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第13話:貯蔵の極み!奇跡の密閉容器


翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。


「よしよし、ルーク。おはよ。今日も一日、頑張るか!」


優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。その愛らしい仕草に、ユウキの顔も自然と緩む。この「嘆きの森」での日々は、ルークというかけがえのない相棒と、そして「食」への飽くなき探求心によって、ますます充実したものになっていた。


**今日一日でクラフトできるものは一つだけ。** 石釜での大量調理、簡易貯蔵庫での保存、塩や醤油といった調味料、果実酒。そして、昨日作った簡易蒸し器で調理の幅も広がった。食に関する基盤は完璧に整い、食卓は豊かになった。しかし、ユウキの頭の中には、**せっかく作った調味料や醸造物、そして少量の貴重な保存食を、湿気や外部の環境から完全に守り、長期にわたって最高の状態で保管できる「特別な容器」がまだない**という課題が浮かび上がっていた。簡易貯蔵庫は全体的な食料保存には役立つが、醤油や果実酒といった液体系の調味料、あるいは少量だが鮮度を保ちたい特別な食材には、もっと密閉性の高い、専用の容器が必要だ。


「よし、今日のクラフトは……**『完全密閉型保存容器』**に決めた!」


これは、ただの容器ではない。湿気を完全に遮断し、中身を劣化から守る、まさに奇跡の容器だ。これで、自作の醤油や果実酒、そして乾燥させた貴重な香辛料などを、完璧な状態で保存できる。素材は、洞窟内に豊富にある、きめ細かく加工しやすい粘土質の土と、密閉性を高めるための特殊な樹液、そして蓋の隙間を埋めるための弾力性のある苔を使う。


早速、クラフトに取り掛かる。洞窟の奥、水源にほど近い、最も湿度が安定している場所を選定した。まず、石の出刃包丁を使い、採集してきた粘土質の土を丁寧にこねていく。水を加え、異物を除去しながら、なめらかな粘土へと加工する。そして、緻密な計算のもと、寸分の狂いもないように、容器本体と、ぴったりと嵌まる蓋の形を丹念に作り上げていく。特に蓋と本体の接合部分は、空気の出入りを完全に遮断できるよう、極めて精密に仕上げる。


脳内で「クラフト:**完全密閉型保存容器**」の文字が浮かび上がり、ユウキの魔力が素材に流れ込んでいく。粘土は魔力によって高密度に焼き固められ、水や空気を一切通さない強固な陶器へと変化する。特殊な樹液は、魔力で強化され、接着剤と防水膜の役割を果たす。弾力性のある苔は、蓋と本体の間に密着し、完璧なパッキンとなる。やがて、光が収まると、ユウキの掌に、ずっしりと重く、精巧な作りの**完全密閉型保存容器**が一つ、完成していた。表面は滑らかで、触れるとひんやりと冷たい。蓋は驚くほどぴったりと嵌まり、試しに水を入れ逆さにしても、一滴も漏れることはなかった。


「うおお! できた! これで大切な調味料も、食材も完璧に守れるぞ!」


ユウキは興奮して、出来上がった容器を眺めた。これはまさに、これまでのクラフト技術の集大成ともいえる、機能美を備えた逸品だ。この容器一つで、長期保存の安心感が格段に向上する。


早速、昨夜完成したばかりの果実酒の一部を、新しく作ったこの容器に移し替えてみる。透明感のある琥珀色の液体が、陶器の容器の中で美しく揺らめく。しっかりと蓋を閉めると、まるで時間が止まったかのような密閉感がある。


その様子を、ルークがユウキの足元にチョコンと座り込み、キラキラした青い目で容器を見つめている。ユウキが何か特別なものを作ったことを察したのか、いつも以上に興味津々といった様子だ。


「ルーク、これで美味い酒も、醤油も、ずっと美味いまま保存できるからな!」


そう声をかけると、ルークは「ワフッ!」と小さく鳴いて、ユウキの足に頭をすり寄せてきた。まるで「うん、すごいね!」と言っているかのようだ。

今日の料理は、昨日の残りのローストミートと、新たに森で採集した珍しい果実を、簡易蒸し器で蒸したものだ。仕上げに、完全密閉型保存容器に移し替える前の、新鮮な果実酒を少量振りかける。


ルークも、いつも以上に美味しそうに料理を平らげ、満足げにユウキの足元で丸くなった。完璧な保存容器が手に入ったことで、ユウキは更なる調理の可能性に思いを馳せていた。


完全密閉型保存容器の完成は、ユウキの異世界生活における食料管理の最終段階を完成させた。食料の確保、調理、保存の基盤が盤石になり、あらゆる種類の食材や調味料を最高の状態で保管できるようになったことで、この「嘆きの森」での生活は、ますます揺るぎないものとなった。


一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークの頭を撫でる。次は何をクラフトしようかと考える。食に関する生活基盤は完璧に整った。次に考えるべきは、**既存の調理法ではまだ引き出せない食材の可能性や、より高度な調理技術**への挑戦が、ユウキの心をくすぐっていた。特に、前世で愛された、あの「ふっくらとした食感」や「香ばしい香り」を再現したいという欲求が芽生えていた。


「よし、明日は、この洞窟での食卓をさらに奥深く、豊かなものにするための、あれを作るぞ!」


次なるクラフトに期待を膨らませ、ユウキは静かに目を閉じた。


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### 連載スケジュールについて


**本日(7月26日)と明日(7月27日)で、初回として各日10話ずつ、一挙に公開いたします!**


その後は、**平日(月~金)は朝と晩に1話ずつ**、そして**週末(土~日)は朝・昼・晩に1話ずつ**公開していく予定です。


読者の皆さんのニーズや反響があれば、公開ペースを増やすことも検討してまいりますので、応援よろしくお願いします!


おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!


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