プロローグ前半
バトルものの予定
須狩救はごく普通の学生だ。毎日朝6:00に起床し、身だしなみを整え、朝食を食べ、学校へ通う。校内では友人や彼女と何気ない青春の日々を送っている。親がいないことや一風変わった妹を持つことを考えなければ何の変哲もないただの学生だ。
そんな彼は今普通と言える状況ではない。きっかけは帰宅途中に少し近道を通ろうと路地裏を通ってしまったことだった。気づけば辺りは暗い。あろうことか彼は路地裏で迷ってしまったのだ。別に普段通らない路地裏を通ったからではない。彼は普段から日常的に路地裏を使っている。では何故迷っているのか、簡単だ。
普通ではないことが起こったからだ。
今、彼の目の前では銀色の髪を靡かせた日本刀らしきものを持った長身の少女と、10歳ほどの少女を引き連れて、サメのようなギザギザの歯を持ったローブの男が争っていた。
ローブの男は二つの鋭いナイフを少女に突きつける。それに対応して長身の少女が日本刀で攻撃を受け止める。二人とも動きが洗練されていて、人間離れした動きをしている。そこら辺のゴロツキが争っているわけではないというのは救にも容易にわかった。
(この場に長居するべきじゃない…すぐに逃げよう…)
とりあえず関わるべきではない。路地裏から出て警察なりなんなりに連絡しよう。
しかし、救がそう考えた時には既に遅かった。
ローブの男が引き連れていた10歳ほどの少女が救の姿を確認してしまったのだ。
それだけならまだ良い。少女からは救の姿が視認できてしまうが、ローブの男からは死角になっている。しかし、少女は救の姿を捕捉した後すぐ、ローブの男へ救の存在を報告してしまったのだ。
「お馬さん、あれ…」
「なんだァ?オマエ…」
ローブの男が発した言葉に応じるかのように長身の少女が話す
「一般人……?なんで……?人避けはできていたはず………」
長身の少女が油断した隙にローブの男が一瞬で救に距離を詰めてくる。
物凄い移動速度だ。
救は呆然とそのように考えた。
現実味がないのだ。なにもかも。
そもそも普段から使っている路地裏なのに迷う理由がわからない。
何故路地裏でこんな争いが行われているのかも救からしたらさっぱりだ。
「しまった…!」
長身の少女が慌てて救の元に駆け寄ってくる
だが間に合わない
「見られたからにァ死んでもらわねェとなァ?」
救が最後に見たのは男の不敵な笑みだった。
目を覚ますと救の前には1人の少女がいた。
薄橙色のパーカーを着ており、髪は金色で肩にかかるくらいまでで切り揃えている。
ピンクのミニスカートに白のニーハイソックスを履いている。
歳は14歳くらいだろうか?救よりも若く見えるが
「おっ、目が覚めたかにゃ〜?」
救が少女を見つめていると、少女が話しかけてきた。
今時語尾ににゃをつけて話すやつがいるか?
救はそう考えたが、心のうちにしまうことにした。
世の中には色んな女の子がいるのだ。
変に細かい奴は嫌われるよ、と彼女から言われたこともあるし、ここは触れないでおくのが正解だろう。
「えっと…どちらさまで?」
救が尋ねる。
「あたし?あたしは片桐美夜子!気軽にみゃ〜こって呼んでくれにゃ」
「あの…美夜子さん…」
「みゃ〜こにゃ」
「みゃ〜こ…さん」
見た目だけ見ると年下なのだが、初対面でいきなりフランクに話すほど救は図太くない。いや、こんな状況でなければもっとフランクに話かけていたのだろうが、状況が状況だ。それにおそらく救はこの少女に助けられたのだろう。自然とさん付けになってしまうのも仕方ない。
「さんはいらないにゃ。大体、あたしと君は同い年だと思うにゃ」
少し遠慮はしたが、救もそこまで頑固ではない。
無理に敬語を使わなくていいならそれに越したことはないからだ。
本当に同い年だろうか?とも思ったが口には出さない。
女性に年齢を聞くのは失礼にあたると彼女に言われたことがある。
救は彼女こそいるが、女性に対する接し方が下手なのだ。
今付き合っている彼女も幼馴染の協力で付き合えたものだし、その割には手を繋いだことすらないヘタレっぷりだ。
「じゃあみゃ〜こ……ちゃん」
「なににゃ?」
「ここは…どこですか?」
「タメでいいにゃ」
「あっうん。ここってどこなの?」
「休憩所にゃ」
「いや、そういうのじゃなくて…ここは何の建物なのか知りたいんだけど…椅子と自動販売機しか置いてないのはこの部屋が休憩所だからだっていうのは分かるんだけど」
「君はここに来る前何をしてたにゃ?」
質問を質問で返されたりしても困る。
救は現状を整理したいのだ。
「それより状況を説明して欲しいんだけど……」
「いいから答えてにゃ」
しかし、そう言ったみゃ〜こは有無を言わさぬ目をしている。
答えるまでは何も教えてくれなさそうだ。
仕方なく路地裏での出来事を話す
「えっと……ローブの男と……銀髪の女の子が戦っていて……」
「チッ…相沢のやつ……記憶処理ミスってやがるな…」
「みゃ〜こ……ちゃん?」
記憶処理…?何の話だろうか?
