第11話:洞窟の快適キッチン!調理台と流し台の完成
翌朝。ユウキは、洞窟に設置された石釜の残り火の温かさに包まれながら目を覚ました。ひんやりとした洞窟の空気も、石釜のおかげで以前よりずっと過ごしやすくなっている。隣ではルークが、ユウキの胸元に顔をうずめて、穏やかな寝息を立てている。
「よしよし、ルーク。おはよ。今日も一日、頑張るか!」
優しく頭を撫でてやると、ルークは「クゥン」と小さく鳴いて、体を伸ばした。その愛らしい仕草に、ユウキの顔も自然と緩む。この「嘆きの森」での日々は、ルークというかけがえのない相棒と、そして「食」への飽くなき探求心によって、ますます充実したものになっていた。
今日一日でクラフトできるものは一つだけ。石釜で本格的な調理ができるようになり、簡易貯蔵庫で食料の管理も万全になった。塩や醤油といった調味料も手に入り、味のバリエーションも広がった。食はまさに「楽園」と呼べるほど充実してきたが、ユウキは、**食材の下処理や調理器具、食器を洗う際の不便さ**を感じていた。まだ調理台は地面に広げた木のまな板で、洗い物も小川まで行かなければならない。このままでは、どんなに美味しい料理を作っても、**衛生面や効率性**に限界がある。この「食の楽園」をさらに進化させるには、キッチンの機能強化が不可欠だと感じた。
「よし、今日のクラフトは……**『簡易調理台と流し台』**に決めた!」
これで、食材の下処理から調理、そして後片付けまでの一連の作業が、よりスムーズに、そして衛生的に行えるようになる。まさに、洞窟の「キッチン」の核となる設備だ。素材は、洞窟内に豊富にある、丈夫で加工しやすい石材と、水を通すための特殊な植物の蔓、そして水を受けるための大きな葉や石を使う。
早速、クラフトに取り掛かる。洞窟の奥、石釜のすぐ隣の壁際を選定した。ここなら、調理したものをすぐに石釜に入れられるし、水源からも近い。まず、石の出刃包丁を使い、採集してきた平らな石材を丁寧に加工していく。調理台の天板にするための大きな平石と、流し台のシンク部分になる窪みのある石を選び出す。水を通すための蔓は、丈夫で水漏れしにくいものを選別する。トントン、ガリガリ、シュルシュル、という心地よい音が洞窟内に響き渡る。
脳内で「クラフト:**簡易調理台と流し台**」の文字が浮かび上がり、ユウキの魔力が素材に流れ込んでいく。石材が正確に切り出され、調理台の高さと安定性が確保される。流し台のシンク部分も、水が溜まりやすいように、そして排水しやすいように計算された形へと変化する。蔓は、魔力によって水を通す性質が強化され、丈夫なパイプのように組み合わさっていく。やがて、光が収まると、洞窟の壁際に、ユウキの腰ほどの高さを持つ、しっかりとした**石製の簡易調理台**と、その隣に**石製の流し台**が形を成した。流し台には水源から水を引くための蔓のパイプが接続され、使い終わった水は洞窟の外へ排出される仕組みになっている。
「よし、これで本格的なキッチンができたぞ!」
ユウキは満足げに調理台と流し台を眺めた。これで、この洞窟は、単なる避難場所ではなく、機能的な「家」としての機能をさらに高めた。
早速、今日の食事の準備に取り掛かる。森で採集してきた新鮮なキノコや野草、そして簡易貯蔵庫から取り出した燻製肉を、新しくできた調理台の上に広げる。石の出刃包丁で手際よく下処理を施し、流し台で綺麗に洗う。これまでは地面に座って行っていた作業が、立ったまま、衛生的かつスムーズに行えるようになった。
その様子を、ルークがユウキの足元にチョコンと座り込み、キラキラした青い目で調理の様子を見つめている。ユウキがテキパキと作業する姿を見て、どこか誇らしげな表情を浮かべているようだ。
「どうだ、ルーク? これで、もっと美味いもんが作れるようになるぞ!」
そう声をかけると、ルークは「ワフッ!」と小さく鳴いて、ユウキの足に頭をすり寄せてきた。まるで「うん、楽しみだね!」と言っているかのようだ。
石釜でキノコと野草、燻製肉をローストし、万能調味料の塩と醤油で味を調える。出来上がった料理は、木の皿に盛り付けられ、洞窟の食卓を彩る。
ルークも、いつも以上に美味しそうに料理を平らげ、満足げにユウキの足元で丸くなった。調理スペースが整ったことで、ユウキの料理への意欲はさらに高まった。
簡易調理台と流し台の完成は、ユウキの異世界生活に大きな変化をもたらした。食料の確保、調理、保存の基盤が整い、さらに調理の効率と衛生面が格段に向上したことで、この「嘆きの森」での生活は、ますます充実したものとなった。この洞窟は、まさに「食の楽園」へと変わりつつあった。
一日の終わりに、石釜から放出される穏やかな熱を感じながら、ルークの頭を撫でる。次は何をクラフトしようかと考える。生活の基盤はほぼ整ったが、**料理のバリエーションをさらに広げ、あるいは食の新たな楽しみを見出すためのアイテム**が欲しいという欲求が芽生えていた。特に、前世で嗜んだ、あの「一杯」の記憶が脳裏をよぎる。
「よし、明日は、この洞窟での食卓をさらに豊かなものにするためのあれを作るぞ!」
次なるクラフトに期待を膨らませ、ユウキは静かに目を閉じた。
---
### 連載スケジュールについて
**本日(7月26日)と明日(7月27日)で、初回として各日10話ずつ、一挙に公開いたします!**
その後は、**平日(月~金)は朝と晩に1話ずつ**、そして**週末(土~日)は朝・昼・晩に1話ずつ**公開していく予定です。
読者の皆さんのニーズや反響があれば、公開ペースを増やすことも検討してまいりますので、応援よろしくお願いします!
おっさん・ユウキとルークの異世界開拓記、ぜひお楽しみください!
---