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初陣2

「と、いうわけでだにゃ。あのひったくり犯の言ってた『あの方』の存在だけど、特定できたにゃ」


「随分仕事がはやいな。俺がそいつのこと追っかけてたのって昨日のことだぞ……」


あまりにも仕事のはやいみゃ〜こに、救は驚く。救としては、ひったくり犯の物言いから、何かとんでもない大物がバックについているんじゃないかと思っていた。そのため、そんな大物が何か情報操作をしてきてもおかしくはないと踏んでいたのだが、救のそれは杞憂に終わったらしい。


「名前は有村 毘瑠御(ありむら びるみ)。マフィアのボスだにゃ。はい、これ顔写真」


そう言ってみゃ〜こが取り出したのは、左目のあたりに傷の入った、如何にも悪そうな面をしている屈強な男の写真だ。正直、救はびびった。


「でも、この組織って、能力者以外は捕まえないんじゃなかったのか?」


「救君、いい質問にゃね。もちろん、あたしらの組織は能力者以外の犯罪者に手を加えることは許されてないにゃ。警察と協力しているとは言っても、全ての警察と協力しているわけではないし、密約をかわしているみたいなものっていうのもあるにゃ。だから、基本的には能力犯罪のみを対象として動くわけにゃ」


そう、本来であれば、能力者ではない犯罪者について、『United Soul Worker』は一切の介入を禁じられている。

つまり、組織が追っているということは、その対象は能力者であるということになる。だが……。


「その有村って奴が能力者かどうかなんて、分からないんじゃないのか?」


「うん。わからないにゃ」


有村は、能力者であるかどうかが定かな人間ではない。ましてや、相手はマフィアのボスだ。調べるとなれば、それ相応の覚悟が必要になってくるはず。それを、必要に駆られていないにも関わらず、みゃ〜こは有村について調べていた。それだけみゃ〜こに危機感がなかったのか、はたまた、よっぽど何か引っ掛かるものがあったのか。


「何で能力者かどうかもわからない奴のこと調べてるんだ?」


「ふっふっふ……。甘いにゃ、救君。あたしには確信があるんだにゃ。有村が能力者であるという、確信がにゃ」


みゃ〜こは自信満々に指を立て、胸を張りながら言う。

確信があるというほどなのだから、よっぽど自信があるのだろう。


「まず、先日救君がとっ捕まえたひったくり犯にゃけど、あいつは有村のことを『あの方』と呼び、慕っていたにゃ」


救が特に聞いていないにも関わらず、みゃ〜こは話を続ける。やっぱり、確信めいた謎の自信というものが、彼女にはあるのだろう。でなければ、求められてもいないのに、自分の意見をペラペラと述べていこうとは思わないはずだ。


「ここで救君に質問にゃ。力を手にした人間が、他の誰かを慕うのって、おかしいと思わないかにゃ?」


自信満々に、救の方を指差しながら、高らかに宣言するように問いを投げかけるみゃ〜こ。

しかし、救としては、そんなに自信満々に宣言するほどのものなのか、疑問でしかなかった。


「別に、元々有村のこと慕ってたなら、能力者になったとしても有村について行きはするだろうし、最初から能力を持っていたとしても、有村にカリスマ性があれば、自然と人はついていくんじゃないか?」


「まぁ、そういう考え方もできるにゃ。けれど、あたしはそうは思わないんだにゃ」


救の発言に、みゃ〜こは理解しつつも、その考えを否定する。


「あのひったくり犯、有村の率いる集団に入ってから、そんなに日が経っていなかったんだにゃ。そんな男が、念動力という強力な力を持ちながら、有村に従うことがあるかにゃ? あたしはないと思った。それに、本当に有村のことを慕っているのなら、あんなに目立つ行動はしないはずにゃ。自分が目立てば、自然と自分が所属している集団も目立ってしまうからにゃね」


