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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver1.0-1 双つの世界を進む勇者たち

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79.リスナーブリーダー・ルヴィア

 前回のDCO!


 いよいよ始まったバージョン1、意気揚々と乗り込んだ私たちを待っていたのは四つの攻略ルートだった。そのうち門戸の広い二つを13500人の新たな仲間たちに任せて攻略を開始した私たちだったけど、さっそく飛び込んできたのは「昼女王(紗那様)が汚染に臥せった」という凶報。波乱の幕開けとなってしまう。

 新規組は昼夜どちらも王都南方ルートの攻略を進め、それぞれイベントこそあったものの順調にいっていた。一方のベータ勢は《昼界》は王都東の《万葉》、《夜界》は北方面の《フィーレン》でクエスト進行中。少し時間はかかっているけど、どちらももうすぐ一段落つきそう。

 しかしそんな私たちを嘲笑うかのように、新たな事件の情報が駆け巡るのだった───!






「というわけで。例の情報、皆さんはもう見ましたか?」


〈おっと今日はいきなり畳み掛けてくるパターンか〉

〈なにどうしたのお嬢〉

〈勢いについていけてないんだが〉

〈あらすじ助かる〉

〈要点は押さえてるし、たぶん考えてきたよなかわいい〉


 ひととおり考えてきたのは事実だけど、実は少し端折っている。

 新規組の動向はというと、思っていたより好調そうだった。昼界は一週間で世束へ到達し、今は王都周辺を中心にプレイヤーが広がり始めている。特に早いプレイヤーの中には東へ進み始めて、万葉へ追いついてきた人もいるくらいだ。

 夜界は逆に、ベータ後発組が南方戦線へ合流し始めた。こちらは南進ルートが昼界より長く、推奨レベルのほうが先に追いついてしまったのだ。元々フィーレンはレベルが高すぎて手を出しにくい側面があったから、ようやく落ち着くべき形に落ち着いたというべきだろう。


 一方のトップ層はというと、こちらはやや苦戦気味だった。昼界では万葉以外にもダンジョンや新規フィールドが見つかったことによる戦力分散で、夜界ではフィーレンのクエスト規模があまりにも大きすぎて、一週間が経ってなおどちらもまだクリアできていない。

 というか、バージョン0ほどメインストーリーの攻略が重視されなくなってきたんだよね。いよいよMMOらしくなってきた、というべきかもしれない。現に私も、少し特殊ではあったけどあまり最前線には参加していないし。






 各地の展望は他にも色々とあるけど、話し出したらキリがないのでこのくらいにしておいて。

 そんな混沌とし始めたDCO界隈へ、運営は今朝になって新たな爆弾を落としてきたのだ。


「とりあえず一から説明しますね。情報というのは、DCO初の期間限定イベントの話です」


〈イベント?〉

〈面白そうな響き〉

〈見た見た〉

〈どうせお嬢が教えてくれると思って……〉

〈新鮮な驚きを共有したくて〉

〈くわしく〉


「ちらほら怠惰な方がいますね……」


 まあ、説明はするんだけど。


 期間限定イベントは文字通り、あらかじめ決められた一定の期間にのみ発生する特殊なイベントのことだ。とはいっても基本はいつも通り、発生したクエストを皆で協力してこなすことになる。

 普段と違うのは主に二つ。所定の日時にしか発生しないことと、イベントエリアに入るとプレイヤーたちが自動でサーバー分けされることだ。


〈サーバー分け?〉

〈全員一緒じゃないってことか〉

〈なんでわざわざそんなこと〉

〈運営もさすがに考えてるな〉


「当然、目玉はこのサーバー分けになりますね。この試みは個人的には歓迎です」


 どうせ《クロニクルクエスト》で無制限参加の大型イベントはあるのだから、もちろんこのサーバー分けの目的は負荷軽減ではない。プレイヤーによりよいイベントを楽しませるためだ。

