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仮面ポーカーフェイス

作者: 嘆き雀
掲載日:2022/12/13

 我は宇宙人である。ただ一匹で、地球の征服を成し遂げた。

 これら地球人をどうしてくれようか。ぷかぷか宙に浮かびながら見るに、地球人は家族から友人、見知らぬ相手にまで素顔を曝している。


 これでは秘所――――表情が丸見えではないか!

 なんという破廉恥な文化。なんとけしからん。


 そこで我は全地球人の顔に、真っ白な仮面を被らせた。

 これで破廉恥な文化はしまいだ。その健全さにうんうんと満足していると、地球人が変な動きをしていることに気付く。


 な、なんだあれは!

 仮面に…………絵を描いている!?


 あんぐりと口を大きく開けて、呆気に取られる。仮面に目や鼻や口や眉毛といった顔の絵を描いてしまっている。


 恐れや怒りを制御できず、声を震わせながら宣言する。


「全地球人に告ぐ。仮面に、絵を描いてはならぬ」

「ええ〜。真っ白なままなんてダサいっしょ」

「うちがとびっきりかわいい顔を描いてあげる」

「顔は表情ッ! 表情は秘所だ! お前ら秘所を曝しているのだぞ、秘所をッ!」

「秘書?」

「それは社長についてる人っしょ。秘所は、秘密にしているところだって」

「じゃあそれ、宇宙人ちゃんの方が秘所を曝してるじゃん」

「秘所秘所って、世界放送で何度も言ってて恥ずかし〜」


 我の方が恥ずかしい? 表情という秘所を、描いている奴よりも?

 …………宇宙人ちゃん?


 我は気絶する。目が覚めたときには、地球人が我を囲んでいた。


「宇宙人ちゃん、かわいい〜」

「な、な、な、なああああああ!?」


 わざわざ鏡を用意して地球人は我の姿を見せてくる。我の仮面に笑った表情が描かれている。


「宇宙人ちゃん、真面目なこと言うに、表情が見えるって大切なんだよ。相手に自分の気持ちを分かりやすく伝えられるんだから」


 地球人の言葉に、納得する我がいる。我は先入観により、地球人の文化を頭ごなしに否定していたかもしれない。

 我の仮面を再度見る。ふむ。良さが分かってきたかもしれない。ただ仮面を外して表情を晒すことまでは恥じらいがあるな。













 我は宇宙人である。同胞が地球人を侵略したと聞きつけ、やってきた。


「なんだ、あれは!」


 地球人は仮面に表情を描いていた。

 なんという破廉恥な文化。なんとけしからん。


 そこで我は新しい真っ白な仮面を被らせる。その健全さにうんうんと満足する。




 その背後で、同胞が眉を下げた表情が描かれた仮面を被っており、地球人の味方となって逆襲を企んでいる。我はついぞ、その瞬間まで気づくことはなかった。


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