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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver1.0-1 双つの世界を進む勇者たち

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83.やっと種族板でぼっちじゃなくなる

 翌日、《精霊界》にて。


「あ、終わったみたいだね」

「こんなに光ってたんだ……」


 精霊王 《マナ》様の居所前にて、私はニムと一緒に人を待っていた。

 見覚えのある光と場所からわかる通り、待ち人は来訪者。私も以前通った道だ。


「おー、普通の眺め!」

「それは私も思いました。お疲れ様です、イシュカさん」

「ありがとね、ルヴィア。やっと追いついたわ」


〈おめ〉

〈おめー〉

〈イシュカも光り輝いとる〉

〈精霊の神秘感いいよね〉

〈竜人の風格も捨てがたいけど〉


 《精霊王の間》から出てきたのは、最初期から変わらず妖精族最強の名をほしいままにするトップ魔術アタッカー。ベータのうちにフラグを発生させていたイシュカさんが、ついに精霊への進化を果たしたのだ。


「おめでとう、イシュカ姉!」

「あ、それルヴィアの時に見たわよ。ありがとね、ニム」


 さすがに一度見ていれば動揺はしないか。ニムからの姉呼びにもさらっと返したイシュカさんは、忙しなく周囲を見回している。

 ……まあ、そうなるよね。この精霊界、精霊以外には半透明な光が複雑に折り重なった不思議空間に見えるから。進化した途端いきなり現実感のある鮮やかな世界になって、目を輝かせるのも無理はない。


「へえ、こんな感じなのね」

「配信画面ですら徹底されていますからね。画面の中も外も関係ない、ということでしょう」


 ベータ最終日の配信はイシュカさんも見ていたけど、この光景は初体験だ。なにしろこの精霊特有の見え方、配信画面に投影されないから。




「となると、外……えっと、《現世》の見え方も変わるの?」

「いえ、そのままですよ。ちょっと魔力が見えるようになりますけど」

「あー、言ってたわね、第六感。《魔力覚》っていうんだっけ?」


〈言ってたなそういや〉

〈そんな話もあったなぁ〉

〈ほんと何者なんだろうな九津堂〉


 そう、それ。《魔力覚》。さすがに狡いということで《ローカルプラクティス》には実装されていなかったんだけど、私はだんだん慣れてきた。

 なんというか、“そこにある”とわかるのだ。見えるわけでも聞こえるわけでもなくなってきたんだけど、魔力がどこにどのくらいの濃度・密度で存在しているのかが把握できる。

 最初のうちは共感覚のようなものだったけど、いよいよ第六感になってきたのだ。


「あれは、実際に見てもらわないとわからないかと」

「ん、わかった。自分で体感するわ」

「実のところ、私も未だに上手く説明できないんですよね」


 人工的に明確な第六感を作れるだなんて、九津堂はいったい何者なんだろうね。VR技術と脳科学の進歩は昨今ほんとうに目覚しいけど、それにしても驚きが先に来てしまう。


〈お嬢でもわからないとか〉

〈気になるな人工第六感〉

〈気になるけど別種族なんだよな〉

〈そもそも買えてないんだよなあ!〉


「運営さん。コメント欄もこう言っていることですし、そろそろ《プラクティス》に実装しませんか?」


〈*運営:そうですね、いいでしょう。確認の上で実装します〉

〈mjd!?〉

〈やったあああああああああ優勝だああああおああ〉

〈気になる気になる〉

〈プラクティスインスコしました〉


 流れで話を振ってみたところ、運営さんからは予想外なほど色のいい返事が返ってきた。

 これは私も嬉しい。皆とこの不思議な感覚を共有したいのもあるし、プラクティスとゲーム内の感覚も揃うから。魔力覚、慣れるとすごく自然になってくるんだよね。


「計画通り……」

「ルヴィア姉、だいぶ悪い顔してるよ?」

「そういう顔できないイメージあったけど……それも演技力なのかしらね」








 ニムがイシュカさんの感覚慣らしに付き合うといって《明暮の狭間》へ行ったから、しばらく私一人だ。一通り終わってからならともかく、チュートリアルの邪魔をしては悪いだろう。


