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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver1.0-1 双つの世界を進む勇者たち

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90.ずっと後方でしょげている成人男性二名に涙

Phase1:準備

・まずは役割分担を決めよう。全体を統括する指揮系統を確立し、情報を集めながら手分けして準備を行う必要がある。何事もリーダーが一番の重労働だ、信頼できるプレイヤーを皆で選出するのがいいだろう。

 情報が集まってきたら、その情報通りの準備を始めよう。冒険者は素材集めを、生産職はアイテムクラフトを。怪物の来襲は近い、準備は時間との戦いになりそうだ。


進捗:5%


Tips:期間中、イベントエリア内では限定素材が入手できる。イベントが終了すると限定素材とそれを材料にしたアイテムは消えてしまうが、イベント中に重宝する多くのアイテムは限定素材がなければ作ることができない。重点的に集めた方がよさそうだ。





「……いつになくヘルプが丁寧ですね」


〈いつもこんな手厚くないだろ運営ァ!〉

〈今回なんか優しいな〉

〈なお難易度〉

〈低レベサーバーのためかこれ〉


 これまでと比べるとずいぶん細かくて丁寧な説明だけど、おそらくこれは下位サーバー向けの措置だろう。

 今回は横割りの組分けということで、これまでの攻略に慣れたプレイヤーたちは大半がAやBの上位サーバーに固まっている。レイドやユニオンの経験者が少ないところにとっては手探りだろうから、チュートリアルのような書き方になるのもうなずける。


 もっとも、ここはAサーバー。ほとんどがこの手のイベント経験者だから、丁寧に説明されていようが関係ない。

 せいぜいが「運営もちゃんと適切な措置を講じているんだなぁ」と思う程度だ。


「運営くん、初心者さんのこともちゃんと考えられて偉いね。よしよし」

「……違くない?」


〈草〉

〈草だが〉

〈*運営:やったぁルヴィアちゃんにほめられた!!〉

〈乗るな運営ァ!〉

〈お嬢もちゃんと褒められてえらい〉








 戯言は置いといて。


「さっそく情報が集まり始めていますね」

「さすがに早いわねえ?」

「皆だんだん慣れてきたよね。どこで誰に聞けばいいかとか」


〈素早い話題転換たすかる〉

〈口挟めなくておろおろする芸人コンビかわいい〉

〈芸人萌え兄貴は正気に戻って〉

〈お嬢が大将やってると配信も俯瞰で見れていいな〉


「改めて周知しておきますが、情報収集の様子は他の方の配信との二窓でどうぞ」

「この鯖にいる他の配信者は……ブランさんとイルマさん、それとハヤテちゃんだね」

「え、ハヤテちゃんもうA鯖にいるの?」

「V1勢のトップ層はもう追いついてきてるし? じゃない?」


 ブランさんは今更言うまでもないとして、イルマさんというのは新たなベータ組配信者だ。《バージョン1》グランドオープンと同時にチャンネルを開いて、後衛の純魔らしい一歩引いた視点が見やすいと評判になっている。彼とは私も面識はあるけど、コラボはまだ。


 そしてもう一人、なんとV1組の愛兎ハヤテちゃんが早くもAサーバーに参加していた。Vtuberとして他の配信や箱の仕事などいろいろと忙しいはずだけど、どうやら余り時間を可能な限りDCOに注ぎ込んでいるようだ。

 箱系Vtuberの現在の頂点ともいえる存在で、もはや立場は磐石というほかない彼女だけど、自分のVR適性を活かしてDCOに居場所を確立することにしたらしい。彼女の配信は時折チェックしているけど、もはや私から見てもトッププレイヤーの一角に食い込みつつある。


「プレイ動画の投稿者も増えてきていますし、本格的に賑やかになってきましたね」

「いくら動き回っても足りないくらいの世界だし、窓口が増えるのはいいことねえ」






 さて、整理していこう。


 今回の討伐対象、つまりボスは、おそらく海坊主だと思われる。巨大な蛸足らしきものの目撃証言もあるから、形態としてはタコ系統だろうか。

 そして夜草神社の時と同じく、どうやらその正体は汚染で変異した住民である可能性が高いようだ。だからといって、やることは変わらないけどね。


 ボスは四方浜湾を周遊しているようで、戦うにはまずそれをこの浜辺へ引っ張り出す必要がある。そのために必要な準備がいくつかあると判明していた。


「ボスを引き上げる方法ですが、四方浜港の警備隊が協力してくれるようですね」

「ええと……ボスに銛と錨を引っかけて引きずり上げる? 大丈夫なのこれ?」


〈草〉

〈草〉

〈うーんワイルド〉

〈住民たち定期的に脳筋になるよな〉

〈そんな大雑把な〉


 海坊主は一昨日から位置を捕捉されていて、もうすぐ四方浜へ接近する。そこに船で近づいて、鎖や紐をつけた銛を刺したり錨を引っ掛けたりして繋ぎ止める。後は追ってくるなら逃げて、逃げようとするなら引きずって浜辺まで引き寄せる。警備隊の隊長は、それが一番勝算が高いだろうと言っていたそうだ。

 ちなみに船は貸してくれるらしい。一日きりのイベントだ、さすがに船から作れとまでは言わないか。


 そこまでで必要な用意は三つ。海坊主の気を惹く撒き餌と、巨大なボスの抵抗に耐えうる頑丈な銛や錨と鎖。そして最後に、優秀な水属性と風属性の魔術師である。

 撒き餌は《料理》、銛と錨は《鍛冶》、鎖は《錬金術》と《細工》が担当するようで、それぞれ種類ごとに集まったクラフター組に周知がいっているところだ。まだ用意がないけど、レシピと材料が手に入り次第作れるよう準備に入ってもらっている。

