もしもう一度戻れたなら(時の流れの中で)
未熟ですが、最後まで目を通していただけると嬉しいです。
にゃん、にゃあー
目を開くとそこは、当たり一面の雪景色。
寒さに震える身体は、幼く、まだ小さい。
母を探すが、どこにも見当たらない。
兄弟の姿もない。
いくら呼んでも、誰も答えてはくれない……
ふと、
いつも、疎ましい表情で見る兄弟の姿が頭をよぎる。
ポツンと残された、“我が家“とワタクシ……
“ワタクシは、置いていかれたのだ“
こんな寒さの中で、ワタクシを育てる余裕なんて母は、なかったのだ。
兄弟たちは、皆その日の食べ物を獲ることができる。
だけど、ワタクシは、今日までできなかったのだ。
いくら頑張っても、うまくいかなかった……
ポタポタ
目からこぼれ落ちるそれをただ見つめた。
寒さで徐々に身体が弱っていくのをただじっとすることしかできない。
徐々に眠くなってきた。目蓋が重くなり目を開けているのも難しくなり、とうとう目を閉じた。
ふと、眠ってしまう前に誰かの暖かな温もりを感じたような気がした
次に目覚めたときは、身体が軽かった。
周りを見ると知っている場所ではなかった。
寒くなくって、暖かい場所だった。
辺りをキョロキョロ見渡す。
スタっ スタッ スタッ
足音が聞こえてきた。
全身にしびれるような緊張が走る。
スタ スタ スタ
徐々にこちらへと近づく足音に怖くなり余計身体が動かなくなる。
目をギュッとつぶる。
フワッ
優しい感触が頭に触れた。
恐る恐る目を開く。
すると、男が、頭を優しく撫でていた。
男からは、日だまりのような優しい香りがした。
男が、ワタクシに何かを話してくれるけど、何を言っているのかわからなかった。
その男は、嫌がることをほぼしなかった。
嫌なことといっても、“嫌“と態度で示すとすぐやめてくれた。
そんな男との日々が、徐々にワタクシを癒してくれた。
そんな日々を重ねるごとにいつの間にか、男の周りには“家族“ができていた。
男は、幸せそうだ。
ワタクシは、男の“家族“を歓迎した。
それからもっと時が過ぎ、男の子供が生まれ、
気がつけば、出会ったときの姿とは、大分かわっしまった男の姿に少し、寂しさを感じた。
ワタクシの“身体も“いつの間にか年を取り動かなくなってきた。
男は、そんなワタクシをみて優しく大切にお世話をしてくれた。
そして、息を引き取った後は、泣きながら丁寧に供養してくれた。
それでも、ワタクシは、成仏できなかった。
ワタクシの“魂“は、どうやら長く生きて変化していたようだ。
変化し猫又になってしまったらしい。
まだ、その頃は、人の前に姿を現せるほどの力はなかった。
だから、側で見守ることにした。
男の子供も、すくすくと育ちいつの間にか巣だって行った。
時間は、どんどん流れていき男の妻が先に息を引き取った。
男は、悲しんだ。
それをどうにか慰めたいと思ったが今の私にはできなかった。
ただ、見守ることしかできなかった。
男は、その日から妻の写真やワタクシの写真に何やら話しかけるようになった。
それを知りたいと、思ったが時間が足りなかった。
結局、男が生きている間は人間の“言葉“を理解することはできなかった。ワタクシが、人の“言葉“を理解したのは、男が息を引き取った後だった。
猫又となったワタクシは、のんびりと時間の流れに身を任せ過ごした。
いつの間にか、人前に姿を現せるようになり、気まぐれで人前に現れたりもした。
人と触れ会うたびに、あの“男“との思い出を思い出した。
触れ会う度に、ワタクシを可愛がってくれる人間は、たくさんいた。
だけど、あの“男“のように、家族に加えてくれる人間はいなかった。
普通の猫の前に姿を現したことがあったが、動物的本能で私が“猫又“だと察知すると、威嚇するか、怯えたり、逃げたりするので現すことは自然となくなった。
寂しくないと言えば“嘘“になるが、こればっかりはしょうがないと流れていく時間の中で徐々に諦めていった。
長い長い時を1人っきりですごしていると、ある女の子に出会った。
その子は、“普通“の“人間“とは少し違った香りがした。
気まぐれで、その子と戯れた。
戯れる時間は、なかなか悪くなかった。
気がつけばその子がいる建物の中で過ごすようになった。
この建物の中は、私が入ってはいけないところもありそこに行くと必ずおんなじ部屋に戻されていた。
意識して“人間“の言葉を聴くと、
どうやらここは“特別な治療“をするところで“菌“を持ち込んだら危ないそうだ。
まあ、ワタクシは、姿を消すこともできるから入ることもできるのだが……
一度、興味本意で中を除いたことがあった。部屋には機械音が響いていた。それと、“女の子“より更に“普通“とはかけはなれている“人間“がベットに眠っていた。
この部屋にいる“人間“は死期が近い。
なんとなくそう思った。
ツンと鼻を刺激する薬品の香りが部屋をでてからも少し残っていた。
あの部屋をでてから、ふと思った。
生き物は、いつかは必ず死んでしまう。
でも、その日がわかってしまうとどうするんだろう?
なぜか、あの“女の子“の姿が頭に浮かんだ。
あの女の子になぜか、会いたくなった。
会いに行くと、女の子は泣いていた。
女の子の側に寄り添うようにくっつく。
すると、女の子は、優しく背中を撫でる。
女の子は、あと、残された時間がわずかなことをワタクシに嗚咽混じりに声を震わせて伝えてきた。
ただ、ただ、ワタクシは、女の子の側に泣き止むまで側にいることができず、気がつくと、あの“男“の姿を女の子に重ねていた。
その日から、女の子はやりたいことを書いたり計画をたてて過ごしていた。
時々、“友達“だけは、どうしても難しいんだとつぶやくようになった。ワタクシも、“友達“はどんなものか興味が湧いた。
ある日、いつものように膝の上で女の子の話を聞いていると、鼻をくすぐる懐かしい香りがし驚いた。
それは、いるはずのない“男“の香りだった。
気がつけば、少女の膝から飛び降りて、窓からその香りをたどって飛び降りていた。
地面には、雪が降り積もり、雪に足が埋もれ一気に身体が冷え込む。少し震える。
「猫?」
声の主の方へ視線を向ける。目と目が合う。
そこには、女の子と同じ年くらいの男の子がいた。
そっと、ワタクシの頭に手を伸ばし優しく撫でる。
男の子からは、あの“男“と同じ日だまりのような優しい香りがした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
まだ、未熟者でアドバイスや感想いただけると嬉しいです(*´∀`*)
この作品のシリーズで
“もしもう一度戻れたなら“ ←こちら本編です
“もしもう一度戻れたなら“(もう1つの物語)
も完結済で、投稿しているので、こちらも読んでいただけると嬉しいです(* >ω<)
好評でしたら、また、短編で描こうと思うので、活動報告を見てくださると嬉しいです(・・;)
最後までおつきあいいただきありがとうございました♪