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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver1.0-1 双つの世界を進む勇者たち

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89.サーバーA:ルヴィアと愉快な仲間たち

 そんなこんなで。


「今回はこの6人パーティでイベントをやっていこうと思います」

「「…………」」

「そんな目をしてもダメよお?」

「別に苛めたいわけじゃなくて、ちょうどメレー(近接火力)が欲しかっただけですから。誘う過程で可哀想なことになったのは自業自得なんですよ」


〈うわぁ……〉

〈ミカンちゃそもこわい〉

〈ここまで萎れてると謎の後ろめたさがあるな〉

〈でも絶対こいつら裏でちょっと喜んでるゾ〉

〈かわいそうに(笑)〉


 いくら大の男二人に出荷直前の子豚のような目を向けられても、逃がしてなんてあげないのです。

 真面目な話をすると、私たちと多少なりとも親交があって連携が取れる前衛アタッカーは貴重だからね。傭兵エルフとして知られるフレイスさんあたりを呼ぼうかとも思ったけど、この二人のほうが都合がいいしやりやすい。


 ちなみに私だけでなく、ミカンもこの二人とは組んだことがある。幼馴染といる時以外はややツッコミ気質がある彼女は二人にそれを見抜かれて、思いっきり欲しがられたから以降は逃げているようだ。

 しかし今は私が鎮火させているから、ちょっと辛辣な声色ではあるものの普通に話している。こういう冷たい態度のミカン、配信では新鮮だね。






「あ、そうだルヴィア。イベントメニュー見た?」

「あのやたらと胡散臭い概要のこと?」

「そうそう。あれね、エリア内でだけ内容が変わるみたいなの」

「正しい概要はイベントに参加しないと読めないってわけ? わけみたい?」


〈久々のルプスト構文〉

〈最近ルプスト構文ちょっとご無沙汰だよな〉

〈……なんか暴走天使、普通だな〉

〈*九鬼シオンofficial:フリューさんは普段は普通の人だよ。お姉ちゃんにだけ近いけど〉

〈切り抜きだとやべーやつに見えるけど何もない時は普通なんだよな〉


 フリューは常識人だ。私に対してだけパーソナルスペースが双子の片割れ(ルプスト)とのそれより狭くなって、私から一定期間以上離れるとちょっと暴走するだけで。

 普段は常識人すぎて面白くなりづらいせいで切り抜きにならないから、自然とフリューを取り上げた切り抜きは暴走時ばかりになる。初見さんは切り抜きを見てくることが多いから、このあたりはありがちな落とし穴だ。

 だから今のように、幼馴染で集まっている時に話を進めるのはフリューか私。こういう時に関しては、実はミカンのほうがよっぽどボケの頻度が高い。


 さて、イベントメニューの概要だったか。さっき街の外で見た時は事実をひとつも捉えていなさそうな概要だったけど、どうやらエリア内に入った今もう一度見れば変わっているらしい。

 ステータスを開いて、ホームメニューからもう一度その画面を開いてみると……。





《Event:陽光煌めく幻界の海》

 夏だ! 海だ! バカンス……なんてできるわけあるか!


 四方浜にはビーチがある。奪還攻略への感謝と期待を示して、今年の夏はそこを来訪者たちに貸し切ってくれる……ようなのだが、何やら事情があるようだ。

 昼王都は現在、港を封鎖されている。四方浜湾に巣食う海の怪物に航路を塞がれ、船を出すことができない状態だ。しばらく膠着していた四方浜湾だったが、最近になって奴は港町を襲って被害を与え始めた。

 奴を倒さなければ海路を使えないし、港町に被害が出続ける。これまでと同じく汚染されたボスを倒すため、王代理の《悠二》は来訪者に頼ることにしたようだ。


 とはいえ、浜辺を貸し切ってくれることには違いない。怪物の脅威さえ取り除いてしまえば、青い海も綺麗な砂浜も君たちのものだ。

 スイカ割りもよし、ビーチバレーもよし、バーベキューの用意もあるそうだ。この世界の海は綺麗だから、怪物さえ倒せば海に入ることだってできるだろう。四方浜では水着の販売も行われているのだとか。

 激しい奪還の戦いの最中、この機会を逃す手はない。凶悪なボスを協力して倒し、幻想の浜辺でみんなで遊ぼう!