 魔術師は船の動力代わりだ。《水魔術》で海流を、《風魔術》で風を操って帆船を動かす。場合によっては無理やりボスを引っ張る必要があるから、とにかく出力が必要になりそうだとのことだった。




「情報収集はひとまず戦闘職に任せて、生産職の皆さんには今のうちに準備に入ってもらっています。品質の確保も素早い量産も必要になりそうなので、普段あまりやらない連携生産の確認中ですね」

「生産は揃えば任せるとして、魔術師のほうはどうするの?」

「もう二属性のトップ層に打診してるよ。水はイシュカさんと、あと数人」

「風のトップは……ジュンくんと、メイさんあたりだっけ。ちょっと不作かなぁ?」

「イシュカさんのいる水と比べちゃうとねえ?」


〈さくさく〉

〈さすがに仕事が早い〉

〈スムーズだよなお嬢ほんと〉


 最初の情報が集まってきた時点で、今回は以前と比べてクラフターの占める重要度が高いことは察しがついていた。クロニクルクエストの時の彼らがあくまで個別で活動していたことを思い出して、そこの難易度が上がった時のために手を打っておいたのだ。

 懸念は当たったようで、今も内心胸を撫で下ろしていたりする。生産ラインが止まってクエスト続行不能なんてことになったら、それは全体をまとめる私の責任だ。


 ミカンのぼやきも一理ある。イシュカさんを先頭に精鋭が揃う水と比べると、二番手にメイさんが挙がる風はやや遅れをとっていると言わざるを得ない。あの人の本職は火属性だからね。

 ……お気づきの方もいるだろう。何割かは私のせいだ。精霊に進化して属性を失うまで、風は私とジュンさんという男性プレイヤーのツートップだった。別に風が不人気なわけではなくて、先頭走者が抜けたらどの属性でも手薄になるのは当然なのである。






 ……おや、来客のようだ。


「あれ。どうかしましたか、リョウガさん?」

「すまん、邪魔しちまったな。……ユニオンの指揮、よかったら見学させてくれねえか」


〈リョウガじゃん〉

〈お嬢の配信に出るのは珍しいってか初めてか〉

〈はじめましての人だ〉

〈ペトラ女史おるやん〉


「うち、フィーレンの時に上手くいかなかったからね。リーダーも悩んでたみたいだから、連れてきたの」

「そういうことでしたら、どうぞ。せっかくですし、ちょっと手伝ってください」


 途中から私たちだけになっていた中央広場にやってきたのは、リョウガさん率いるギルド 《盃同盟》の面々だった。


 リョウガさんは両手持ちの戦斧を使う前衛のアタッカーで、現在プレイヤーの中ではトップクラスのSTRステータスを持っている人物だ。ブランさんの《明星の騎士団》に続く第二のギルドを設立した人でもある。

 豪快にして気のいい人柄で、周囲からの人望も厚い。私も配信外では時折話をしたりしている。それと……予想以上の苦戦を強いられたフィーレン攻略戦で全体の指揮を担った人でもある。


 ここには三人で来ていた彼らだけど、そのうち一人は私とも親交があった。万葉でもご一緒したペトラさんがここの所属なのだ。

 《明星》でも《盃》でもそうなんだけど、このゲームにおけるギルドはかなり緩い。ギルドに限らずパーティの流動性も全体的に高いから、ペトラさんに限らず特定の所属があっても自由にパーティを組み替えるのが一般的になっている。


 そういうわけで私とパーティを組んだことがあったペトラさんがいたから、彼女がリョウガさんを私のところへ誘ったという流れらしい。

 私としては大歓迎だ。彼らに限らず、配信内でもより多くのプレイヤーと交流していきたいと思っているのは今も変わらないから。




「しっかし手慣れてんな、嬢ちゃんは。こういうの得意なのか?」

「そうですね、得意なほうかと。実は父がスパルタでして」

「ルヴィアちゃんのお父さん、社長さんだものね」


 父がコングロマリットのCEOとして成功しているからだとか、遺伝を主張するつもりは別にないのだけど、私が人を動かすことについて同年代の周囲より多くを学んでいるのは確かだ。妹は早くから芸能界へ惹かれていたから、健康になってからの私はその分もなおさら。

 もしかしたら将来的には私に自分と同じ道を歩いてほしいのかもしれない、と思う程度には、父は経営や組織運営、つまり人心掌握や人の扱いにうるさい。私自身それに過剰な緊張を覚えるタイプでもなかったし、苦手でもなかったから様々なことを教わっている。


 ……のはいいんだけど、別にそれとVRMMOのユニオン指揮とに関係があるかは知らない。これまでは私の時は特に上手くいっている、という事実があるだけで、私自身それを自分の功績だと言い張るつもりもないし。

 だから人に伝えられることがあるかは不安なんだけど……まあ、見られる分には構わないだろう。リョウガさんが勝手に何かを掴んでくれれば万々歳だ。


「とりあえず、いろいろ盗ませてもらうぜ。学ぶことは多そうだ」

なぜかこの日を境に芸人コンビの一般人気は上昇していくこととなります。なぜでしょうね。

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『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


小説家になろう 勝手にランキング

― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! もう皆さん大分慣れてる、、、そしてタコ、、正気度減る方じゃないよな、、 指揮はお茶の子さいさい!さすがお嬢だぜ! 、、、芸人コンビ、しょぼんとなってそう、、w 英才教育の…
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