第34話:遊び心と甘い誘惑!簡易麺棒・型抜きセット
翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。その少し離れた場所では、モフモフ草食竜が、丸まって静かに眠っていた。
「よしよし、ルーク。モフモフも。おはよ。今日も一日、頑張るか!」
優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。モフモフ草食竜も、ユウキの声に反応して、クリクリとした目を開け、小さく「キュルル……」と鳴いた。朝一番の仲間たちとの触れ合いは、ユウキにとって何よりの癒やしであり、この「嘆きの森」での日々を充実させる原動力となっていた。
**今日一日でクラフトできるのは一つだけ。** 洞窟の拠点では、石釜、蒸し器、燻製器、麺棒と板、泡だて器、コーヒーミル、手作りの食卓と椅子、携帯用簡易調理セット、粉ふるい器、手動式製麺機、簡易食品乾燥機、香辛料粉砕器、搾油機、蒸しパン製造器、酒造/発酵容器、冷蔵/保冷庫、臼と杵、そして昨日完成した調理台といった調理器具や食器、加工・保存に関する道具が揃い、食に関する基盤は完璧に整い、食卓はあらゆる味覚と食感で豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**「樹液糖などの甘味料を活かして、もっと見た目にも楽しく、食感のバリエーションに富んだお菓子を作りたい」**という新たな欲求が湧き上がっていた。これまでの蒸しパンとは違う、カリッとした焼き菓子や、可愛い形のクッキーなど、遊び心のあるお菓子作りに挑戦したくなったのだ。これは、まさに「調理器具」であり、菓子の「加工」に関する重要な一手となる。
「なぁ、ルーク。モフモフも。お前たち、星の形とか、動物の形をした、カリッとした甘いお菓子って食ったことあるか? あれ、見た目も可愛くて、美味いんだぜー!」
ユウキが問いかけると、ルークは「ワフッ!」と興奮したように一声上げ、モフモフ草食竜も「キュルルルル!」と全身の毛を逆立てて喜んだ。星の形、動物の形、カリッとした甘いお菓子という言葉に二匹とも期待で胸を膨らませている。
「ああ、もちろん! これがあれば、今までよりずっと色んな形のお菓子が作れるようになるし、生地を均一に伸ばすのも楽になるんだ。特にモフモフ、お前、甘いもの好きだから、きっと大喜びするぞ! だから、今日は……**『簡易的な麺棒・型抜きセット』**をクラフトするぞ!」
これで、ユウキはクッキーやビスケット、あるいは特定の形をした菓子類を効率的かつ美しく作れるようになる。これまでのフワフワな蒸しパンとは異なる、カリッとした食感の焼き菓子など、デザートや間食のバリエーションが大きく広がるだろう。必要な素材は、堅い木材、そして熱に強く加工しやすい特定の金属鉱石だ。ユウキは、森の奥で見つけた、熱を加えても変形しにくい「硬質金属」と呼ばれる鉱石と、滑らかな表面を持つ「白樺木」の存在を思い出した。これら全て、この「嘆きの森」で手に入る天然の素材だ。
早速、クラフトに取り掛かる。ルークとモフモフ草食竜も、ユウキの隣にちょこんと座り込み、目をキラキラさせて作業を見守っている。ユウキはまず、選りすぐった白樺木と硬質金属を選び出す。頭の中で**「簡易的な麺棒・型抜きセット」**の設計図が浮かび上がる。麺棒は均一に生地を伸ばせるよう、両端に厚み調整のリングを付け、型抜きは星、月、動物など、いくつかの可愛い形をイメージしている。
ユウキは、必要な素材を揃え、クラフトのスキルを発動する。手元の白樺木が削られ、滑らかな麺棒へと成形されていく。硬質金属が様々な形の型へと打ち抜かれ、研磨されていく。カシュン、カシュンと、素材が合成されていくような音が微かに響く。スキルを使うユウキの手は澱みなく動き、まるで魔法のように素材が新たな形を成していく。ルークとモフモフ草食竜は、その光景を不思議そうに、しかし真剣な眼差しで見つめている。モフモフ草食竜は、硬質金属の冷たい輝きに「キュルル……!」と小さく鳴き、興味深そうに鼻を近づけた。
「こらこら、お前たち。これはまだお菓子じゃないぞ。でも、これができれば、もっと見た目も可愛い、美味いもんが食えるんだからな!」
