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初陣1

4ヶ月ぶりの更新……?


いいえ、エタっていません()


「待て!」


「クソっ! いいじゃねぇかちょっとくらいよぉ!」


救は現在、ひったくり犯を追っかけていた。

先日『United Soul Worker』なる組織に所属してから、救は能力を使った犯罪を防ぐためにあちこち走り回ることになった。


彼女の紫村霊奈とはデートに行けないし、親友の田中秋邦とも遊ぶ回数が減ってきている。また幼馴染の朝比奈太陽からは、霊奈とのデートが皆無なことに対して小言を言われる始末だ。

元々霊奈と救自体愛し合っているわけでもなく、太陽にお試しといって付き合わされているだけなのだが、それでも彼女のことを放っておくのはいかがなものか、といった具合だ。


話が逸れたが、現在救はひったくり犯を負っている途中である。

組織としては“ソウル”ーーーすなわち能力による犯罪を防ぐためにあるのであって、ただのひったくり犯をわざわざ追跡する必要はない。

もちろんやってはいけないわけではないが、組織はあくまで能力による犯罪を防ぐためにあるので、その場合は組織の力を借りることができない。


「クソっ! くらえ!」


そういってひったくり犯の男はゴミ箱を持ち上げて投げつけてくる。

しかし、ゴミ箱は男の手に触れていない。

なぜ持ち上げれたのか。


そう、能力によるものだ。

詳細は不明だが、ひったくり犯は能力を使っている。

見た感じは念動力か何かだろうか、ともかく能力を使用している。

つまり、組織の出番だ。

救が先日から所属した『United Soul Worker』は“ソウル”による能力犯罪を防ぐためのものだ。

ゆえに、救も組織に属する以上、能力犯罪を見かければ対処するしかないのだ。


ただ、救自体組織に属して日も浅いので、そこまで積極的に能力者を捕縛する必要はない。組織自体が完全にホワイトだと言い切れないせいか、警察との連携も完全なものではない。

そのため、しばらくは動かなくても良かったのだが、組織に入った以上どちらにせよやらなくてはいけないことだと、そう考えて救は今動いている。


「よし、捕まえた」


そういって救はひったくり犯を捕まえる。


だがーーー


「どけっ!」


ひったくり犯は念動力のようなものを使って救に向けて周辺に落ちているものをぶつけようとする。


しかし、横からやってきた人影にそれは阻止される。


「救くんはもっと警戒したほうがいいにゃよ」


みゃ〜こだ。一緒に行動していたわけではないのだが、騒ぎを聞きつけてやってきたのだろうか。


「随分と目立ってるにゃね〜。相沢の仕事が増えるだけだから、私はいいんだけどにゃ〜。まあ正義感が強いのはいいことにゃ」


「ごめん、みゃ〜こ。助かった、ありがとう」


謝罪と礼を言いながら、救は再び男を拘束する。

男の能力の発動条件がわからない以上、警戒するに越したことはないが、男が念動力を使ってくる様子はどうにもなさそうだ。

とりあえず、男が歩行者からひったくった財布を取り上げる。


「へへっ、俺を捕まえたところで無駄だ」


「……どういう意味だ?」


「ふ、そのうちわかるさ……あの方に会えば……な……お前らはもう終わりだ。俺を捕まえたところで意味はない…」


「小物悪党のいうセリフにゃ」


男は不穏なことを言っていたが、みゃ〜こは男の言葉を小物悪党のセリフだと言って一蹴し、男に手刀を入れて気絶させた。


「起きている以上、能力を使われる可能性は残ってるにゃ。確実に拘束するためには気絶させるのが一番手っ取り早いんだにゃ」


「色々ありがとう」


「どういたしましてにゃ。まあ世話係だからにゃ〜」


みゃ〜こは救の世話係を勝手に名乗っている。ただ救もそれを素直に受け入れた。組織に属してすぐに1人で事件を解決だなんてできるはずがない。そのため、当分はみゃ〜こと一緒に事件を解決していくことになったのだ。自分より年下の子に面倒を見てもらうことになるため、救としては少し複雑だが、社会に出ても自分より年下の者が目上になることはあるので、そこは気にしなくてもいいだろう。