もしかしてとんでもないことに巻き込まれてるのではないか。
記憶処理なんて物騒なものが出てくる時点で嫌な予感しかしない。
「ん……ごめんごめん!なんでもないにゃ」
後、一瞬明らかに口調が崩れたような気がしたが、触れないでおこう。
触らぬ神に祟りなしだ。
「あの、とりあえずここがどこなのか教えて欲しいんだけど……」
「あ〜ちょっと待ってにゃ。」
そう言って片桐は扉から出て行ってしまった。
救からすれば学校からの帰りで近道を使っただけなのにこんなことになってしまっているのだ。困惑するのも無理はない。
これからはもう路地裏を使わないようにしようと救は思った。
まあ、これからがあればの話だが。
「何がどうなってるんだよ……」
救の呟きは空虚な部屋に木霊した
しばらくして、片桐美夜子と眼鏡をかけたいかにも真面目そうな男が部屋に入ってきた。
「記憶処理は確実に行ったはずだが…」
「相沢がしくじっただけじゃないかにゃ〜?彼、気を失う前のこときっちり覚えてるにゃ」
怖い。と救は思う。当たり前だ。普段迷わない路地裏で迷って二人の人間の喧嘩に巻き込まれた上、目が覚めたら記憶処理だとかいう物騒な話をしている連中がいるのだ。怖いと思わない方がおかしい。本当に助けてくれたのか、それさえも分からなくなってきた。
「そんなはずは……まあいい。もう一度やれば良いだけだ。」
「あの……一体何が……」
「すまんな少年……“忘れろ”」
メガネの男…相沢がそう呟いた途端救の頭に甲高い音が響く
(うっ……頭が……)
救の頭に鈍痛が走るが、数秒も経てばすぐに頭痛は治った。
ただ今何故頭痛が起きたのか、救には分からなかった。
(今、相沢って奴が“忘れろ”って言った途端に頭痛がしたよな……)
そう考えると尚更恐ろしさを感じる。本当にこの二人は大丈夫なのだろうか。
そんな疑問が救の中に湧く。
「これで記憶は消去できたはずなんだが…」
「あの……記憶処理ってなんですか? それに俺が気を失う前に争ってたあの2人は…」
青髪の男…相沢に尋ねるが、相沢は救の言葉には耳を傾けない。
「どうやら効いていないらしいな」
「相沢のちからの使い方がおかしいだけじゃないかにゃ?」
「それはない。なんなら今日は調子がいい方のはずだ」
展開が早すぎてついていけない。気を失う前に見たローブの男と長身の少女の争いはなんだったのか……普段から使っていた路地裏で何故あんなに迷ったのか……どうして今こんなところにいるのか……記憶処理だとかなんだとか、何もかもがわからない。わからないことだらけだ。それに目の前の二人もさっきからよく分からない。頭がパンクしそうになった救はつい叫ぶ
「あんたら何者なんだ!そもそもここはどこなんだよ!俺が気を失う前に戦ってたローブの男達は何者だ!?あんたら何か知ってんだろ!答えてくれよ!」
発言しながら彼女らにあたっても仕方ないと思った。しかし、救からすればわけもわからないのだ。感情的になってしまうのも無理はない。
「まぁ落ち着きなよ須借救くん。そこら辺はここの堅物が全部説明してくれるからにゃ〜」
何故名前も知られているのだろうかとも思ったが学生証でも確認したのだろう。
それに、これ以上疑問を増やしたくはない。救は気にしないことにした。
「丸投げはよせ片桐。まあ混乱するのも無理はない。そうだな、記憶処理がきかないのなら仕方ない。まずはここの建物が何なのかを教える必要があるな」
「まず、この世界には所謂超能力と言われるものがある」
「ちょ、ちょっと待ってください、超能力…?それって一体…」
「黙って聞くにゃ」
「あっはい…」
はっきり言っていきなり超能力なんて言われてもわからない。
しかし、ここはみゃ〜この言う通り素直に聞くのが吉だろう。
疑問を抱くにも分からないことが多すぎる。
こほんっと相沢が咳払いをする
「まああるんだよ。一般的に超能力と呼ばれているものが。信じがたいことではあるが」
この世界には超能力がある。いきなり言われても理解はできないだろう。
しかし思い返せば救には思い当たる節があった。
ここで目が覚める前に出会ったローブの男と長身の銀髪少女との戦い。
二人とも洗練されていて、“人間離れした動き”をしていた。
あれは人間にできる動きじゃない。おそらく超能力によるものなのだろう。
それにさっき相沢が救に“忘れろ”と言った時、頭痛がしたのもおそらく能力なのだろう。不発だったようだが。
