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第5話:快適な調理スペースと、新たな食材の発見!


翌朝。焚き火のそばで目を覚ますと、ルークがユウキの足元で丸くなっている。昨日の朝食で新しい木の皿を使ってからというもの、ルークはユウキが朝食の準備に取り掛かるのを、心待ちにしているようだった。小さく鼻をヒクヒクさせ、青い瞳でじっとユウキを見上げている。ユウキの朝食と、ルークの食料を探すため、今日の準備に取り掛かる。


「おはよ、ルーク。今日も美味いもん、探そうぜ!」


ユウキが声をかけると、ルークは「ワフッ!」と一声、元気よく吠えてみせた。その愛らしい様子に、ユウキの顔も自然と緩む。この「嘆きの森」での日々は、一歩ずつ着実に、ユウキの望む豊かな「食」を中心に回っていた。


今日のクラフトは、調理効率をさらに上げるための**『木製まな板』**にしよう。昨日、石の出刃包丁で食材を刻む際に地面に広げていた不便さを解消し、より衛生的で快適な調理スペースを確保する。どんなに立派な出刃包丁があっても、安定した作業台がなければ、その性能を十分に引き出すことはできない。それに、地面に直接置くよりも、きちんと清潔な板の上で作業する方が、気分も上がるというものだ。素材は、丈夫で加工しやすい森の木材を使う。滑らかで、刃当たりが良く、水にも強い木が理想だ。


「よし、これで本格的に料理ができるってもんだ!」


嘆きの森をルークと探索する。森の中は、相変わらず複雑な様相を呈している。太い蔓が絡みつき、地面には苔がむすぶ。陽の光も届きにくく、空気は常に湿気を帯びている。しかし、ルークが一緒だと、不思議と心が落ち着く。彼は嗅覚だけでなく、足元に潜む小さな危険や、隠れた食材を見つけるのが本当に上手い。


今日もルークの案内で、森の奥へと進む。すると、ルークが突然立ち止まり、低い唸り声を上げた。警戒しているようだ。ユウキも身構えるが、敵意のある気配ではない。ルークの視線の先を見ると、地面にいくつかの穴が掘られていた。そして、その穴の近くには、これまでに見たことのない、瑞々しい根菜のようなものが土から顔を出している。


「お? ルーク、お前、こんなところまで見つけてきたのか!」


恐る恐るユウキが近づき、根菜を一本引き抜いてみた。土を払うと、見た目は前世のサツマイモに似ているが、もっと鮮やかなオレンジ色をしている。鼻を近づけると、かすかに甘い香りがした。ルークも興奮した様子で、根菜の周りをチョロチョロと回り、鼻先を押し付けている。これは食べられる、とルークが言っているようだった。


さらに奥へ進むと、ルークが再び立ち止まった。今度は、小川のほとりだ。水の澄んだ場所に、透き通るような身をした小さなエビのような生物が群れをなしている。前世のエビとは少し違うが、身がプリプリとしていて美味しそうだ。ルークは、まるで「獲物だよ!」とばかりに、小川の中を指し示すように鼻先を動かす。


「お前は本当に食材探しの天才だな!」


ユウキはルークの頭を優しく撫で、褒めてやった。ルークは得意げに尻尾を振り、胸を張っているようだった。今日手に入れたのは、新たな根菜と、小川のエビ。これは今日の料理が楽しみだ。


拠点に戻り、早速今日のクラフトだ。森で見つけた、平らで丈夫な木材を吟味する。水分に強く、刃物を受け止めても傷つきにくい、密度の高い木材を選ぶ。そして、石の出刃包丁を使い、丁寧に木材を削り、表面を滑らかに研磨していく。トントン、サクッ、という心地よい音が森に響く。


脳内で「クラフト:木製まな板」の文字が浮かび上がる。ユウキの魔力が木材に流れ込み、表面がさらに滑らかになり、刃物を受け止めるのに最適な硬度と弾力を持つ、使い勝手の良い**木製のまな板**が形を成した。大きさはユウキの腕二本分ほどで、食材を広げて作業するのに十分な広さがある。厚みも十分で、安定感も抜群だ。


「よし、これで、もっと凝った料理も作れるぞ!」


ユウキは満足げにまな板を置いた。これまで地面に直接置いていた食材を、まな板の上で処理できるようになる。石の出刃包丁を握り、採れたばかりの根菜をトントンとリズムよく刻んでいく。まな板の上が、ユウキにとっての聖域となる。切る音、食材の匂い、全てが心地よい。衛生的にも格段に改善されたことを実感する。


まな板の上で食材を刻むユウキの隣で、ルークが鼻をヒクヒクさせながら、刻まれた食材の匂いを嗅ぎ、時折「ワフッ!」と期待の声を上げる。特に、根菜の甘い香りと、エビの磯の香りが混じり合うと、ルークは一層興奮した様子を見せる。


「ルーク、お前も手伝ってくれるのか? そんなに期待する顔をするなら、お前も味見係だな!」


そう声をかけると、ルークは嬉しそうに尻尾を振り、まるで「任せて!」とでも言うように、ユウキの周りをクルクルと回り始めた。その姿に、ユウキも思わず笑顔になる。


その日の料理は、ルークが見つけてきた新しい根菜とエビも加えて、さらに彩り豊かになった「森の恵みと彩り根菜のエビソテー」だ。黒曜石のフライパンで丁寧にソテーし、木の皿に盛り付ける。新しいまな板のおかげで、下準備が格段に楽になり、調理時間も短縮できた。ルークもいつも以上に美味しそうに平らげ、満足げにユウキの足元で丸くなった。


しかし、その日の夕暮れ時、遠くからこれまでとは違う、少し不穏な物音と気配が森の奥から漂ってきた。それは獣の唸り声のようでもあり、何かが地面を這うような重々しい音のようでもあった。風に乗って運ばれる、僅かながらも異質な気配に、ユウキのラガーマン時代の研ぎ澄まされた勘が警鐘を鳴らす。


「ん? 今の音、なんだ?」


ユウキは耳を澄ませたが、ルークは特に反応せず、ユウキの足元で丸くなって眠り始めている。気のせいか、と首を傾げたが、胸の奥に小さな引っかかりが残った。この「嘆きの森」には、まだまだ未知の脅威が潜んでいるのかもしれない。


一日の終わりに、焚き火の炎を見つめながら、ルークの頭を撫でる。新たな道具と食材に恵まれ、快適な生活が送れるようになってきた。だが、油断はできない。


「明日はいよいよ、あの場所を探索してみるか……」


不穏な気配を振り払うように、ユウキは次なる冒険を示唆し、静かに目を閉じた。


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