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第15話:冒険の友!魔法の携帯保存箱


翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。


「よしよし、ルーク。おはよ。今日も一日、頑張るか!」


優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。その愛らしい仕草に、ユウキの顔も自然と緩む。この「嘆きの森」での日々は、ルークというかけがえのない相棒と、そして「食」への飽くなき探求心によって、ますます充実したものになっていた。


**今日一日でクラフトできるものは一つだけ。** 石釜での焼く調理、簡易蒸し器での蒸す調理、本格燻製器での燻製。塩、醤油、果実酒といった調味料も充実し、完全密閉型保存容器で保存も完璧になった。食に関する基盤は完璧に整い、食卓は豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**「洞窟の外での活動中も、調理済みや生の食材の鮮度を長時間保ちたい」**という新たな欲求が湧き上がっていた。森の奥深くへの探索や、もし洞窟の外で調理する機会があった場合に、せっかく作った美味しい料理や貴重な食材を安全に持ち運びたい。特に、夏に向けて気温が上がることを考えると、食材の鮮度保持は喫緊の課題だった。


「よし、今日のクラフトは……**『携帯型保温・保冷容器』**に決めた!」


これは、持ち運び可能なクーラーボックスのようなものだ。これで、森の奥深くへ探索に出かける際も、新鮮な食材や調理済みの料理を持ち運べるようになる。食の安全と行動範囲の拡大を両立できる、まさに冒険の友となるだろう。素材は、洞窟内に豊富にある、軽くて加工しやすい特定の石材と、断熱効果の高い特殊な苔、そして密閉性を高めるための樹液を使う。


早速、クラフトに取り掛かる。洞窟の奥、比較的乾燥していて作業しやすい場所を選定した。まず、石の出刃包丁を使い、採集してきた軽石のような石材を丁寧に加工していく。箱状の本体と、ぴったりと嵌まる蓋の形を緻密に削り出す。次に、断熱材となる特殊な苔を丁寧に乾燥させ、細かくほぐす。この苔は、見た目以上に空気を含み、熱の伝導を妨げる性質がある。


脳内で「クラフト:**携帯型保温・保冷容器**」の文字が浮かび上がり、ユウキの魔力が素材に流れ込んでいく。石材は魔力によってさらに軽量化され、内部に微細な空洞が形成され、保温・保冷効果が高まる。苔は、魔力で結合力が強まり、隙間なく容器の内壁に密着する。特殊な樹液は、魔力で硬化し、容器の表面をコーティングして防水性と耐久性を高め、蓋と本体の間の密閉性を完璧にする。やがて、光が収まると、ユウキの足元に、見た目は素朴だが、ずっしりと機能美を湛えた**携帯型保温・保冷容器**が一つ、完成していた。蓋はしっかりとロックでき、持ち運びやすいように側面には頑丈な蔓の取っ手が付いている。


「うおお! できた! これでどこへでも美味いもんを持って行けるぞ!」


ユウキは興奮して、出来上がった容器を眺めた。これはまさに、これまでのクラフト技術の粋を集めた、実用的な逸品だ。この容器一つで、探索の質が格段に向上する。


早速、今日の食事の準備に取り掛かる。昨夜燻製にした肉の一部と、簡易蒸し器で蒸したての根菜を、新しく作ったこの容器に入れてみる。まだ温かい料理が、容器の中でゆっくりと熱を保っている。試しに、小川で汲んできた冷たい水を少量入れ、蓋を閉めてしばらく放置してみる。数時間後、開けてみると、水はまだひんやりと冷たいままだった。


その様子を、ルークがユウキの足元にチョコンと座り込み、キラキラした青い目で容器を見つめている。ユウキが何か特別なものを作ったことを察したのか、いつも以上に興味津々といった様子だ。


「ルーク、これで遠くへ行っても、美味いもんが冷めずに食えるからな!」


そう声をかけると、ルークは「ワフッ!」と小さく鳴いて、ユウキの足に頭をすり寄せてきた。まるで「うん、すごいね!」と言っているかのようだ。

今日の料理は、携帯型保温・保冷容器に詰める前の、出来立ての燻製肉と蒸し根菜だ。ルークも、いつも以上に美味しそうに料理を平らげ、満足げにユウキの足元で丸くなった。携帯型保温・保冷容器が手に入ったことで、ユウキは更なる探索の可能性に思いを馳せていた。


携帯型保温・保冷容器の完成は、ユウキの異世界生活における行動範囲と食の安全性を飛躍的に向上させた。食料の確保、調理、保存の基盤が盤石になり、さらに外での活動時も新鮮な食材や調理済みの料理を楽しめるようになったことで、この「嘆きの森」での生活は、ますます充実したものとなった。この洞窟は、まさに「食の楽園」へと変わりつつあった。


一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークの頭を撫でる。次は何をクラフトしようかと考える。食に関する生活基盤は完璧に整った。次に考えるべきは、**洞窟内での活動範囲を広げ、より快適に過ごすための「食以外の生活空間の充実」**かもしれない。あるいは、**森での「効率的かつ安全な採集・探索」**に役立つ、しかし料理に繋がるアイテムか。


「よし、明日は、この洞窟での生活をさらに充実させるための、あれを作るぞ!」


次なるクラフトに期待を膨らませ、ユウキは静かに目を閉じた。


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### 連載スケジュールについて


**本日(7月26日)と明日(7月27日)で、初回として各日10話ずつ、一挙に公開いたします!**


その後は、**平日(月~金)は朝と晩に1話ずつ**、そして**週末(土~日)は朝・昼・晩に1話ずつ**公開していく予定です。


読者の皆さんのニーズや反響があれば、公開ペースを増やすことも検討してまいりますので、応援よろしくお願いします!


おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!


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