表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
贩罪(罪売り)  作者: aiueo
4/5

第3章 事件発生後

午前1時近く、全身を冷や汗でびっしょりの池田は家へ駆け戻った。道中ずっと放心状態だったが、見慣れた自宅の玄関を目にした瞬間、ようやく少し落ち着きを取り戻した。

家の中には明かりが灯っている。父親が酒に酔って帰宅したようだ。

息を殺して中に入り、試すように「ただいま」と声をかけた。

返事はなく、聞こえるのは自分自身の荒い息遣いだけだった。

明かりの漏れる部屋へ近づき、ドアを半分開けて中を覗くと、その光景に安堵のため息が零れた。父親は炬燵の中でぐったりと眠り込み、周りには空の酒瓶が転がっている。

「夜中に帰ってきて息子の不在にも気づかず、平然と寝てやがる」池田は父親の部屋の明かりを消し、そっと扉を閉めながら呟いた。

シャワーを浴びて自室に戻ったのもの、ベッドに横たわっても眠気は訪れない。瞼を閉じれば、縄にぶら下がった遺体と、松尾の無残なが顔度幾も脳裏をよぎる。

外が薄明るくなるまで、池田は充血した目で天井を見つめ続けていた。一晩中考え続けたが、何も理解できず、頭痛と疲労感だけが残った。

松尾はなぜ自殺した? それも教員室で首を吊るなんて意味があるのか? あの奇妙な書店の正体は? 店主は何者で、なぜ深夜の侵入を命じた? 松尾の死と関係が?

寝返りを打ちながら時計を見ると、登校時間だ。疲れていても休むわけにはいかない。まさに遺体発見当日に欠席すれば、疑いをかけられる。

この日はバスに乗ったため、天一文庫の前を通らずに済んだ。仮に歩いても、あの店主が早朝から開店するはずがない。十時前には布団から出ない怠け者だ。通り過ぎても無駄だろう。

学校の状況は予想通りだった。夜勤警備員が四時頃遺体を発見し、救急車も呼ばず即座に警察へ通報。松尾の様子から「救助不能」が明らかだったのだろう。

朝焼けが広がる頃には、警察は既に校舎の3階全体を封鎖し、捜査活動が始まった。証拠収集はゆっくりと進行し、多くの教師や生徒が事情聴取を受けた。池田は特に訊ねられることはなかった。彼の控えめな外見や寡黙な印象が原因かもしれない。

一日の大半、生徒たちはささやき交ぜながら授業中も松尾の死について議論していた。一方で教師たちも講義に集中できず、教室の秩序については放任主義的态度を見せていた。

「ああ……松尾さんか、あの人は本当に最悪の人間だった! 刻薄で卑猥な中年男で、40代を超えても未婚だったよね。女性教師に対して不用意な接触があり、女子生徒を悩ませたこともあると听说。しかもこの男は手がかりを残さず、理事会とのつながりもあり、保護者にも媚び谀う手腕があった。そのため校長先生は解雇できず、我々は毎日その得意洋洋とした態度を見るはめになった。こんな奴が自杀してくれたなんて、世界にとってもいいことだ。まあ、警官、そんな目で见ないでくれ。私はただ皆が言いたいけど言えない真実を言ったまでだよ」

この言论は黒沢老師によって出された。更年期をすぎており、ほぼ退休年龄の国文科の先生だ。口が軽くて熱血漢のオバサンである。這樣的性格では昇進は難しいだろうが、同僚や生徒からは嫌われることは少ないだろう、松尾以外に…

松尾をぬるっとした汚水に例えるなら、黒沢は沸騰した熱油だ。打算的な松尾は相手によって巧みに卑屈さと傲慢さを使い分ける。だが黒沢ばおさん相手となれば、ひたすら避けて通るしかない。道理は単純だ——卑劣な者を普通の人と比べれば、ただの厄介者に過ぎない。だが極めて正直な人間と並べれば、その存在は塵芥同然になるのだ。

警察が収集した証言は当然精査されるが、松尾の性格に対する周囲の評価はほぼ一致している。要するに「死んで当然」という空気が蔓延していた。

だが故に謎は深まる。

「そんな男が自殺? それに一人暮らしなのに、わざわざ真夜中に学校に忍び込んで命を絶つ? 自宅で首を吊れば済む話では」

正午近く、学校は半日休校を発表した。生徒たちは昼食後帰宅できる。

池田にとっては朗報だった。書店へ急ぎ、多くの疑問を解きたかった。だが食堂で平然と食事を済ませ、人混みに紛れるように校門を出た。

池田は自分自身に言い聞かせた。とにかく慎重である必要がある。誰も彼に注目していないという事実は、彼がなおさら注意深く行動する理由となった。

彼は家路を急い、約だ1時間がかりで無事に帰宅できた。途中、天一の書店を通ったが、一度たりとも店内を盗み見ること都没有。

「ただいま帰りました」と池田が言った後、ドアを閉、めい脱だ靴を玄関に並べた。

彼は居間に入り、父がタバをコ咥、え炬燵の中でテレビを見ているのを見つけた。父は池田が部屋に入ってきた音を聞きつけて、振り向かずに言った。「こんなに早く帰ってきたのは、授業をサボったのか?」

