第30話:新たな風味の探求!簡易酒造/発酵容器
翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。その少し離れた場所では、モフモフ草食竜が、丸まって静かに眠っていた。
「よしよし、ルーク。モフモフも。おはよ。今日も一日、頑張るか!」
優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。モフモフ草食竜も、ユウキの声に反応して、クリクリとした目を開け、小さく「キュルル……」と鳴いた。朝一番の仲間たちとの触れ合いは、ユウキにとって何よりの癒やしであり、この「嘆きの森」での日々を充実させる原動力となっていた。
**今日一日でクラフトできるのは一つだけ。** 洞窟の拠点では、石釜、蒸し器、燻製器、麺棒と板、泡だて器、コーヒーミル、手作りの食卓と椅子、携帯用簡易調理セット、粉ふるい器、手動式製麺機、簡易食品乾燥機、香辛料粉砕器、搾油機、そして昨日完成した蒸しパン製造器といった調理器具や食器が揃い、塩、醤油、果実酒、樹液糖、味噌、仕込み中の酢といった調味料も充実してきた。食に関する基盤は完璧に整い、食卓はあらゆる味覚と食感で豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**「既存の果実酒をさらに進化させ、より安定した品質で、多様な発酵飲料や調味料を造りたい」**という新たな欲求が湧き上がっていた。単なる果実酒だけでなく、異世界の穀物やハーブを使った、ビールやサイダーのような低アルコール飲料、あるいは新たな風味の発酵調味料の可能性を探りたくなったのだ。これは、まさに「調味料」であり、食の探求を深めるための重要な一手となる。
「なぁ、ルーク。モフモフも。お前たち、もっと色んな味の、シュワシュワしたり、深い味わいの飲み物って、飲んでみたくないか? そのためには、もっと良い『発酵の器』が必要なんだ!」
ユウキが問いかけると、ルークは「ワフッ!」と興奮したように一声上げ、モフモフ草食竜も「キュルルルル!」と全身の毛を逆立てて喜んだ。シュワシュワという言葉に、二匹とも興味津々といった様子だ。
「ああ、もちろん! これがあれば、今までとは全然違う、奥深い風味の飲み物や調味料が楽しめるようになるんだ。特にモフモフ、お前、甘いもの好きだから、甘い発酵飲料も作れるかもな? だから、今日は……**『簡易的な酒造/発酵容器』**をクラフトするぞ!」
これで、ユウキは異世界の様々な果物や穀物を利用して、バリエーション豊かな発酵飲料(低アルコール飲料を含む)を造り、ユウキと仲間たちの食卓をさらに彩れるようになる。特に、温度や発酵ガスの調整が可能な密閉性の高い容器があれば、品質が安定し、より複雑な風味を引き出せるだろう。必要な素材は、特定の粘土質の土、そして密閉性を高めるための樹液や植物の樹脂だ。ユウキは、この粘土が持つ適度な通気性と熱保持性、そして焼成することで得られる耐久性に目をつけた。これら全て、この「嘆きの森」で手に入る天然の素材だ。
早速、クラフトに取り掛かる。ルークとモフモフ草食竜も、ユウキの隣にちょこんと座り込み、目をキラキラさせて作業を見守っている。ユウキはまず、選りすぐった粘土質の土と、密閉性を高めるための樹液を選び出す。頭の中で**「簡易的な酒造/発酵容器」**の設計図が浮かび上がる。発酵ガスを逃がしつつ、外気の侵入を防ぐための簡単なエアロックのような構造もイメージしている。
ユウキは、必要な素材を揃え、クラフトのスキルを発動する。手元の粘土が形を変え、滑らかな容器へと成形されていく。樹液が、容器の縁をコーティングし、密閉性を高めていく。カシュン、カシュンと、素材が合成されていくような音が微かに響く。スキルを使うユウキの手は澱みなく動き、まるで魔法のように素材が新たな形を成していく。ルークとモフモフ草食竜は、その光景を不思議そうに、しかし真剣な眼差しで見つめている。モフモフ草食竜は、時折「キュルル……?」と小首を傾げ、ユウキの作業を見守った。
「こらこら、お前たち。これはまだ飲み物じゃないぞ。でも、これができれば、もっと美味い飲み物や調味料が作れるんだからな!」
ユウキが笑いながら言うと、ルークは「クゥン」と小さく鳴き、モフモフ草食竜も「キュルル!」と嬉しそうにしっぽを振った。まるで「早く美味しい飲み物を体験したい!」と言っているかのようだ。
ユウキの魔力が素材に流れ込み、加工が進む。やがて、光が収まると、ユウキの目の前に、見た目は素朴だが、機能性と実用性を兼ね備えた**手作りの簡易酒造/発酵容器**が一つ、完成していた。ずんぐりとした壺のような形で、上部には蓋と、発酵ガスを排出するための小さな穴が設けられている。
「うおお! できた! これが俺たちの発酵ポットだ! ルーク、モフモフ、見てみろ!」
ユウキが完成したばかりの容器を二匹に見せると、ルークは興奮したように立ち上がり、クンクンと匂いを嗅いだ。モフモフ草食竜も、ユウキの足元にまとわりつき、クリクリした目で容器を見上げている。
「ワフッ! ワフッ!」
「キュルル! キュルル!」
と、二匹は喜びの声を上げ、ユウキの周りを跳ね回る。その仕草に、ユウキは思わず二匹をまとめて抱き上げて、その頭を優しく撫でてやった。
「よしよし、そんなに喜んでくれるのか。じゃあ早速、明日はこの容器を使って、とびきり美味い発酵飲料を仕込んでやるか!」
早速、発酵容器を洞窟内の温度が安定した場所に置く。今日の料理は洞窟の食卓で済ませるが、明日からの仕込みが今から楽しみで仕方がない。ルークとモフモフ草食竜も、ユウキの隣で、いつも以上にワクワクした様子を見せている。
「なぁ、お前たち。明日は、新しい飲み物を仕込むぞ! 楽しみにしてろよ!」
ユウキがそう言うと、ルークは「クゥン」と短く鳴き、モフモフ草食竜も「キュルル……」と喉を鳴らした。まるで「うん、楽しみだね!」と言っているかのようだ。
簡易的な酒造/発酵容器の完成は、ユウキの異世界生活における「食の楽しみ」と「調味料の多様性」を、新たな次元へと引き上げた。これで、甘くて優しい食感の料理を、より効率的に楽しめるようになる。この「嘆きの森」での生活は、ルークとモフモフ草食竜というかけがえのない仲間と共に、ますます豊かで充実したものとなった。
一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークとモフモフ草食竜の頭を撫でる。二匹はユウキの腕に顔をこすりつけ、小さな寝息を立てている。次は何をクラフトしようかと考える。発酵が深まったことで、**より複雑な風味の調味料や、保存食の加工**も面白そうだ。
「よし、明日は、この洞窟での生活をさらに充実させるための、あれをクラフトするぞ!」
ユウキは仲間たちの温もりを感じながら、次なるクラフトに期待を膨らませ、静かに目を閉じた。
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### 連載スケジュールについて
**おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、いよいよ本格始動!**
この物語は、**2025年7月28日(月)より、毎日連載をスタートします!**
* **2025年7月27日(日)までに、第1話から第20話までが公開済みです。**
* **第21話以降は、7月28日(月)より順次公開いたします!**
今後の公開スケジュールはこちら!
* **平日(月~金):朝と晩に1話ずつ公開**
* **週末(土~日):朝・昼・晩に1話ずつ公開**
読者の皆さんの応援や反響次第で、公開ペースをさらに増やすことも検討してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
**ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!**
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