 というのもこのサーバー分け、どうやら戦力ごとに横割りで区切られるらしい。例えば、ベータ勢の大半と新規組のトップ層、残りのベータ勢と新規組の比較的高レベルな層、新規組の中堅帯、それ以外、といったような感じだ。

 そしてサーバーごとの平均プレイヤーレベルで難易度が決まる。つまりプレイヤーたちは比較的レベルの近い仲間たちと一緒に、レベル相応のクエストへ挑むことができるというわけ。


「私たちのような廃人は普段よりもっと高難度なクエストに挑戦できますし……それ以外のプレイヤーはちょうどいい難易度で、しかも普段音頭を取る人達がいないところでプレイできます」


〈なるほど、わかりやすい〉

〈いーじゃん〉

〈運営の細やかな気遣いに惚れるわ〉


「どんなプレイヤーでも主人公、とは謳われていますが、誰だって自分が最前線に立ちたいと思うものでしょうからね」


 その代わり、危なくなっても高レベルプレイヤーの助けは借りられないけど、そこはそれ。

 自分の手で未知のボスを倒す快感を知って、彼らがメインストーリーでも追いついてきてくれれば、さらに好循環になっていくはずだ。




〈*アルフレッド:……嫌な予感するんだけど〉

〈*明星の騎士団:わかる。あの運営が楽々なんてさせてくれるわけないよね〉

〈*ユナ:今から怖いですよもう……〉

〈なんかトッププレイヤー組が怯えてるんだけど〉

〈あー、九津堂だもんなぁ〉


「……そうですね。正直なところ、私も怖いです。クリアできるのかなあ」


〈お嬢にしては弱気じゃん〉

〈クロニクルクエストでも平然としてたのに〉

〈まだ何かあるん?〉


「今回ばかりはわけが違うんですよ。あの九津堂ですもの……」


 今回のイベントは特別マップではなく、開放済の昼界の一角で行われる。つまり本編にイベントの結果が残ることになるんだけど……そこに不穏な注釈があったのだ。


「『本イベントの結果は開催後、最もクリア評価の高いものがワールドマップへ適用されます』。……つまり今回のイベント、失敗したら()()()()()()になるんですよ」


〈あっ……〉

〈察した〉

〈強く生きて……〉

〈???〉

〈つまりどういうことだってばよ〉


「つまりですね。今回のイベント、私たちの最高レベルサーバーは確実に難易度をぶっ壊してきます」


 これまでのようなメインストーリークエストはそこでクリアされないと困るから、しっかり準備をして万全で臨めばまず間違いなくクリアできる調整になっていた。《生い茂り過ぎた樹海》では少しだけ危ない状況にこそなったけど、あれも一レイドの敗走がクエスト失敗に直結していたわけではないし。

 しかし今回は違う。私たちが失敗しても一つ、もしくは二つ下のサーバーが成功すればいい。……こうなった時の九津堂は、大抵とんでもなく鬼畜なのだ。舐めてかかったら確実にやられることは、同社発のソシャゲ《百鬼戦録(ひゃっきいくさろく)》でよく知られている。


 そういう理由があって、特にベータ攻略組は戦々恐々としていた。失敗したところで実害はないとはいえ、当然負けたくなんてないのだ。

 そのせいで現在、最前線は混沌としている。クエスト攻略はもちろんのこと、その場で少しでもプレイヤースキルを磨こうと必死なのだ。


「プレイヤー同士で争っている余裕がないのはいいことなんですけどね。簡単すぎて拍子抜けするよりはいいですが、一体どうなることやら……」


〈……まあ頑張れ〉

〈応援してるぞ〉

〈まあ俺は愉悦するけどな!〉

〈麻婆星人は教会に帰れ〉








「とまあ、ここまでが今日ひとつめの話でした」


 そんな初イベント(ちなみに詳細は発表されていない。どうやら海が関係するらしいけど……)を四日後に控えて、《ポルト》結界祭壇の件から三日経った十三日の火曜日。イベント情報のこともあって、今日は昼から配信をつけていた。