池田も炬燵に座り、鞄から宿題を取り出した。「松尾先生が昨夜学校で自殺した、それで今日は午後休校になりました」と告げた。

父は眉を寄せた。「ああ……あの男か。君の担任だよね、俺は覚えている。一度去年家庭訪問してきた。あの人は不快なで目ここに入ってきたし、話すときも鼻持ちならない態度だった。さて、どうやって死んだんだろう?校舎の屋上で飛び降りたのか、それとも首吊りか?」

池田は茫然とした表情で、厚いメガネを押し上げた。「首吊りだとか。听说他是晚上潜入学校,在自己的办公室里做的,具体情况我也不太清楚。」

「ああ、そうだ」池田の父はテーブル上のリモコンを手に取り、動き始めた瞬间に突然屁を放ち、口からアルコール臭漂ったが。しかし、池田は特に気にしていなかった。畢竟、普段からよく飲む父の習慣に対する适应があった。

「この件がニュースになるかもしれませんぞ」父はチャンネルを切り替えて、ニュースを流しているチャンネルに合わせて止めた。

「新年が目前に迫り、今年の北海道の治安状況は年末でもなお下降トレンドが続き、府内の他の地域と比較して再び最下位となっています。ただの住宅侵入だけでなく、暴力犯罪も増加しており、警察発表者はこれらのデータについて一切コメントせず、今日の本局の記者と私たちが招いた専門家たちと共に…

ニュースはいつも暗いトーンで進行し、落胆させる情報を報告し、その後無力な助言を述べる専門家を集めている。

「もしあなたたちの学校の事がニュースになったら、あなたもテレビに出るかもしれんな」父は言った说完后、テレビの音量を上げた。

池田は無関心に答えた。「午前中に記者なんか来た覚えはない」

時間は早く過ぎ、池田はそこで二時間も宿題をしていた。父親は数杯飲んだ後、退屈なニュースを見ながらまた眠りに落ちた。

荷物を片付け、テレビを消すと、池田は自分の部屋に戻り、枕の下から一本のペンを取り出した。それは昨夜、松尾の事務机から持ってきた普通のボールペンだった。

このペンは池田に、昨夜の出来事が夢でも幻覚でも想像でもなく、紛れもない事実だったことを思い起こさせた。

12月11日、午後4時。

ると、昨日とほぼ同じ光景が広がっていた。

しかしこの日、天一は池田を無視しなかった。本とコ池田は再び天一の書店を訪れ、ドアを開けて中に入ると、昨日とほぼ同じ光景が広がっていた。

しかしこの日、天一は池田を無視しなかった。本とコーヒーカップを置くと先に口を開いた。「こっち来い。適当に座れ」

池田が天一のデスク前に近づくと、椅子らしき物がないことに気付いた。唯一のソファチェアは店主が占拠していた。「立っている方がいいです」

天一は引き出しを開け、黒ーヒーカップを置くと先に口を開いた。「こっち来い。適当に座れ」

池田が天一のデスク前に近づくと、椅子らしき物がないことに気付いた。唯一のソファチェアは店主が占拠していた。「立っている方がいいです」

天一は引き出しを開け、黒い表紙の本を机に置いた。「三浦和哉の秘密は全てここに書かれている」手を本の上に置いたまま問う。「持ってきたものは?」

池田は反問した。「私の本も持っているなら、要件を果たしたことは知っているはずだ。確認する必要ある?」松尾のペンを机に置いた。

天一は欠伸をしながら嘲った。「私が知っていることは君の想像を超える。だからまだ三浦の本は渡せん」

「約束を破るつもりか?!」池田の声が震えた。怒りが爆発寸前だった。

天一は冷ややかに遮った。「君がこの本を読みたいのは、三浦への復讐のためだ。二年間の虐めへの恨み晴らし…いや、人生全ての鬱憤をぶつけるためか。構わんが、今はもっと急ぐべきことがある」急に話を転じた。「今朝、君の学校で優秀な刑事が動いている。松尾の『自殺』現場に5時到着し、即座に他殺と看破した」

池田は青ざめ、思わず後ずさった。「何を言ってるんだ…」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