仮面ポーカーフェイス
我は宇宙人である。ただ一匹で、地球の征服を成し遂げた。
これら地球人をどうしてくれようか。ぷかぷか宙に浮かびながら見るに、地球人は家族から友人、見知らぬ相手にまで素顔を曝している。
これでは秘所――――表情が丸見えではないか!
なんという破廉恥な文化。なんとけしからん。
そこで我は全地球人の顔に、真っ白な仮面を被らせた。
これで破廉恥な文化はしまいだ。その健全さにうんうんと満足していると、地球人が変な動きをしていることに気付く。
な、なんだあれは!
仮面に…………絵を描いている!?
あんぐりと口を大きく開けて、呆気に取られる。仮面に目や鼻や口や眉毛といった顔の絵を描いてしまっている。
恐れや怒りを制御できず、声を震わせながら宣言する。
「全地球人に告ぐ。仮面に、絵を描いてはならぬ」
「ええ〜。真っ白なままなんてダサいっしょ」
「うちがとびっきりかわいい顔を描いてあげる」
「顔は表情ッ! 表情は秘所だ! お前ら秘所を曝しているのだぞ、秘所をッ!」
「秘書?」
「それは社長についてる人っしょ。秘所は、秘密にしているところだって」
「じゃあそれ、宇宙人ちゃんの方が秘所を曝してるじゃん」
「秘所秘所って、世界放送で何度も言ってて恥ずかし〜」
我の方が恥ずかしい? 表情という秘所を、描いている奴よりも?
…………宇宙人ちゃん?
我は気絶する。目が覚めたときには、地球人が我を囲んでいた。
「宇宙人ちゃん、かわいい〜」
「な、な、な、なああああああ!?」
わざわざ鏡を用意して地球人は我の姿を見せてくる。我の仮面に笑った表情が描かれている。
「宇宙人ちゃん、真面目なこと言うに、表情が見えるって大切なんだよ。相手に自分の気持ちを分かりやすく伝えられるんだから」
地球人の言葉に、納得する我がいる。我は先入観により、地球人の文化を頭ごなしに否定していたかもしれない。
我の仮面を再度見る。ふむ。良さが分かってきたかもしれない。ただ仮面を外して表情を晒すことまでは恥じらいがあるな。
我は宇宙人である。同胞が地球人を侵略したと聞きつけ、やってきた。
「なんだ、あれは!」
地球人は仮面に表情を描いていた。
なんという破廉恥な文化。なんとけしからん。
そこで我は新しい真っ白な仮面を被らせる。その健全さにうんうんと満足する。
その背後で、同胞が眉を下げた表情が描かれた仮面を被っており、地球人の味方となって逆襲を企んでいる。我はついぞ、その瞬間まで気づくことはなかった。