 …………。


「半分以上隠れていたんじゃないですか!」

「大事なところを全部隠されて、ご褒美だけチラ見せ。完璧なチラリズムねえ?」


〈草〉

〈これは草〉

〈文量倍以上になってて草〉

〈そんなにしなくてもプレイヤー集まるやろ〉

〈いやこれいつものなんよ〉

〈安定の九津堂クオリティ〉


 ……ちなみにこれ、九津堂の常套手段だ。どう見ても怪しいあらすじや概要を用意して、いざ始まったら掌を返すというよくある流れである。

 これにプレイヤーは軽い気持ちで乗って、後から示された正しい情報に嘆くところまでが一連の様式美。さっきはちょっと個人的感情でむくれてみせたけど、運営のやり口を知っている私たちにとっては慣れ親しんだものだ。


「とにかく、今回はボス討滅型イベントということになるわけですね。倒せれば残り時間はバカンス、負ければお預けと」

「単純だからこそ、最上位鯖の難易度はお察しねえ?」

「でもSクリアは当たり前、だよね?」

「もちろん。今回ばかりは運営の鼻を明かしてやらなきゃ」

「うん。頑張ろ、ルヴィア」


 条件クリア式イベントにはボス討滅型、ダンジョン踏破型、探索型、アイテムクラフト型などいろいろあるけれど、このボス型クエストは中でも単純明快だ。ボスを倒せば成功、ボスに負ければ失敗である。

 だからこそ難易度も上げやすい。ボスを強くすればいいから。……だからこそ、それを倒した時の達成感も跳ね上がるのだ。


 ちなみに私は、勝てると確信していた。ここにいるのは精鋭揃い、彼らを信頼せずに何を信じるのかというくらいの面々だ。

 もしも運営が敗走させられると思っているのなら、その想定を超えてやるだけのことである。




「……フリューちゃん、案外冷静なんだな」

「何が?」

「もっとお嬢の水着とかに反応するかと思ってた」


 懲りないことを言ってくる無粋な男に場の空気を鎮められて、フリューは不服そうに振り返った。わかってないなあ、と言いたげな顔だ。


「わかってないなあ。確かにルヴィアの水着なんて見たことないし新鮮だけど、ルヴィアはそういう不埒な目を向ける相手じゃないの。ルヴィアは何してても可愛いんだから、わざわざそういうのを求めたりはしないの。偶像崇拝なの」

「……お、おう」

「そうか……」


〈うわぁ……〉

〈芸人共が素で引いてら〉

〈暴走天使が覚醒した〉


 …………最後の四字熟語は置いておくとして、フリューは確かにそういう性的な目は向けてこない。あくまで家族としての……というには少し重々しいけど、あくまで健全な振る舞いをするのだ。だからフリューはよく抱きついてはくるけど、キスはしない。

 フリューなりの考え方なんだろうけど、それを差し置いてもセクシーとは程遠いからね、私。


 思えば妹もキュート系だし、幼馴染たちにもフェミニンな人はいないし、それどころか配信に頻出する女子たちも軒並みグラマラスとは言いがたい。フリューとユナはどことは言わないながら大きめだけど、本人たちの雰囲気が大人っぽい女性という印象を与えないし。

 もしかしたら、そういう人が集まりやすいのかもね。ちょっと不本意ではあるけど、その中でも私が一番女性的魅力には欠けているし。








 さて、イベントクエスト開始時間が迫ってきて、私にとっては都合三度目(私が参加しなかった《フィーレン》攻略にもあったから、多い人にとっては四度目だ)のユニオンメニューが発生した。

