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第14話:香りの芸術!洞窟の本格燻製器


翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。


「よしよし、ルーク。おはよ。今日も一日、頑張るか!」


優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。その愛らしい仕草に、ユウキの顔も自然と緩む。この「嘆きの森」での日々は、ルークというかけがえのない相棒と、そして「食」への飽くなき探求心によって、ますます充実したものになっていた。


**今日一日でクラフトできるものは一つだけ。** 石釜での焼く調理、簡易蒸し器での蒸す調理。塩、醤油、果実酒といった調味料も充実し、昨日完成した完全密閉型保存容器で保存も完璧になった。食に関する基盤は完璧に整い、食卓は豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**「食材をただ保存するだけでなく、煙の力で独特の風味と香りを加え、さらに長期保存を可能にする調理法」**への強い欲求が湧き上がっていた。簡易的な燻製は試したが、もっと本格的に、煙の香りを食材に深く染み込ませ、風味豊かな逸品を作り出したい。


「よし、今日のクラフトは……**『本格燻製器』**に決めた!」


これで、肉や魚、チーズのような乳製品(もし見つかれば)を、芳醇な煙の香りで包み込み、新たな味の境地を開拓できる。保存性も高まり、来るべき冬への備えもさらに盤石になるだろう。素材は、洞窟内に豊富にある、熱に強く煙を閉じ込めやすい石材と、煙を効率よく循環させるための特殊な木材、そして煙を出すための木片スモークウッドに適した香りの良い木の実や葉を使う。


早速、クラフトに取り掛かる。洞窟の奥、煙が外部に排出しやすく、かつ石釜からも遠すぎない場所を選定した。まず、石の出刃包丁を使い、採集してきた石材を丁寧に加工していく。燻製器の本体となる縦長の箱状の構造と、煙を発生させるための焚口、そして煙が内部を循環し、効率よく食材に当たるための巧妙な通気口を設計する。煙が逃げないよう、密閉性にも最大限に注意を払う。


脳内で「クラフト:**本格燻製器**」の文字が浮かび上がり、ユウキの魔力が素材に流れ込んでいく。石材が正確に切り出され、煙が食材に均一に当たる複雑な内部構造へと変化する。木材は、魔力によって煙の香りを吸収しやすくなり、また耐久性も増す。やがて、光が収まると、洞窟の一角に、ユウキの胸ほどの高さを持つ、堂々たる**石製の本格燻製器**が形を成した。下部にはスモークウッドを燃やす焚口があり、その上には食材を吊るすためのフックが取り付けられている。密閉された空間で、煙がゆっくりと食材を包み込む構造だ。


「うおお! できた! これで燻製の達人になれるぞ!」


ユウキは興奮して、出来上がった燻製器を眺めた。これで、この洞窟は、単なる調理場ではなく、まさに「食の芸術工房」へと進化していく実感があった。


早速、燻製器の試運転だ。簡易貯蔵庫から、昨日捕獲したばかりの大きな魚と、少し硬い肉を取り出す。調理台の上で丁寧に下処理し、塩と自作の香辛料(森で見つけた乾燥ハーブなど)を擦り込む。そして、燻製器のフックに吊るす。焚口には、森で見つけた独特の香りを放つ木片(ユウキはそれを「スモークウッド」と呼ぶことにした)をくべて、ゆっくりと火をつける。


その様子を、ルークがユウキの足元にチョコンと座り込み、キラキラした青い目で燻製器を見つめている。立ち上る煙と、これまでとは違う調理の仕方に、興味津々といった様子だ。


「ルーク、これは時間がかかるぞ。だが、待った分だけ美味いもんができるからな!」


そう声をかけると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、ユウキの足に頭をすり寄せてきた。まるで「うん、楽しみだね!」と言っているかのようだ。

数時間後、燻製器の扉を開けると、中から芳醇で香ばしい煙の香りが溢れ出した。魚と肉は、美しい琥珀色に染まり、見た目にも食欲をそそる。一口食べると、凝縮された旨味と、スモーキーな香りが口いっぱいに広がる。


「うむ、完璧だ! これはたまらん! 酒の肴にも最高だぞ!」


ユウキは感動しながら、出来上がった燻製を味わった。洞窟で手に入れた素材だけで、これほどの品質の燻製が作れるとは、まさに驚きだ。

ルークも、いつも以上に美味しそうに料理を平らげ、満足げにユウキの足元で丸くなった。本格的な燻製器が完成したことで、ユウキの料理への意欲はさらに高まった。


本格燻製器の完成は、ユウキの異世界生活に新たな食の楽しみと、保存の可能性をもたらした。食料の確保、調理、保存の基盤が盤石になり、さらに調理のバリエーションが飛躍的に広がったことで、この「嘆きの森」での生活は、ますます充実したものとなった。この洞窟は、まさに「食の楽園」へと変わりつつあった。


一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークの頭を撫でる。次は何をクラフトしようかと考える。食に関する生活基盤は完璧に整った。次に考えるべきは、**洞窟内での活動範囲を広げ、より快適に過ごすための「食以外の生活空間の充実」**かもしれない。あるいは、**さらに遠方への探索を可能にするための「携帯性のある調理器具」**か。


「よし、明日は、この洞窟での生活をさらに充実させるための、あれを作るぞ!」


次なるクラフトに期待を膨らませ、ユウキは静かに目を閉じた。


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### 連載スケジュールについて


**本日(7月26日)と明日(7月27日)で、初回として各日10話ずつ、一挙に公開いたします!**


その後は、**平日(月~金)は朝と晩に1話ずつ**、そして**週末(土~日)は朝・昼・晩に1話ずつ**公開していく予定です。


読者の皆さんのニーズや反響があれば、公開ペースを増やすことも検討してまいりますので、応援よろしくお願いします!


おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!


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