずつ**公開していく予定です。


読者の皆さんのニーズや反響があれば、公開ペースを増やすことも検討してまいりますので、応援よろしくお願いします!


おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!


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