第25話:異世界の麺!手動式製麺機
翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。
「よしよし、ルーク。おはよ。今日も一日、頑張るか!」
優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。その愛らしい仕草に、ユウキの顔も自然と緩む。朝一番のルークとの触れ合いは、ユウキにとって何よりの癒やしであり、この「嘆きの森」での日々を充実させる原動力となっていた。
**今日一日でクラフトできるのは一つだけ。** 洞窟の拠点では、石釜、蒸し器、燻製器、麺棒と板、泡だて器、コーヒーミル、手作りの食卓と椅子といった調理器具や食器が揃い、塩、醤油、果実酒、樹液糖、味噌、そして仕込み中の酢といった調味料も充実してきた。携帯用簡易調理セットで野外での調理も可能になり、昨日完成した粉ふるい器のおかげで、よりきめ細かく不純物のない粉が手に入るようになった。食に関する基盤は完璧に整い、食卓はあらゆる味覚と食感で豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**「この上質な粉を活かして、新しい食感の料理、つまり『麺』を作りたい」**という新たな欲求が湧き上がっていた。前世で慣れ親しんだうどんやラーメン、パスタのような麺料理が恋しくなるのだ。これは、まさに「調理に関するもの」であり、食のバリエーションを飛躍的に広げるための重要な一手となる。
「なぁ、ルーク。お前、フワフワのパンも美味いけどさ、ズルズルってすすれる『麺』ってのもあるんだぜ? 食ってみたくないか?」
ユウキが問いかけると、ルークは「ワフッ?」と首を傾げ、真っ直ぐな青い瞳で見上げてきた。ズルズルという表現に、少し戸惑っているようにも見える。
「大丈夫だ、大丈夫。これがあれば、今までとは全然違う、ツルツルでコシのある美味いもんが食えるようになるんだ。だから、今日は……**『簡易的な製麺機』**を作るぞ!」
これで、ユウキが粉ふるい器で精製した粉を使い、手軽に麺を作り出せるようになる。うどん、パスタ、あるいはこの異世界ならではの麺料理など、食の可能性が無限に広がるだろう。素材は、丈夫な木材、特定の植物の油を塗って滑らかにするための木の実、そして麺を切り出すための鋭い石刃を使う。これら全てが、この異世界の森で手に入る天然の素材だ。
早速、手作業に取り掛かる。ルークも、ユウキの隣にちょこんと座り込み、目をキラキラさせて作業を見守っている。まず、**石の出刃包丁**を使い、丈夫な木材を丁寧に加工していく。粉を投入し、こねた生地を伸ばすための平らな台と、それを均一な厚さに伸ばすためのローラー、そしてそのローラーから出てきた生地を、均一な太さの麺に切り出すための刃の構造を緻密に削り出す。特に重要なのは、ローラーと刃の精度だ。ユウキは、前世の記憶を頼りに、最もシンプルな手動式の製麺機の構造を再現しようと試みる。
ユウキが木材を削ったり、部品を組み合わせたりするたびに、トントン、ギコギコと音が響き、ルークはそれを耳をピクピクさせながら聞いている。時折、ユウキの手元に顔を近づけて、新しい道具の形を確かめようとする。
「こらこら、ルーク。まだ完成じゃないぞ。でも、これができれば、ツルツルの美味い麺が食えるんだからな!」
ユウキが笑いながら言うと、ルークは「クゥン」と小さく鳴き、嬉しそうにしっぽを振った。まるで「早くツルツルを体験したい!」と言っているかのようだ。
ユウキは、汗をかきながらも、根気強く素材を加工し、組み合わせていく。前世の知識と、この異世界で培った経験、そして鍛え上げられたラガーマンの体格をフル活用して、理想の形を追求する。やがて、夕暮れが迫る頃、ユウキの目の前に、見た目は素朴だが、機能美を備えた**手作りの簡易製麺機**が一つ、完成していた。ハンドルを回すと、ローラーが動き、その先に設置された刃が麺を切り出す仕組みだ。
「うおお! できた! これが俺たちの製麺機だ! ルーク、見てみろ!」
ユウキが完成したばかりの製麺機をルークに見せると、ルークは興奮したように立ち上がり、クンクンと匂いを嗅いだ。まだ麺の匂いはしないが、ルークはユウキの喜びを感じ取っているようだ。
「ワフッ! ワフッ!」
と、喜びの声を上げ、ユウキの周りを跳ね回る。その仕草に、ユウキは思わず抱き上げて、その頭を優しく撫でてやった。
「よしよし、そんなに喜んでくれるのか。じゃあ早速、明日はこの製麺機で麺を打って、とびきり美味い麺料理を作ってやるか!」
早速、製麺機を保管場所にしまう。今日の料理は洞窟の食卓で済ませるが、明日の麺作りが今から楽しみで仕方がない。ルークも、ユウキの隣で、いつも以上にワクワクした様子を見せている。
「なぁ、ルーク。明日は、ツルツルの麺が食えるからな。楽しみにしてろよ!」
ユウキがそう言うと、ルークは「クゥン」と短く鳴き、ユウキの足に頭をすり寄せてきた。まるで「うん、楽しみだね!」と言っているかのようだ。
簡易的な製麺機の完成は、ユウキの異世界生活における「食のバリエーション」を、新たな次元へと引き上げた。これで、パンだけでなく、様々な麺料理を作れるようになる。この「嘆きの森」での生活は、ルークというかけがえのない相棒と共に、ますます豊かで充実したものとなった。
一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークの頭を撫でる。ルークもユウキの腕に顔をこすりつけ、小さな寝息を立てている。次は何を作ろうかと考える。麺料理の幅が広がったことで、**新たなスープや具材の探求**も面白そうだ。
「よし、明日は、この洞窟での生活をさらに充実させるための、あれを作るぞ!」
ユウキはルークの温もりを感じながら、次なるクラフトに期待を膨らませ、静かに目を閉じた。
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### 連載スケジュールについて
**おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、いよいよ本格始動!**
この物語は、**2025年7月28日(月)より、毎日連載をスタートします!**
* **2025年7月27日(日)までに、第1話から第20話までが公開済みです。**
* **第21話以降は、7月28日(月)より順次公開いたします!**
今後の公開スケジュールはこちら!
* **平日(月~金):朝と晩に1話ずつ公開**
* **週末(土~日):朝・昼・晩に1話ずつ公開**
読者の皆さんの応援や反響次第で、公開ペースをさらに増やすことも検討してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
**ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!**
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