表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/39

第16話:食感の革命!洞窟の石製乳鉢


翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。


「よしよし、ルーク。おはよ。今日も一日、頑張るか!」


優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。その愛らしい仕草に、ユウキの顔も自然と緩む。この「嘆きの森」での日々は、ルークというかけがえのない相棒と、そして「食」への飽くなき探求心によって、ますます充実したものになっていた。


**今日一日でクラフトできるものは一つだけ。** 石釜での焼く調理、簡易蒸し器での蒸す調理、本格燻製器での燻製。塩、醤油、果実酒といった調味料も充実し、完全密閉型保存容器で保存も完璧になった。携帯型保温・保冷容器も手に入れ、食に関する基盤は完璧に整い、食卓は豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**「食材を『すり潰す』『粉にする』『ペースト状にする』といった、より細かい加工を行うための器具がない」**という新たな課題が浮かび上がっていた。これにより、これまで作れなかった滑らかなスープやソース、あるいは乾燥ハーブを粉末にした新たな調味料など、料理のバリエーションと風味が限定されていると感じていた。


「よし、今日のクラフトは……**『石製の乳鉢と乳棒』**に決めた!」


これで、森で見つけた様々な香草や木の実を粉末にしたり、根菜を滑らかなペーストにしたりと、食材の加工方法が飛躍的に広がる。料理の食感や風味に新たな深みを与え、これまでとは一味違う料理に挑戦できるだろう。素材は、洞窟内に豊富にある、硬質で耐久性のある石材を使う。


早速、クラフトに取り掛かる。洞窟の奥、調理台のすぐ隣の、安定した場所を選定した。まず、石の出刃包丁を使い、採集してきた硬質な石材を丁寧に加工していく。乳鉢となる器状の石と、それを擦り潰すための乳棒となる棒状の石を、それぞれ緻密に削り出す。乳鉢の内側は、食材が効率よく擦れるように、わずかに粗い表面に仕上げる。乳棒は、手に馴染みやすく、力を込めやすい形状に加工する。


脳内で「クラフト:**石製の乳鉢と乳棒**」の文字が浮かび上がり、ユウキの魔力が素材に流れ込んでいく。石材は魔力によってさらに硬度を増し、摩耗しにくくなる。乳鉢の内側と乳棒の先端は、食材を効率的に粉砕・すり潰せるよう、表面構造が最適化される。やがて、光が収まると、ユウキの掌に、ずっしりと重く、精巧な作りの**石製の乳鉢と乳棒**が一つ、完成していた。乳鉢は安定感があり、乳棒は手に吸い付くように馴染む。


「うおお! できた! これで料理の幅がさらに広がるぞ!」


ユウキは興奮して、出来上がった乳鉢と乳棒を眺めた。これはまさに、食の探求をさらに深めるための、新たな扉を開く器具だ。


早速、乳鉢と乳棒の試運転だ。森で見つけた、独特の香りを放つ乾燥したハーブと、先日収穫したばかりの硬い木の実を少量取り出す。乳鉢に入れ、乳棒でゆっくりと、しかし確実にすり潰していく。ゴリゴリ、ゴリゴリ、という心地よい音が洞窟内に響き渡る。やがて、ハーブはきめ細かな粉末に、木の実も香ばしいペースト状になった。


その様子を、ルークがユウキの足元にチョコンと座り込み、キラキラした青い目で乳鉢を見つめている。立ち上るハーブの香りに、鼻をヒクヒクさせ、興味津々といった様子だ。


「ルーク、これで新しい味の調味料ができるぞ!」


そう声をかけると、ルークは「ワフッ!」と小さく鳴いて、ユウキの足に頭をすり寄せてきた。まるで「うん、楽しみだね!」と言っているかのようだ。

今日の料理は、石釜でローストした肉に、新しく作ったハーブの粉末を振りかけたものだ。さらに、ペースト状にした木の実をソースとして添える。これまでとは違う、繊細な香りと食感が加わり、料理は格段に奥深い味わいになった。


ルークも、いつも以上に美味しそうに料理を平らげ、満足げにユウキの足元で丸くなった。石製の乳鉢と乳棒が手に入ったことで、ユウキの料理への意欲はさらに高まった。


石製の乳鉢と乳棒の完成は、ユウキの異世界生活における食の可能性を大きく広げた。食材の加工方法が多様化し、新たな調味料や料理の創造が可能になったことで、この「嘆きの森」での生活は、ますます充実したものとなった。この洞窟は、まさに「食の楽園」へと変わりつつあった。


一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークの頭を撫でる。次は何をクラフトしようかと考える。食に関する生活基盤は完璧に整った。次に考えるべきは、**洞窟内での活動範囲を広げ、より快適に過ごすための「食以外の生活空間の充実」**かもしれない。あるいは、**森での「効率的かつ安全な採集・探索」**に役立つ、しかし料理に繋がるアイテムか。


「よし、明日は、この洞窟での生活をさらに充実させるための、あれを作るぞ!」


次なるクラフトに期待を膨らませ、ユウキは静かに目を閉じた。


---


### 連載スケジュールについて


**本日(7月26日)と明日(7月27日)で、初回として各日10話ずつ、一挙に公開いたします!**


その後は、**平日(月~金)は朝と晩に1話ずつ**、そして**週末(土~日)は朝・昼・晩に1話ずつ**公開していく予定です。


読者の皆さんのニーズや反響があれば、公開ペースを増やすことも検討してまいりますので、応援よろしくお願いします!


おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!


---

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