 どうせ非公式のルヴィア専門wikiとやら(DCO総合wikiとは別で、完全に独立したサイトだ)に配信内容は勝手にまとめられているし、比較的人の少ない平日昼間に配信しても大丈夫。そのあたりの恩恵は甘んじて受け取ることにしている。


「二つ目……の前に、今は簡潔に。万葉のクエストは、予測通りにいけば今夜のうちにケリがつきそうです。そのあたりの話は私は夜にするので、今気になった方は公認wikiを見てください」


〈おけ〉

〈後で見るか〉

〈別窓で見てる〉

〈結局プレイヤーが編集してるんだよなあのwiki〉

〈掲示板で嵌められたやつリアルタイムで見てたわ〉


 バージョン1グランドオープンに先立って成立した《DCO wiki》。誰でも編集可能な便利攻略サイトだけど、実はその成立にはちょっと面白……可哀想な事情があった。

 去るベータテスト期間。公式掲示板の住民情報板にて、とあるプレイヤーが口を滑らせてしまったのだ。それも覗きに来ていた運営担当者の前で。ノリノリの運営にWebスペースをプレゼントされた彼は《バージョン0》が終わるやいなやwikiを設立して、主要住民(ネームドNPC)まとめの編集を始める羽目になったのだった。

 当初は住民やフレーバー要素などだけをまとめる場所だったんだけど、可哀想に思ったり面白がったりして集まった有志の手で瞬く間にDCO総合wikiへと成長。先月にひとまずの完成をみたそれは運営の補助もつき始め、今もプレイヤーたちの心強い味方となりながら日夜更新が続けられている。




 閑話休題。


「wikiの話はいいとして、ここからが本題です」


〈おう〉

〈そのへん気になったらまとめサイト行きゃいいしな〉

〈で何だったっけ〉


「もうグランドオープンから10日が経ちましたし、私も配信外を含めていろいろしていますからね」


 細かい数字までは見せられないけど、この辺りで久々にステータスやスキルの確認をしておこうと思ったのだ。





虹剣の精霊・ルヴィア Lv.30


性別:女

種族:精霊

属性:幻

特殊:《魔力生命体》、《本質の精霊・虹魔剣アイリウス》、金属防具・アクセサリー装備不可、《虹の魔術(レインボースペル)

状態:


VIT:42(+0)

STR:101(+20)

AGI:225(+10)

DEX:166(+0)

INT:257(+5)

MND:233(+15)


種族スキル:《エレメンタルステップ》Lv.56 《植物魔術》Lv.50 《薬草看破》Lv.27 《鷹目》Lv.52 《虹魔術》Lv.60 《魔力察知》Lv.58 《瞑想》Lv.12 《精霊の唄》Lv.4 《浄化》Lv.41


汎用スキル:《片手剣術》Lv.52 《パリィ》Lv.59 《回避》Lv.53 《治癒術》Lv.46  《解体》Lv.48 《直感》Lv.53 《攻撃予測》Lv.56 《鑑定》Lv.32 《採集》Lv.30 《罠探知》Lv.29 《生活魔術》Lv.38 《魔術学》Lv.42





「要所だけ読み上げていきますね」


〈やったぜ〉

〈ほんと助かる〉

〈ここまで教えてくれる配信者他にいないよな〉

〈※推定ステータスはRuviPediaにまとめないようお願いします※〉


 まずは基礎ステータス。

 精霊への進化で大きく変化したステータスは、魔術威力やMPの超強化など大きな恩恵をもたらしている。だがデメリットもあったから、まずはそこの補填だ。

 一気に伸びなくなったSTRをある程度伸ばしたのだ。《プッシュパリィ》の運用は諦めるにしても、あまり低いとパリィ成功率に影響が出てしまう。

 とはいえ進化後の私はダメージソースの大半を魔術に依存しているから、攻撃力までは求めないよう程々に。エルフ時代のような剣でダメージを稼ぐ動きは、今のステータスでは効率が悪いのだ。