ユウキが笑いながら言うと、ルークは「クゥン」と小さく鳴き、モフモフ草食竜も「キュルル!」と嬉しそうにしっぽを振った。まるで「早く可愛いお菓子を体験したい!」と言っているかのようだ。
ユウキの魔力が素材に流れ込み、加工が進む。やがて、光が収まると、ユウキの目の前に、見た目は素朴だが、遊び心と実用性を兼ね備えた**手作りの簡易麺棒・型抜きセット**が一つ、完成していた。麺棒は両端に厚み調整のリングが付いており、型抜きは星、月、そしてルークとモフモフ草食竜を模したような、可愛らしい動物の形がいくつか含まれていた。
「うおお! できた! これが俺たちのクッキーメーカーだ! ルーク、モフモフ、見てみろ!」
ユウキが完成したばかりのセットを二匹に見せると、ルークは興奮したように立ち上がり、型抜きの一つをクンクンと匂いを嗅いで「ワフッ!」と一声上げた。モフモフ草食竜も、ユウキの足元にまとわりつき、クリクリした目で型抜きを見上げている。
「ワフッ! ワフッ!」
「キュルル! キュルル!」
と、二匹は喜びの声を上げ、ユウキの周りを跳ね回る。その仕草に、ユウキは思わず二匹をまとめて抱き上げて、その頭を優しく撫でてやった。
「よしよし、そんなに喜んでくれるのか。じゃあ早速、明日はこのセットで、とびきり可愛いお菓子を大量に作ってやるか!」
早速、麺棒と型抜きセットを新しい調理台の引き出しにしまってみる。今日の料理は洞窟の食卓で済ませるが、明日からの菓子作りが今から楽しみで仕方がない。ルークとモフモフ草食竜も、ユウキの隣で、いつも以上にワクワクした様子を見せている。
「なぁ、お前たち。明日は、可愛い形をした甘いもんが食えるぞ! 楽しみにしてろよ!」
ユウキがそう言うと、ルークは「クゥン」と短く鳴き、モフモフ草食竜も「キュルル……」と喉を鳴らした。まるで「うん、楽しみだね!」と言っているかのようだ。
簡易的な麺棒・型抜きセットの完成は、ユウキの異世界生活における「お菓子作りのバリエーション」と「食の楽しさ」を、新たな次元へと引き上げた。これで、見た目にも楽しい、カリッとした食感の焼き菓子も気軽に楽しめるようになる。この「嘆きの森」での生活は、ルークとモフモフ草食竜というかけがえのない仲間と共に、ますます豊かで充実したものとなった。
一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークとモフモフ草食竜の頭を撫でる。二匹はユウキの腕に顔をこすりつけ、小さな寝息を立てている。次は何をクラフトしようかと考える。お菓子作りが本格化したことで、**より繊細な調理技術**や、**特定の食材の加工**に焦点を当てられそうだ。
「よし、明日は、この洞窟での生活をさらに充実させるための、あれをクラフトするぞ!」
ユウキは仲間たちの温もりを感じながら、次なるクラフトに期待を膨らませ、静かに目を閉じた。
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### 連載スケジュールについて
**おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、いよいよ本格始動!**
この物語は、**2025年7月28日(月)より、毎日連載をスタートします!**
* **2025年7月27日(日)までに、第1話から第20話までが公開済みです。**
* **第21話以降は、7月28日(月)より順次公開いたします!**
今後の公開スケジュールはこちら!
* **平日(月~金):朝と晩に1話ずつ公開**
* **週末(土~日):朝・昼・晩に1話ずつ公開**
読者の皆さんの応援や反響次第で、公開ペースをさらに増やすことも検討してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
**ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!**
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