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第17話:森の恵み!黄金の甘味、樹液糖


翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。


「よしよし、ルーク。おはよ。今日も一日、頑張るか!」


優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。その愛らしい仕草に、ユウキの顔も自然と緩む。この「嘆きの森」での日々は、ルークというかけがえのない相棒と、そして「食」への飽くなき探求心によって、ますます充実したものになっていた。


**今日一日でクラフトできるものは一つだけ。** 石釜、蒸し器、燻製器といった調理器具は揃い、塩、醤油、果実酒、そして昨日作った乳鉢と乳棒で食材加工の幅も広がった。完全密閉型保存容器や携帯型保温・保冷容器も手に入れ、食に関する基盤は完璧に整い、食卓は豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**「料理の味のバリエーションをさらに広げるためには、『甘み』の要素が決定的に不足している」**という新たな課題が浮かび上がっていた。前世で慣れ親しんだ、甘い味付けの料理やデザートが作れないことに、物足りなさを感じていたのだ。


「よし、今日のクラフトは……**『樹液糖』**に決めた!」


これで、森で見つけた甘い樹液を出す木から、メープルシロップのような天然の甘味料を作り出す。肉料理の照り焼きや、果実を使ったデザート、あるいは保存食の風味付けなど、料理の幅が飛躍的に広がるだろう。素材は、森の奥で見つけた、幹から甘い樹液が滲み出る特徴的な木と、樹液を煮詰めるための耐熱性の高い石製の鍋、そしてろ過するための特殊な繊維を持つ植物を使う。


早速、クラフトに取り掛かる。まず、石の出刃包丁を使い、甘い樹液を出す木の幹に小さな穴を丁寧に開ける。そこから滴り落ちる樹液を、新しく作った石製の容器で慎重に集めていく。樹液は透明で、かすかに甘い香りがする。次に、集めた樹液を煮詰めるための、底が深く、熱効率の良い石製の鍋を一つ、緻密に削り出す。


脳内で「クラフト:**樹液糖**」の文字が浮かび上がり、ユウキの魔力が素材に流れ込んでいく。石製の鍋は魔力によって熱伝導率が向上し、樹液が効率よく煮詰まるようになる。樹液は、魔力によって不純物が分離しやすくなり、より純粋な甘味成分が凝縮される。ろ過に使う植物繊維も、魔力で目が細かくなり、不純物を完璧に除去できるフィルターへと変化する。やがて、光が収まると、ユウキの目の前に、ずっしりと重く、機能的な**石製の煮詰め鍋**と、その鍋で煮詰めた、琥珀色に輝く**樹液糖**が、完全密閉型保存容器に収められて一つ、完成していた。


「うおお! できた! これで甘いもんも作れるぞ!」


ユウキは興奮して、出来上がった樹液糖を眺めた。これはまさに、食の可能性を無限に広げる、新たな魔法の調味料だ。


早速、樹液糖の試食だ。指先に少量取り、口に含む。濃厚でとろりとした甘みが、口いっぱいに広がる。後味には、森の木々を思わせるような、ほのかな香りが残る。これは間違いなく、前世のメープルシロップにも匹敵する、素晴らしい甘味料だ。


その様子を、ルークがユウキの足元にチョコンと座り込み、キラキラした青い目で樹液糖を見つめている。甘い香りに、鼻をヒクヒクさせ、興味津々といった様子だ。


「ルーク、これは美味いぞ! お前にも分けてやるからな!」


そう声をかけると、ルークは「ワフッ!」と小さく鳴いて、ユウキの足に頭をすり寄せてきた。まるで「うん、早く食べたい!」と言っているかのようだ。

今日の料理は、石釜でローストした肉に、樹液糖を軽く塗って焼いたものだ。甘じょっぱい香りが食欲をそそり、肉の旨味がさらに引き立つ。デザートには、森の果実を蒸し器で蒸し、樹液糖をかけたものを用意した。


ルークも、いつも以上に美味しそうに料理を平らげ、満足げにユウキの足元で丸くなった。樹液糖が手に入ったことで、ユウキの料理への意欲はさらに高まった。


樹液糖の完成は、ユウキの異世界生活における食のバリエーションを飛躍的に広げた。塩味、旨味に加えて「甘み」が加わったことで、料理の表現が多様化し、この「嘆きの森」での生活は、ますます充実したものとなった。この洞窟は、まさに「食の楽園」へと変わりつつあった。


一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークの頭を撫でる。次は何をクラフトしようかと考える。甘みも手に入れた今、さらに料理のコクと深みを追求したいという欲求が芽生えていた。前世で愛された、あの独特の旨味と香ばしさを持つ、発酵食品の記憶が脳裏をよぎる。


「よし、明日は、この洞窟での食卓をさらに奥深く、豊かなものにするための、あれを作るぞ!」


次なるクラフトに期待を膨らませ、ユウキは静かに目を閉じた。


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### 連載スケジュールについて


**本日(7月26日)と明日(7月27日)で、初回として各日10話ずつ、一挙に公開いたします!**


その後は、**平日(月~金)は朝と晩に1話ずつ**、そして**週末(土~日)は朝・昼・晩に1話ずつ**公開していく予定です。


読者の皆さんのニーズや反響があれば、公開ペースを増やすことも検討してまいりますので、応援よろしくお願いします!


おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!


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