「心当たりがあるという顔をしているな。そうだな、君が見たというローブの男と銀髪の少女、あれはどちらも超能力を使っていた。まあ今は君にわかりやすくするために超能力と行っているが、我々はあれを“ソウル”と読んでいる」
「魂…ですか…?」
「まあそうなるな。まだ解明が進んでいないから詳しくは言えないが、我々人間には魂があり、能力もその魂に根付いているらしい。俺の場合は記憶操作だな」
いきなりの専門用語らしきものに驚いたが、なんとなく理解はできた。
“ソウル”のことを深掘りするのだろうか、と救は考えたが、相沢は“ソウル”の話を切り上げた。どうやらちゃんと順序立てて説明してくれるらしい。記憶処理だとかなんだとか言っていた時は不安だったが、こうしてみると誠実な男であることがわかる
「そして、超能力を持って良からぬことを企む奴もいる。例えば、念動力でも使ってて他人の財布から金を抜き出したりとか、な」
「安っぽい悪党にゃ…」
「うるさいぞ片桐。まあ、そういう奴らを取っ捕まえるのが俺たちで、ここはその拠点ってわけだ」
おそらくローブの男も能力を悪用していたんだろう。そこを組織の少女にみつけられて、戦闘に入った……といったところか。
「理解したようだな」
「分かるんですか?」
「目を見ればわかる。これでも人の心を読むのは得意な方だ」
「その割にはちょっと不器用だけどにゃ」
「静かにしていろ片桐。口うるさい女は嫌われるぞ」
「説教臭い男もにゃ」
片桐……みゃ〜こと相沢は仲が良いようだ。なんだかんだで信頼しあっているんだろう。最初は戸惑っていたし、今でも超能力なんてものがあることが理解はできても納得はできていない。だが、今の二人を見ているとなんだか信用しても良い気がしていた。
「で、だ。ここまで話を聞いたからには、お前も無関係ではいられない」
「えっと……それはつまり?」
「お前には……」
相沢が何か言おうとした時、ドンッという音と共に勢いよく扉が開いた。
扉の先にいたのはローブの男と戦闘を繰り広げた長身の少女だった。
キャラ詳細
須狩 救/マカリ タスク
16高校二年生
身長は168cm
黒髪黒目でアホ毛が生えているのが特徴
不思議な体質の妹をもつ。
両親は行方不明、現在は妹と二人で暮らしている。資金は親戚ののおじさんから援助してもらっており、本人は何不自由なく暮らせている。妹との距離を掴み損ねており、どうすれば仲良くなれるのか日々模索している。
田中 秋邦/タナカ アキクニ
身長170cm
救の親友。髪染めが原因で丸刈りになり号泣し、以降頭ともども態度も丸くなった。
クラスでは愛すべきバカポジ。救が奇妙なことに巻き込まれているのをなんとなく察するが、救のことを信じて自分から言ってくれるのを待っている。
紫村 霊奈/シムラ レイナ
身長172cm
救の彼女。黒髪ロングの清純派美少女。成績はそれなりに優秀で友人関係にも恵まれている。体温が低めなことがコンプレックス。
朝比奈 太陽/アサヒナ ヒナタ
身長160cm
明るく元気いっぱいの活発な少女。霊奈からは「ひーちゃん」の愛称で呼ばれ、太陽もまた霊奈のことを「れーちゃん」と呼ぶ。救の幼馴染であり、救と霊奈をくっつけたのも実は太陽。
須狩 神子/マカリ ミコ
14歳
身長154cm
救の妹。無口で運動も勉強も完璧にこなす超人。不思議な体質を持っていることもあり、兄との仲はそこまで深いものには至っていないが、家族として最低限の会話はしている。
白鷺 刃/シラサギ ヤイバ
16歳
身長180cm
日本刀を腰に携えている銀髪の少女。髪はロングだが戦闘中はポニーテールにしている。長いと戦闘で邪魔になるのに何故切らないのだろうか……?
人と喋るのがあまり得意ではなく、常に無表情である。
救は少し妹みたいだと思っている
片桐 美夜子/カタギリ ミヤコ
16歳
猫耳パーカーを愛用している短髪・金髪の少女
語尾に「にゃ」がついたりつかなかったりする。
時折猫被りが外れるがその時の口調は荒い。愛称は「みゃ〜こ」
ローブの男
ローブを被ったギザギザの歯が特徴的な男。黒髪で白色のメッシュが入っている。常に肌が日に晒されないようにしている。10歳程の少女と行動を共にする。
10歳の少女
ローブの男がつれている10歳の少女。黒髪のおかっぱでローブの男と同じローブを被っている。
相沢 蒼多/アイザワ ソウタ
22歳
青淵のメガネをかけており、髪は青に染めている。好きな色は青。
ちなみに別れた彼女の好みの色が青である。
記憶操作を行う。