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玻璃一族シリーズ

中学生探偵の恋人探し

作者: 川里隼生

 今回の玻璃はり元太げんたの依頼主は、同じ一年二組の木戸きど千治せんじである。話を聞くと、友人である神田かんだ夢有むうの好きな人を特定してほしいとのことだった。実に中学生らしい、どうでもいい依頼である。


 ここ一ヶ月の間に木戸が神田から引き出したヒントが三つある。一年二組には在籍していないこと。木戸と神田が直接会ったことのある女性であるということ。そして、例えるならガラスのような人だということ。以上のヒントから木戸は候補者を二人にまで絞り込んだ。


 最有力なのは一年三組の益岡ますおか聖藍せいらん。彼女が日頃から見せている冷徹さは、確かにガラスと形容できるかもしれないと元太は肯定した。対抗は二年一組で生徒会副会長の防崎ぼうざき風来ふうら。『風』と『防ぐ』という名前から窓ガラスを連想させると木戸は言うが、それならどちらかというと壁では、と元太は反論した。


「じゃあ、益岡?」

 元太はしばし黙考して、ニヤリと笑みを浮かべた。

「容疑者ならもう一人いるぜ」

「え? 誰だよ?」

「俺の姉ちゃんさ」

 玻璃はり歩美あゆみは、元太より七歳年上の姉である。体育祭や文化祭で学校を訪れているので、条件の二つには合致する。


「でもお前の姉ちゃんってガラスっぽくはなくね?」

「……確かに繊細じゃねえな。なら、やっぱ消去法で益岡か」

 チャイムが鳴った。本来なら、鳴る前に着席しておかなければならない。しかし、チャイムとは生徒に時間を知らせるためのものであって、自分で時計を確認しなければならないのであればチャイムの存在意義は消滅する、と元太は考えている。木戸との推理は中断され、この会話があったことも忘れたまま元太は下校した。


 帰宅後にこのことを思い出した元太は、気まぐれに姉に神田を覚えているか電話で尋ねてみた。歩美は現在、大阪の大学に通うため一人暮らしをしている。

「お前の友達で、陸上部の子だろう? 体育祭と文化祭で会ったよ」

「そうそう。……話変わるけど、姉ちゃんとガラスって関係ある?」

「ガラス? 何の話かわからないけど、関係ならあるよ。お前にも、先祖代々」


 それは元太にとって意外な情報だった。

「『玻璃』ってガラスのことだから。昔はガラスに関係する家系だったのかもね。実は神田くんさ、よく高校まで来てたんだ。勉強の質問だったんだけど、もしかしたら僕のこと好きだったのかも、なんてね」

 歩美はほんの二、三年前のことを数十年前のことのように懐古していた。


「あ、神田くんのこと誰かに言っちゃだめだよ。口止めされてるから」

「は? いまさら?」

「秘密にしてくれって言われてたんだった。忘れてた。まあ、約束してから二年くらい経つし、仕方ないか」

 電話口の向こうは、そう笑い飛ばした。こんないい加減な姉に約束を破られたのかと思うと、元太は神田が不憫に思えてならなかった。神田よ、こいつはよした方が良いぞ。元太のアドバイスは誰にも届くことはなかった。

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