確かに、みゃ〜この言う話には、一応、有村が能力者なんじゃないかと疑える余地はあるような気もする、が。


「それだけの理由で、わざわざ調べたのか…? 下手したら沈められるぞ」


相手はマフィア。何をされるか分かったもんじゃない。それなのに、みゃ〜こは臆せずに調べていた。どんだけ神経が図太いんだと、救はそう思わずにはいられない。


「ま、別に能力者が大量にいるなら、組織もあたしらは放置って方針で動くことになると思うにゃ」


みゃ〜こはそんな風に言うが、能力者による犯罪行為などを止めるために存在する組織が、相手が集団になった途端に日和ってしまうのはどうなのだろうかと救は思う。『United Soul Worker』は能力者もそれなりに抱えている組織なのだから、対抗できないことはないはずだ。


「能力者が固まって悪さしてたりとか、そういう奴らこそ、組織が動くべきなんじゃないのか?」


だから、救は素直に疑問をこぼす。当然、能力者による集団犯罪を許しておくわけにはいかないという思いはある。だが、1番は、能力者のイメージを悪くしたくはない。という思いだ。


救には、妹がいる。

須狩神子(まかりみこ)。彼女は、断片的ではあるものの、未来予知ができる。そう、つまり能力者だ。

もし、能力者の存在が世間で知られる事態に陥った時、能力者による集団犯罪が行われているとしよう。そうなると、自然と能力者=悪であるというイメージが一般人には根付くことだろう。


そうなると、自然と神子にも被害が及ぶ可能性はある。

隠せばいいという話かもしれないが、能力者検知機みたいなものが発明されて、能力者であるということが隠せなくなる可能性だって否定はできない。


だからこそ、救はできるだけ、能力者のイメージを悪くしたくはないと考えているのだ。


「そりゃそうなんだけどにゃ〜。能力者が集まりすぎると、ちょっとした()()が起きるんにゃよね〜」


「問題? あーっと。敵にも味方にも能力者が多すぎると、能力者同士の乱戦状態になって大惨事になっちゃうとか?」


「んー。大惨事になるって部分は正解にゃ。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()。敵だろうが味方だろうが関係なく、能力者が集まればそれだけで大惨事になる可能性が高いんだにゃ」


「具体的に何が起こるんだ?」


「あたしもこの組織に入ったのは最近だから、詳しくは知らないにゃ。ただ、能力者を多く抱えているなら、放っておけばその集団は自滅の道を歩むしかないってことだけ言っておくにゃ」


「よく分からないが、そのために班分けとかしてるんだな」


救は『United Soul Worker』に入った際、この組織のルールについていくつか学んだのだが、その一つに、固まる際は最大でも4人のグループで。というルールがあった。それに伴い、戦闘向けの能力者はそれぞれA〜Fの6つの4人グループが定められていたのだが、その理由はおそらく能力者で固まりすぎるとよくないから、だろう。具体的に何が良くないのかは、救には分からないが。


ちなみに、救やみゃ〜こは現状どの班にも入っていない。そもそも戦闘ができるかどうかという部分が組織側からすれば未知数であるし、まあいうなればお試し期間中というやつなのだ。


一応、みゃ〜こは現状3人しかいないE班に、救は今2人しかいないF班にそれぞれ配属される予定ではあるが、どうなるかはわからない。


2人が能力者と相対できるかどうか、組織は今まさに、探っている最中なのだ。


「とりあえず、有村の情報とかは渡しておくから、自己判断でよろしくにゃ。もしクロだって分かったら、その時はあたしも行くからにゃ」


みゃ〜こはそう言って手をひらひらさせながら救と別れる。


「能力者、かぁ……未だに実感湧かないなぁ……」


未来予知持ちの妹がいるとはいえ、基本的に救の周りは普通だ。

そんな救に突然現れる、異常。


ただの高校生である救は、今まさに、人生の岐路に立たされていた。

ちょっとずつ書いていくのじゃ

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