「なので……何しましょうか」


〈精霊界遊覧〉

〈夜草神社のほう見てみるとか?〉

〈精霊界は俺らよく見えないからなぁ〉

〈*ペトラ:セレスさんと会ってみたら?〉


「……あ、それ採用で。セレスさんを探してみましょう」


 こういう時にコメントがあると助かるよね。いい提案を見つけたので、さっそく実行に移していこう。

 精霊界に限らないんだけど、この世界は区画分けが進んでいる傾向にある。セレスティーネさんが普段滞在している場所もすぐに割り出すことができた。


「セレスさん」

「あ、ルヴィアちゃん。何かあったの?」


 佇んでいたセレスさんに声をかけると、以前よりも砕けた口調で返された。ニムと同じで、同族になったことで変化があったらしい。

 精霊界や精霊王の存在などからか、どうやら精霊の同族意識は比較的強いようだ。ニムが私を姉と呼んだように、セレスさんは私を妹のように接してきている。

 もっとも、これは他の精霊たちも同じだった。態度があまり変わらないのはリットさんくらいのもので、誰もが私を本当の妹のように扱っている。精霊の文化なのだろう。


「前からちょっと聞いてみたかったことがあって」

「聞きたかったこと……うん、言ってみて」


 以前の話では、そろそろだと言われていることだ。大きくストーリーに関わってくるだろうから、少しでも関係がありそうな人物に聞いてみたかった。

 そんな私の次の言葉に、セレスさんはしばし固まることとなった。


「《アメリア》さんという方について、何かご存知ないですか?」






 《アメリア》。このゲームの中においては、まだ名前が一度出てきただけで詳細不明の人物だ。

 だがこの名前について、九津堂のコアなファンは非常に高い評価を下している。セレスさんと同じく、あの超大作で大立ち回りを演じた人物だから。


「……あの方のことを、誰から?」

「夜霧さんです。双界最高の治癒術師だと」

「ああ。昼の女王の件ね」


〈おん?〉

〈*明星の騎士団:待って何その話〉

〈そんな話あったか?〉

〈*Hayate Ch. / 愛兎ハヤテ:アメリア様出るの!?〉

〈何かあったのか……?〉

〈隠し事はよくないぞお嬢〉

〈アメリア様マジかよ〉


 そういえばこの話は珍しく配信外でのことだった。コメント欄が困惑しているけど、少し話を進めさせてもらおう。


「紗那様の治療のため王都へ向かっていると聞いていましたから、そろそろだと思いまして」

「……確かに、もうじき……ちょうど到着する頃みたいね」


 もう一週間になるけど、この世界はかなり広い。まして《転移》は私たち来訪者限定の魔法だから、報を受けた時点で世界の辺境にいたらしい彼女は《幻夜界》を横断していたのだ。

 セレスさんは目の前にディスプレイのようなものを広げて、どこかの光景を映し出している。これは鏡を司るセレスさん固有の能力で、特定地点の鏡に映ったものを見ることができるらしい。


「でも、なんで私がアメリア様を知っていると?」

「……実は、私たち来訪者には、この世界の一部によく似た予備知識があるんです」

「予備知識……?」

「正確には並行世界というか……私たちが覗いたことのある世界のひとつに、セレスさんとアメリアさんがいたんです」


〈えっこの話すんの?〉

〈【悲報】お嬢、暴走〉

〈セイサガの話持ち込むのか……〉

〈お嬢なりに勝算があるのか、九津堂に期待してるのか〉




 《セイクリッド・サーガ》。今では国内で知らない人を探す方が難しいほどの、国民的傑作として知られるRPGだ。


 新人傭兵だった主人公 《アレクシス》はある日、聖剣を引き抜いて勇者となる。聖女 《ミア》と騎士団長 《ヨーゼフ》とともに旅に出て、不死兵団を統べる魔王を討伐するため奔走することになるのだ。

 旅の途中で彼らの仲間に加わったのが、獣人の斥候 《シズカ》とエルフの魔術師 《セレスティーネ》。この二人を加えた五人が力を合わせて、魔王 《ハルトムート》の暴虐を止めようとする───というのが、大まかなあらすじである。


 私の目の前にいる精霊は、このエルフ魔術師 《セレスティーネ》と同じ顔をしている。この世界では生まれつき精霊だったそうだが、無関係ということはないだろう。

 おそらくは並行世界という扱いになっているのではないか、というのが私を含む大勢の意見だ。


「……なるほどね。今聞かされた名前からして、あまり笑い飛ばすわけにはいかないか」

「もちろん、この世界とは全く別のことだとは思っていますけど……何かあるのですか?」

「アレクシス、ミア、ヨーゼフ、シズカ、ハルトムート……私も含めて、全員が《アズレイア王国》に関わりのある人物なの」

「それは、アメリアさんの」

「ええ。アメリア様は、その国の第一王女。跡継ぎではないけれど、その力もあって現世の最重要人物の一人よ」


〈アズレイア王国あるのかよ〉

〈ハルトムートもって言ったか今〉

〈*Hayate Ch. / 愛兎ハヤテ:第一王女? 女王じゃなくて?〉

〈跡継ぎじゃないってことはもしかして〉


 《アズレイア王国》というのは、《セイクリッド・サーガ》の舞台となった国である。そちらでは魔王国と隣り合う、政変が起こったばかりの不安定な国だった。

 さっそくだけど、色々と気になる点はあった。どう切り込むか……と思案していると、今度はセレスさんの方から口を開く。


「その名前のうち、アレクシスとミア、それにシズカはアメリア様が直々に集めた腹心よ」

「となると、ヨーゼフさんは」

「そのお話と同じで、あの国の騎士団長をしているわ。ハルトムート様は……」


 ここでセレスさんの表情が変わった。言うべきかどうかを迷うような、少なくとも悪い様子ではないものに。

 ……もしかして。


「アメリアさんの、婚約者……ですか?」

「わかるの?」

「推測ですけどね」


〈アルフレッド:解釈一致〉

〈待って、は???〉

〈だよなぁ〉

〈*Hayate Ch. / 愛兎ハヤテ:アメリア様、お幸せに!〉

〈そらそうよ〉

〈アメリア様とラスボスが婚約!?〉

〈驚いてる奴はセイサガやれ〉

〈春雨はアズレイアの至宝〉


 一応はネタバレということになるけど、これももう知らない人の方が少ないともいえるかもしれない。

 《セイサガ》本編クリア後、魔王の依代にされていたハルトムートはアズレイア王国に引き取られる。亡国の王子であった彼は療養中、魔王だったにもかかわらず手厚く世話をしてくれるアメリアに惚れたような素振りを見せるのだ。


 アメリアの方も悪い反応はしていなかったから、この二人はくっつくだろうという共通認識があった。……ちなみに春雨というのは、ハルトムートとアメリアのカップリングのことである。

 とりあえず拝んでおこうかな。セレスさんの鏡、もう何も映ってないけど。

やったねルヴィア! なかまがふえたよ!

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『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


小説家になろう 勝手にランキング

― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! イシュカがようやく追いついたか、、 ようこそ、九十九堂の七不思議、、で収まるかわからない不思議がが一つ、『人工第六感』の世界へ そしてそういうのを躊躇なくぶっこんでいくお…
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