 これについて、トッププレイヤー各位はというと。


『ルヴィアさんがいいと思うよ』

『むしろルヴィアさんしかいないかと』

『まあ一択よね』

『異論はないぜ』

『彼女がいなかったフィーレンは散々だったからな』

『じゃあ今回もおまかせってことで』


 満場一致で私にユニオンリーダーを押しつけてきた。

 私は現場クラスの指揮官ができるプレイヤーの頭数の欠乏が原因だと思っているのだけど、どうやら大勢の意見は違うらしい。

 別に二度目だった《万葉》でもユニオンリーダーは私ではなかったんだけど、過去三回のユニオンの成否を私がいたかどうかで分けているようなのだ。私がいればいいのなら、万葉と同じく私はもう少し下にいても構わないはずなんだけど……。


「ルヴィア、やっぱり人気者だね」

「それがカリスマってやつねえ。勝手に出ちゃうものだから、諦めなさいな?」

「『……また私が参加できない時に経験不足で痛い目を見ても知りませんよ?』」


 まあ、冗談だ。この台詞を本気で言ったら、それこそ自分のカリスマとやらを全面的に信じてしまうことになる。

 確かに特別目立つ立場ではあるし、特に上位層は私を中心に据えつつある節がある。だけどそれは惰性的なものであって、カリスマなどという自覚のできないものではないのだ。たぶん。




 結局ほとんど満場一致で他薦されて、私はユニオンリーダーの席に座ることになった。選択肢はそもそもなかった。

 そして「ルヴィアがリーダーに選出されました」のシステムメッセージが流れた途端、指示待ちのわんこの如く静まる群衆。……まだ何もしていないのに、統率が取れすぎていて怖い。

 君たち、それができるならフィーレンももう少し楽に攻略できたでしょうに。


「『とりあえず、情報を集めましょう。ボスの性質、今の状況、私たちがやるべきこと……まずはそのあたりでしょうか』」

『そうだね。あと、住民たちからどんな協力が得られるかも聞いておいた方がいいかな』

『OK任せろ』

『聞き込み行くぞー!』

『中心街と領主館、港の警備隊と、あと両ギルドもだな』


 そして仕事が速い。まだ私、情報が欲しいとしか言っていないんだけど。

 もっとも、彼らはこのゲームの前線を走り続けているプレイヤーたちだ。確実で効率的な攻略くらいはお手の物ということか。


「……なんでそれをフィーレンでできなかったんですかね?」

「カリスマって大事なんだよ、ルヴィア。この人の言うことは信じられる、この人にならついていける、ってみんなが思える人はそうそういないの」

「そういうものなのかなぁ」


 なんとなく釈然としないけど……まあ、現に動いてくれているのだ。私は流れてくる情報に備えてまとめあげるのみ。

 雑談のノリで父に教えられた人の使い方や上に立つ者の振る舞い方が、こんな形で役に立つとは思わなかった。……うまくやれているといいんだけど。

1000匹の指示待ちわんこ。ずらり揃ってルヴィアの前でお座りです。かわいいですね。

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『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


小説家になろう 勝手にランキング

― 新着の感想 ―
[一言] 「九鬼シオンを思い浮かべなさい。柔らかな胸、くびれた腰、美麗な小尻を」 ここで一息入れて、私は続きを語る。 「さあ、私を見なさい。平らな胸、すとんと落ちる胴、お子様なお尻。どこに興奮出来るの…
2022/03/03 10:45 ちょっと妄想
[一言] 更新お疲れ様です! ツヨク逝きろ、漫才コンビ。 うん、隠し過ぎだぞ運営ァ! カリスマお嬢。カッコいいからなぁ、、、 お父さんナイス、、! 更新お待ちしています
[一言] 1000匹もいたらかわいいより壮観って感想やろw まぁカリスマ、信頼性って大事やしなぁ A君は信頼出来るから従うって人とA君でもB君でも頭の指示には従うって人とか人には色々パターンあるしね
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