「とりあえず、あたしはこの男を組織の方に連行するけど、救くんはどうするにゃ?」


「……1人で運ぶって…重くないか? 俺が手伝ったほうがいいと思うけど」


「あーその心配はしなくていいにゃ。あたし1人でも運べるんだにゃ。ほら」


そういってみゃ〜こは男を担ぐ。

16歳の少女(見た目14歳)が成人した男を担ぐというのはなんともシュールな光景である。

とにかく、能力によるものなのか、みゃ〜こが男を担ぐのが苦ではないということはわかった。


「みゃ〜こが1人で運べるなら、俺は帰るよ。妹が家で待ってるから」


「そうかにゃ。じゃああたしもそろそろ行くにゃ」


そう言ってみゃ〜こは男を担いで帰っていった。

女の子を1人で、しかも男を担がせた状態で帰らせるのはどうかという話ではあるが、救としても能力が存在する世界に足を踏み入れたせいか、感覚が麻痺しているのだ。みゃ〜こなら大丈夫だろう、とそんな安易な考えで送り出してしまった。

結果的にみゃ〜こは何の問題もなく組織に着いたため、本当に大丈夫だったのだが。


「おい」


救が帰ろうとした時、後ろから急に声をかけられた。

振り返ると、金髪のミディアムヘアに少しつり目の赤い目を持った少女がいた。

服装は下はダメージジーンズ、上は胸の辺りに『Destroy』と書かれたTシャツを着ている。

どこかで見たような気がするが……


「お前、今何してた?」


よく見るとひったくり犯に財布を取られた人だ。

財布を取り返しにきたのだろう。

それにしてもひったくり犯もよく彼女から財布を取ろうと思ったものだ。

気が強そうだし、いかにも目立っていた。

狙うならもう少し気の弱い人を狙ったほうがよかったんじゃないだろうか。

能力者だから警戒心が薄かっただけなのかもしれないが。


「ひったくり犯を追っかけてた。それで、そのひったくり犯が盗んだ財布を取り返したんだ。返しておくよ」


「ああ、ありがとう。それはいいんだけどさ……」


持ち主に財布を返すが、対する彼女の反応は微妙なものだった。

他のことに気を取られているのだろうか?


しかし、ひったくり犯を追っかけていたせいでかなり時間を食ってしまった。妹が家で待っているし、救は、急いで家に帰ろうと、その場から駆けていった。


「あいつ……………いや、まさかな………」











「兄さん、おかえり」


「ただいま」


救が帰宅すると、妹である神子が出迎えてくれた。

妹である神子は手入れされた、艶やかな黒髪ロングヘアに、真っ黒な目、白い肌が特徴の少女だ。瞳は一見黒く澱んでいるように見えるが、よくよく見るとその奥には一筋の光がとおっているのがわかる。


「………………」


「………………」


ただ、2人はそれ以上会話することがない。

昔からそうだった。神子は多くを語らない。

勉強は容量良くこなすし、運動もできる。非行にも走らない。

まさに完璧と言っていいだろう。何も問題がないように見える。

だが、その口数の少なさだけは問題だった。


いや、口数の少なさというよりも、昔からある特殊な体質だったことの方が問題だったのかもしれない。


救は昔から、妹が無表情でいることが多いことに心配していた。

だから救は神子に沢山のいたずらを仕掛けてきた。だが、それでも妹が笑うことはなかった。


そんな妹だからか、学校では友達らしい友達もいないらしい。

救としてはそのことも気がかりだったが、どうすればいいのか分からなかった。


それはさておき、ひったくり犯を追いかけ回したせいでカラカラになってしまった喉を潤そうと思い、水をコップに注いで飲んでいると、


「兄さん、明日、気をつけた方が良いよ」


突然、淡々と神子は告げる。

別に明日特別な用事があるわけじゃない。

学校に行って帰ってくるだけだ。


「気をつけるって…何を…?」


「私にもわからない。ただ、気をつけて」


普通ならただの勘でものを言っているだけだろうと思って気にしないだろう。ただ、救はそうはしない。神子には特殊な体質があるからだ。

神子は昔から、何かが起きる前の予兆を感じることができる。つまり未来を予知することができるのだ。


予知の精度はその時によるが、軽いものであればあるほど、予知の精度は高くなる。

例えば明日雨が降るだろうだとか、明日は曇りだろうだとか、天気予報で済むような予知は正確にできる。もちろん毎日予知ができるわけではないので、結局は天気予報頼りなのだが。


そして今回は正確な予知がされていない。精度が悪いということだ。精度が悪いということは、何か大規模なことか、もしくは救の身に何か起こる可能性があるということだ。


ただ、救にできるのは、気をつけることだけだ。


「わかった。気をつける」


救はそう一言告げる。お互いに多くは語らない。それでも二人は家族だ。


そこには確かな繋がりがあった。

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