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プロローグ後編

「相沢……元増が………呼んでる」


銀髪の少女が呟く。

彼女が入ってきた時、少し警戒したが敵対する意思はないらしい。

路地裏でローブの男に襲われた時、みゃ〜こが助けてくれたのかと思っていたが冷静に考えてみればあの状況で救を助けられるのは彼女しかいなかった。

敵対する気がないのは当然とも言える。


「分かった。しかし、あの人が直々に呼ぶとは……一体……片桐、少年をたの」


「そこの男の子を連れて来いって……元増が言ってる」


「っ! そうか…………あの人は部外者を基本的に呼ばないはずなんだが……俺の記憶操作が効かないことといい…少年、君には何かあるみたいだな…」


「それは……私も同意。なぜか人避けが効いてなかった…」


元増とは一体誰なのだろうか。相沢の言い方からして、上司や社長的な存在なのだろ

うか。銀髪の少女は呼び捨てだが。

ただ珍獣を見るかのような目で見てくるのはやめて欲しいと救は思う。

本人からすれば記憶操作が効かない理由も人避けとやらが効かなかった理由も分からないのだから。まして、元増という人物に呼ばれる理由などわかるわけもない。

救達は元増のもとへ向かうことにした。



「自己紹介……まだだった……白鷺刃…よろしく」


廊下を歩いていると、銀髪の少女…もとい白鷺刃が挨拶を交わしてきた。


「俺は須狩救です。えっと…よろしく?」


唐突に自己紹介をはじめられたせいか、つい歯切れが悪くなってしまう。


「刃はマイペースだからにゃ〜」


「?自己紹介してなかったからしただけだけど…」


・・・みゃ〜この言う通り少しマイペースな性格をしているのかもしれない。

かれこれ10分ほど歩いているが(大分広い建物らしい)今までずっと無言だった。

沈黙を破りたくて自己紹介したのならわかるが、彼女はそうではなさそうだったからだ。


「俺がいうのもなんだが、いきなり超能力の話を振られた割にはひどく落ち着いているように見える。以前から超能力に触れてきた身か?」


「いえ、別に……」


救には妹がいる。2歳年下の妹だ。妹には昔から不思議な力が備わっており、

ちょっとした未来予知ができたりする。そのせいで妹との仲を掴み損ねたのだが…


(いくら“そっち系”の専門家だからって、神子のことを軽々話すわけにはいかないよな……)


別段仲が良いわけではない。だがたった1人の家族だ。万が一のことがあったら怖い。

だから救は妹のことは黙っておくことにした。


「……? まあいいか。ほら、そこの扉を開ければ元増さんがいらっしゃる。この組織のボス的な存在だから、くれぐれも粗相のないようにな」




扉を開けると、相沢の言った通りいかにもボスといった感じの人物がいた。

髪の毛は丸刈りで、体格もずっしりしていて威圧感がある。

白髭を生やしていて、それがまた威厳を感じさせる。


「用件……あるならはやく言って」


しかし、その威圧感に押されることなく刃は元増と話す。

二人はどういう関係なのだろうか?

少し気になったが、元増の威圧感にが凄まじかったため、軽々しく聞く勇気はなかった。

そんなに緊張しなくていいにゃよとみゃ〜こが言ってくれたが、救は緊張せずにはいられなかった。


「須狩救くん……だったかな?」


元増が訪ねてくる。

はい。と救は答えるが、その声は震えていた。


「そんなに緊張しなくてもいい。美夜子くんにも言われただろう? 」


緊張しなくていいと言われても、難しいものがある。

ただ責められたりする気配はなさそうだ。

救の緊張は少しだけ緩んだ。

しかし、少しだけだ。

仮にも1組織のボスなのだ。緊張しない方がおかしい。


「さて、君に頼みたいことなんだが」


元増が言う。救にも大方予想はついている。

本来なら救のように戦いに巻き込まれ、超能力の存在を認知してしまった場合、相沢あたりが記憶処理を施すのだろう。

しかし、救にはそれが効かない。

ならばどうするか?

