487.ペース的にコンプリートまであと一年半かかることを覚悟した
こうして順調に戦闘を進めてきているけど、実は最近はトップ勢が攻略するボスにだけ共通する特徴がある。
それが、「最終ゲージがやたら強い」というもの。その方向性はさまざまで、突然とんでもなく凶悪な行動パターンになることもあれば、単純にHP量が他のゲージから跳ね上がったりすることもある。
で、その原因となっていると思われるのが、
「《百花千変》、一回目」
「よし、合わせるぞ! 《セイクリッド、ホーリークロス》!」
「僕もこっちにしよかな。3、2、1」
「「《トワイライト・ブラスター》」」
〈キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!〉
〈待ってました!〉
〈そらやるよね〉
〈ダブルトワブラだぁ!〉
〈ほんとに量産されてる……〉
〈あーあーあー〉
〈凄まじい火力〉
〈改めてズルいなぁ〉
〈固有奥義さんっていつもそうですよね!〉
〈まあこれ前提の難易度になっちゃってるもんなぁ〉
そう、奥義である。私たちは手に入れた奥義を当然ボス戦に投入しているのだけど、そんなことをしていれば自然とボスのほうもそれ前提の難易度になっていくものだ。それでも使いようによってはちゃんと切った分だけ楽になる、絶妙なバランスが成立していることが多い。
で、その切り方で主流なのがこれ。ラストゲージ突入直前にまとめて切って、ゲージ移行前に超過ダメージを与えてしまうことでラストゲージを削るやり方。行動が激しくなって難易度が上がるラストゲージを、これで可能な限り短縮するのが強い。
今回もそれで、三本まとめ撃ちで一気に削る戦法をとった。九精霊全員が獲得したことで二重になった《トワイライト・ブラスター》、それを加味しても相当なダメージになっている。……このウェンディゴは、幽霊のような存在。これはどうやら、《生命順転・剪定の刃》の効果対象だったらしいのだ。やはりとことん、私に有利なようにできているというか。
余談だけど、この戦法の定着は固有奥義ごとの細かい仕様のよる取り回しに多少の変化をもたらした。たとえば、総火力が高くてそれまで少し強すぎるとされていた継続ダメージ系のものは評価がやや落ちた。形態変化に入られてしまってダメージが通らなくなるせいで、ラストゲージ突入直前に向かないから。……とはいえ、ラストゲージに入ってから使えばいいから大きな問題はないんだけど。
「パターン読めたね。取り巻きもない。じゃあ、撃つよ」
「それと、範囲攻撃来なくなったね? カレンちゃん、いけるんじゃない?」
「そうですね! ヤナガワさん、お願いします!」
「よし、任しとき」
そこからはまずラストゲージのパターン把握をして……今回は新たなカードを二つ切る。ひとつはある程度落ち着いたから、もう片方はパターン変化で使いやすくなったから。
近接攻撃が苛烈になった代わりに後衛への範囲攻撃がなくなった最終ゲージを前に、カレンちゃんは《妖精因子》を発動して等身大になりつつ構えを取った。隣に控えるのはヤナガワさんだ。
そして私は、もう一度《百花千変》を発動してから。
「《スペクトル・オーバープロード》!!」
「こっちも! 《グラン・フェッテ──竜巻》っ!」
〈ヒャッハー!!〉
〈バーゲンセールだ!〉
〈見ててめっちゃ楽しい〉
〈これがトップ勢のボス戦の華よな〉
〈だんだんウェンディゴがかわいそうになってきた〉
そう、もうひとつの……というか、私の本来の固有奥義を発動した。こちらの方が火力は高いんだけど、先に切らなかったのはコストになるのがHPだから。
強力無比な《スペクトル・オーバープロード》なんだけど、これは即座のゲージ攻撃で回復前に倒されてしまうリスクがあるから少し使いどころが難しい。今回使えたのは、ある程度離れていれば回避困難な攻撃は飛んでこないとわかったからだった。
そしてもうひとつ。こちらは特殊枠であるカレンちゃんの固有奥義だ。クロニクルクエストでも使っていたそれは、高いコスパと任意属性の高火力を有する代わりに要求されるものがある。その属性の魔術師と、踊ることによる回避力低下だ。
今回は私は前衛だから、ヤナガワさんを相方に選んで使う。これも後衛エリアへの範囲攻撃がなくて、後ろまで飛んでくる攻撃は避けやすいものになったことを確認しての発動だった。
「よし、じゃあ削ってくよ!」
「あとはやられずに倒し切るだけだ! 気張ってくぞ!」
そう、つまるところ……ラストゲージはむしろ与しやすくなった。その分だけ前衛の防御負担は大きくなっているんだけど、幸いにしてこのパーティの場合そのほうがやりやすい。タンクとしてさほど火力寄りではないセージさん、サポート主体のスズランちゃん、そして前衛アタッカーとしては防御力に強みがある私の構成だから。