「それ以外はバランスよく……ただ、DEXは足りるようになってきたのでいったん止めました」


〈パリィ使いがDEX伸ばさないの草〉

〈実働一ヶ月で確定成功とか嘘だろ……〉

〈やっぱ人間辞めてるわ〉

〈DCOトップ層は超人だらけ〉


「いやまあ、確かに人族はやめて魔力生命体ですけども」


 人間の定義から追い出されてしまった。ちょっと動体視力と空間認識に自信があって、そこそこマルチタスクが得意なだけなのに。

 仕方ないんだ。本当に失敗していないだけだし、種族値でも多少は伸びるから。それならSTRを重視した方がいい。





「スキルは……真新しいのは二つですね。《エレメンタルステップ》と、先日の《魔術学》」


〈魔術学強すぎて吹いたわ〉

〈一人が条件満たしただけで全員に配っていいスキルなのかこれ……〉

〈エレメンタルステップって語感よくて好き〉


 《エレメンタルステップ》。これは汎用スキルの《歩法》、およびエルフ種族スキル《森林歩法》の上位にあたる精霊専用スキルだ。《バージョン1》から追加実装されていて、ログインしたら自動で変化していた。

 エクストラ種族限定ということもあって、その効果はもちろん強力。エルフが森林地帯でのみ受けていた補正を、一定以上の魔力濃度がある限り常時得られるようになった。


 ただし弱点もあって、この「一定以上の魔力濃度」は案外曲者だった。基準値が思いのほか高いところにあって、フィールド上では発動したりしなかったりするのだ。ダンジョン内や魔力濃度の高い場所では気にする必要はないけど、そうでない場所では魔力濃度アイコンの表示を常に確認しておく必要がある。


〈やっぱそう美味すぎる話はないんだなって〉

〈大変なんやなぁ〉

〈感覚合わせるの大変そう〉


「それを考慮しても強力ですけどね」




 続いて《魔術学》。こちらはエクストラアーツが条件追加される方式のようで、現時点では《連唱》と《並行詠唱》の二つが開放されている。

 この二つはどちらも条件達成で全員に開放だったけど、今後もしかしたら達成者のみのものも出てくるかもしれない。まだ例が少ないけど、エクストラアーツというシステムは今後増えるような気がするし。


 レベル開放のアーツや効果はいずれもパッシブで、魔術全体にかかる性能向上だった。これによって魔術師全体の能力がわずかに上がっている。

 実は《バージョン1》開始時点では、検証班によって純粋なDPSでは物理火力に分があるとされていた。この傾向が覆されるかどうか、注目だ。






「それ以外もレベルキャップが開放されて、スキルレベルもそれぞれ上がっています。新しく習得したアーツは……今夜にとっておきましょうか」


〈えー〉

〈まーたすぐそうやって焦らすー〉

〈お嬢はリスナーの躾が上手いなぁ〉

〈期待〉


 今夜はいよいよお待ちかね、《万葉》クエスト最終盤だ。

いろいろ説明回でした。ちなみに冒頭のやつ、ルヴィアはカンペなしで諳んじていたりします。

前半で言及されている期間限定イベントは少し先のことになりますが、《万葉》決戦は次回から。乞うご期待!


まだの方、よろしければぜひブックマークと評価ポイントをよろしくお願いします。そうでない方も、どこかでお知り合いに紹介などしていただけたら嬉しいです!(必死)


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『Dual Chronicle Online 〜幻双界巡りの物語帳〜』

身内による本作別視点です。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! あらすじ一息で読んでそう、、w これが九 十 九 堂 ク オ リ テ ィ さてさてどんな地獄の窯が開くのか、、 ステータス助かるです 更新お待ちしています!
[良い点] ルヴィアのステータス助かる! ちゃんと強くなってるんだなぁってぐらいしかわからんけど [気になる点] 沙那様が呪いに感染したって公表してよかったの?一応内緒だったのでは?と思った [一言]…
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