答えは簡単だ。

殺すか、組織に取り込むか。

自然とこの二択になるだろう。

そして、組織に取り込むにしても元の学校生活にはもう戻れないのだろう。

仮にも秘密を握ってしまったのだ。

組織としては情報を漏洩させる恐れがある人物を野に放ったりはしないだろう。

そう救は考えていたのだが、





「組織に協力してほしい、もちろん普通の学校生活を送ってもらっても構わない」





予想に反して、元増はこのような提案をしてきた。

隣で相沢が なっ と驚いたような声を出している。


「いいんですか? 俺が学校の連中にこの組織のことを言ってしまうかもしれませんよ? 」


救は言う。さっきまでは緊張で話せなかったが、元増はこちらの意思を尊重してくれていた。あまり気張る必要もないと体が判断してくれたのだろう。先程までの緊張は嘘だったかのように消えていた。


「ハハハ! 構わんよ。その時は相沢くんの仕事が増えるだけだ」


「なっ、そんな勝手な! おい少年、絶対に情報を漏らすなよ!」


相沢が面白いほどに狼狽える。

みゃ〜こは相沢が狼狽える様子を見て大笑いしていた。

さっきはこの二人は仲がいいと思っていたが、もしかしたらそうでもないのかもしれない。


「相沢……もしよかったら……その時は手伝うよ? 暇だったら」


「暇じゃなかったら手伝わないのか……」


刃はやはりマイペースなのだろうか?

しかし仲間を思いやる気持ちはあるのだろう。

条件(?)付きではあるが手伝うつもりではあるようだ。

しかし本当にいいのだろうか。


「ふむ。顔に疑問符が浮かんでいるよ、須狩救くん。こう見えて私は人を見る目があるんだ。もし君がここの情報を漏洩したとしても、その時は私が対処する。相沢くんの手は……多少は……借りるかもしれないが…」


「ただ…その組織に協力って言っても…俺は特にできることないような気がしますけど…」


「残念ながら無理にでも協力してもらおうと思っている。これを見たまえ」


そう言って元増は光の球のようなものを見せてきた。


(手から浮いてる……? 持ってるわけじゃないのか? 一体何なんだ…?)

救の頭の中に大量の疑問が湧き出てくる。

先程から超能力だのなんだのと話をされてきたわけだが、話で聞くのと実際に見るのとでは全く別物だ。百聞は一見にしかず、である。


「これは”疑似魂魄“と言ってね。魂を模して作られた…魂もどきだよ。まあ私は知り合いの研究者に渡されただけだから、これがどういう理屈で成り立っているのかだとか、そんな詳しいことは知らないのだけどもね」


魂もどき……先程相沢は超能力は魂から来ていると言っていた。故にソウルと呼んでいるとも。そのまますぎるとは思ったが、今はそのことは置いておくとして。


「疑似魂魄ってことはもしかして……」


「気付いたかね? そうだ。この疑似魂魄には能力が宿っている」


つまり能力を持っていない人間でも能力を扱えるということだろうか。


「ただ、全ての人間にこの疑似魂魄が扱えるわけではない。私は今合計で5つの疑似魂魄を持っているが、今まではこの疑似魂魄を扱える人間がいなかった」


「今まではいなかった…ってことは今はいるってことかにゃ?」


どうやらみゃ〜こも疑似魂魄については詳しくはないらしい。


「そうだね美夜子くん。厳密に言うと今私が持っている5つは使い手がいなかったというだけだがね。しかし救くん。君が私の部屋にやって来た時に光出したんだよ。私の持っている5つの疑似魂魄のうち…2つがね」


今現在元増が手に持っている疑似魂魄は光っているが……もしかして元々は光っていなかったのだろうか……?

そして救が来た途端に光出したということはつまり…


「その疑似魂魄……俺なら扱えるってことですか…?」


元増は「そうだ」と告げた。


何故疑似魂魄が救に扱えるのか、何故相沢の能力が救に効かなかったのか救には分からない。ただ………救はこれは自分に課された使命なんじゃないかと感じた。

まるで最初からこのために生まれてきたかのような感覚になる。

だからこそ救は二つ返事で協力を受け入れることにした。


「是非。協力させてください」


「良い意気込みだね。とりあえず君には一つだけ疑似魂魄を渡しておこう。残りの一つはそうだね……刃、君に持っていてもらおう」


そう言って元増は刃と救それぞれに疑似魂魄を一つずつ渡した。

しかし救と刃が疑似魂魄を受け取った途端、疑似魂魄は光が霧散して消えてしまった。


「えぇ!?」


救が驚く。しかしすぐさま刃がこう告げた。


「安心して。なくなったわけじゃない……私たちの中にはいっただけ」


言われてみるとなんだか体の中に疑似魂魄が入り込んだかのような感覚がした。


「本当に使いたいと思ったときだけ……使える。その時までは…なにもない」


刃が救に使い方を教えようとしてくれている。

もしかしたら刃も疑似魂魄を扱えるのだろうか?



そう考えていると元増が救に向けてこう告げた。



「では改めて歓迎しよう。ようこそ、我々の“United Soul Woker”へ」



そのセリフと共に須狩救の非日常が今、始まった。



















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