これで耐えながら適宜私からも火力を出しつつ、メインウェポンは《グラン・フェッテ》に任せる。道筋はこれで見えてきたところだった。
「これが……」
「ちゃんと隠されてたね。堂々と鎮座ましましてたらどうしようかと思ったけど」
「ルヴィアさん……ここって普通見当たらなくて困惑しながら探し回るところだと思うんです」
〈またRTAしてる……〉
〈いつものやつ〉
〈さすがっすお嬢〉
〈様式美とか……〉
だって、ほら。魔力覚が。パーティの三分の二が精霊の構成でここに来ておいて今更だと思うんだ。
というわけでしばらくして、私たちは無事にウェンディゴを倒した奥の場所で目当ての唯装と対面していた。……本当はわかりづらいはずの片隅の隠し空間に置かれていたんだけど、精霊の唯装ほどのものが魔力遮断すらされずにいた以上は丸わかりだ。
迷いすらせずに直進して発見した私に呆れ顔のカレンちゃんだけど、彼女も精霊である以上は気付かなかったはずはないだろう。目を丸くしているドラゴニュート二人のように、これは精霊以外の目から隠れていればそれでよかったのだ。
「《インヴェルノアンクレット》……アンクレット?」
「あれ、新部位じゃないですか!?」
「こんなタイミングで……」
「ああ、まだ装備できないみたい。次のバージョンアップ、イベント後なのかな」
〈冬だ〉
〈!?〉
〈マジか〉
〈知らない部位ですね……〉
〈もはやイタズラでは?〉
〈脚部位来るのか〉
〈クラフター的には身構えられるだけ助かる〉
そしてこれまた公式プレイヤーならではというべきか、どうやらまたしてもプレビューを渡されたらしい。DCOは以前から何度も装備部位を増やしてきたけど、こうして解禁前に実物が出てくるのは初めてだ。
私としては、それは特に問題ない。どちらにしろ今は単体性能と見た目の都合で装備していない《プリマヴェーラブーツ》とのセット装備だから、すぐに装備して即強化、というわけでもないし。
おそらくは来週頭に予定されているバージョン2.1アップデートのサプライズ枠だろう。明日にはパッチノートに追記されているかもしれない。私たちを驚かせて目的を達成できるからか、当日判明の多いDCOにしては猶予があるほうだ。
○インヴェルノアンクレット
分類:アクセサリー(脚)
スキル:《回避》、《パリィ》
属性:氷
品質:Epic
性質:《唯装》、《不壊》、プレイヤーレベル連動、《精霊の恩寵:冬》
所持者:ルヴィア
状態:正常
DEF+82、MDEF+66
ポーションクールダウン短縮(小)
・厳しくも恵みの元となる冬の概念が込められた精霊のアンクレット。その佇まいは静かにその場を落ち着かせ、着用者の身を守る。
四季の精霊が戯れに作り出した品のひとつ。対応する四つの装備が揃うと真の力を発揮する。
「ポーションクールダウン短縮……偉いように見えるけど、試してみないと案外わからないかも」
「おお、ちゃんと知らない効果がついてるな」
「春のときは確か、SP消費減少でしたっけ」
「それが真っ先に目が行く効果なら、唯装としては控えめなのかな?」
「あれやない? セット装備したら発動する効果が本命やとか」
改めて性能を見てみたんだけど、やはり唯装としては控えめだ。ステータス補正については最上級なんだけど、サブの効果にインパクトはない。新しい要素ではあるとはいえ、物足りない上に少しピーキーだ。
ただ、これはヤナガワさんの言う通り。もともとセット効果がメインであることはわかっているし、それを見てからでも遅くないだろう。
ちょうど《精霊の恩寵・冬》のところに「!」マークがついている。そこを押してみると、確かにそれまでにない表記が追加されていた。
《精霊の恩寵・冬》
・魔力の具現である妖精が作り出した、強く力が篭った品。物によって及ぼす効果が変わる。
これの場合は、《精霊の恩寵・春》、《精霊の恩寵・夏》、《精霊の恩寵・秋》を持つ装備と同時に使用すると効果が上昇し、特殊な相乗効果が得られる。
精霊の恩寵・春
《フォトシンセサイズ》発動時、自身の回復量が上昇(微)
精霊の恩寵・夏
???
精霊の恩寵・秋
???
精霊の恩寵・冬
一定以内の距離でパリィまたは回避を完全成功時、対象のSPDを5秒間ダウン(微)。再発動すると継続時間が更新される
「……あ、凄いこと書いてある」
「確かにこれは、唯装のセット装備なんてキツイ条件に見合うな」
「二つあってやっと発動な分、今回一気に強化になるね!」
「うわ……ルヴィアさんにとってはどっちも無条件同然じゃないですか」
「持ち主に合わせてつけられとるね。唯装にはようあることやけど」
同時に判明した春は《植物魔術》の特定魔術限定の回復量バフ、冬は至近距離で守りに成功したら敵に速度デバフ。確かにこれは、私にとっては無理なく達成できるものだ。効果のほどにはよりそうだけど、素直に扱えそうだね。
これらを実際に使えるようになるのは、バージョンアップと装備更新後。楽しみにしておこう。




