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第18話:深淵の旨味!異世界味噌の誕生


翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。


「よしよし、ルーク。おはよ。今日も一日、頑張るか!」


優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。その愛らしい仕草に、ユウキの顔も自然と緩む。この「嘆きの森」での日々は、ルークというかけがえのない相棒と、そして「食」への飽くなき探求心によって、ますます充実したものになっていた。


**今日一日でクラフトできるものは一つだけ。** 石釜、蒸し器、燻製器といった調理器具は揃い、塩、醤油、果実酒、樹液糖といった調味料も手に入れた。乳鉢と乳棒で食材加工の幅も広がり、完全密閉型保存容器や携帯型保温・保冷容器も揃った。食に関する基盤は完璧に整い、食卓は甘みも加わり豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**「醤油とは異なる、より複雑で奥深い旨味を持つ発酵調味料」**への強い欲求が湧き上がっていた。前世の「味噌」のような、独特のコクと香ばしさ、そして高い保存性を持つペースト状の調味料があれば、料理の幅はさらに広がるはずだ。特に、汁物や和え物、肉や魚の下味付けに革命を起こせるだろう。


「よし、今日のクラフトは……**『発酵豆ペースト(味噌)』**に決めた!」


これで、森で見つけた特定の豆類と穀物を使い、味噌のような発酵調味料を作り出す。これは、スープや煮物の味付け、肉や魚の漬け込み、さらにはそのままご飯に乗せても美味い、まさに万能の調味料になるだろう。素材は、森で見つけた、大豆に似た**茶色い豆**と、小麦に似た**穂のついた穀物**。そして、発酵を促すための特殊なカビ(麹菌に似たもの)、さらに精製済みの塩と清らかな水を使う。


早速、クラフトに取り掛かる。洞窟の奥、比較的温度と湿度が安定し、発酵に適した場所を選定した。まず、石の出刃包丁を使い、採集してきた豆を丁寧に選別し、石釜で柔らかく煮込む。煮込んだ豆を、昨日クラフトした乳鉢と乳棒で丹念にすり潰し、滑らかなペースト状にする。次に、穀物を軽く煎って砕き、これまでの醤油クラフトで使った、発酵を促す特殊なカビを少量混ぜ込む。最後に、豆のペーストと、砕いた穀物、そして塩と清らかな水を、大きな石製の容器に入れる。ユウキのゴツい手で、それらを根気強く混ぜ合わせ、発酵を促す環境を整える。


脳内で「クラフト:**発酵豆ペースト(味噌)**」の文字が浮かび上がり、ユウキの魔力が素材に流れ込んでいく。混ぜ合わされた原料は、魔力によって発酵が促進され、独特の芳醇な香りが洞窟内に漂い始める。豆や穀物が微生物の力で分解され、複雑なアミノ酸や糖が生成されていく。液体の色が次第に濃くなり、独特の風味が凝縮されていく。やがて、光が収まると、石製の容器の中には、深みのある茶色をした、とろりとした**発酵豆ペースト(味噌)**が、その日のクラフトの成果として一つ、完成していた。香ばしく、そして奥深い旨味が凝縮された、まさに「異世界味噌」だ。


「うおお! できた! これが異世界の味噌か!」


ユウキは興奮して、完成した味噌を指ですくい、その味を確かめた。口に含むと、醤油とはまた異なる、濃厚な旨味と独特の香ばしさが広がる。かすかな塩味と甘み、そして発酵による複雑な風味が、これまでのどの調味料とも違う、深い感動を与えてくれた。


早速、味噌の試食だ。洞窟の水源から汲んだ水と、簡易貯蔵庫の根菜、そして少量の燻製肉を使い、石釜で熱い汁物を作る。仕上げに、新しく作ったこの味噌を溶き入れる。立ち上る湯気と共に、食欲をそそる香りが洞窟を満たした。


その様子を、ルークがユウキの足元にチョコンと座り込み、キラキラした青い目で汁物を見つめている。立ち上る味噌の香りに、鼻をヒクヒクさせ、期待に満ちた表情を浮かべている。


「ルーク、今日は特別だぞ! 新しい美味い汁物だ!」


そう声をかけると、ルークは「ワフッ!」と小さく鳴いて、ユウキの足に頭をすり寄せてきた。まるで「うん、早く食べたい!」と言っているかのようだ。

ユウキは、新しく作った深皿に汁物を盛り付け、ルークの分も用意してやる。ルークは、皿に盛られた汁物を前に、鼻をヒクヒクさせ、これまで以上に興奮した様子を見せる。一口食べると、その青い目が大きく見開かれた。


「ワフッ! ワフフッ!」


と、喜びの声を上げ、尻尾をブンブンと振りながら、あっという間に平らげてしまった。その食べっぷりは、まるでこの世で一番美味いものを食べているかのようだ。味噌が加わったことで、食材本来の旨味が引き出され、ルークもその違いをはっきりと感じ取ったのだろう。


「ハハッ、そんなに美味いか! よかったよかった!」


ルークの満面の笑顔を見て、ユウキも心から満足した。この洞窟という新たな拠点での生活が、自分の手で作り出した調味料によって、こんなにも豊かになる。この過酷な異世界での生活も、報われる気がした。


発酵豆ペースト(味噌)の完成は、ユウキの異世界生活に、さらなる食の深みをもたらした。塩味、甘み、旨味、香ばしさ。あらゆる味覚が満たされた今、ユウキの食の探求は、新たな次元へと突入した。この洞窟は、まさに「食の王国」へと変わりつつあった。


一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークの頭を撫でる。次は何をクラフトしようかと考える。食に関する生活基盤は完璧に整った。次に考えるべきは、**洞窟内での活動範囲を広げ、より快適に過ごすための「食以外の生活空間の充実」**かもしれない。あるいは、**この豊富な食料を活用し、さらなる「食の多様性」を追求するアイテム**か。


「よし、明日は、この洞窟での生活をさらに充実させるための、あれを作るぞ!」


次なるクラフトに期待を膨らませ、ユウキは静かに目を閉じた。


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### 連載スケジュールについて


本日が**2025年7月26日(土)** ですので、初回公開日となります。


* **本日(7月26日)と明日(7月27日)で、初回として各日10話ずつ、一挙に公開いたします!**

* 本日中に、第1話~第10話までを公開。

* 明日(7月27日)に、第11話~第20話までを公開。


* その後は、**平日(月~金)は朝と晩に1話ずつ**、そして**週末(土~日)は朝・昼・晩に1話ずつ**公開していく予定です。


読者の皆さんのニーズや反響があれば、公開ペースを増やすことも検討してまいりますので、応援よろしくお願いします!


おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!


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