死を待つ人形
丘の上に家がありました。
そこにははかなげな女性が一人で住んでいます。
棚の上に写真がおいてあります。
彼女の隣に写っているのは旦那さんでしょうか?
とても幸せそうな2人の写真。
朝、彼女は起きてこう思うのです。
「また、目が覚めてしまった」
彼女は死を待っているようです。
---
大学の時に知り合ってなんとなく付き合い出して
2とも就職してすこし落ち着いてから結婚したそうです
相手のことを大切に思っていました
彼は研究機関に就職して仕事のことは機密事項が多くて彼女は何も知りませんでした
彼は朝から夜遅くまで仕事をしていました。
それでも休日は2人でゆっくり過ごす
そんな生活が気に入っていました。
ある日のことです
彼女が体調を崩しました
病院で診てもらって薬をもらいましたが
1週間経ってもよくなりません
他の病院で診てもらったら重い病気が見つかりました
余命は2年と告げられました
たぶん、1年は普通に過ごせるだろうけれど、残りの1年はベッドの上になるそうです
彼女は可能な限り彼と楽しく過ごしたい、そう考えました
彼も同じように考えました
平日は夕方に帰ってきて一緒に食事をします
休日は一緒に公園を散歩したり図書館や映画、海を見に行ったり特別なことはせずに
2人の時間を大切にしました
半年くらい経ったある日のことです
彼女が夕飯の買い物に出かけて事故にあいました。
病院に運ばれました
彼が連絡を受けて病院についた時には心肺停止の状態で機械につながれていました
彼は彼女を機会につないだまま研究所に連れて行きました。
---
それから半年くらい経ったでしょうか
彼女は目を覚まします
彼は「おかえり」と言って涙を流しました
彼女は笑顔で「ただいま」と
それから一周間くらい経ったころに彼は倒れてしましました
半年間、彼は必死になって彼女のために機械の体を造っていたそうです
彼に残された時間は半年だそうです
彼は「こんなはずじゃなかった」と、そういいました
彼女は微笑んで「あなたららしい」と・・・ただ泣きたいのに涙は流れません
そして2人は彼の残された時間を一緒に過ごしました
---
そろそろ彼女に最初に告げられた2年が過ぎようとしています。
彼がつなぎとめた今の自分は何なのでしょう?そう思ったようです
彼がいってしまった日に一緒にいこうと考えました
でも、彼の為に生きることを選びました
彼の研究結果として
彼の歪んだ愛が今も彼女を生かしています
そして彼女は自分が果てるのを待っています