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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.2.0 武士道とゲーマー魂の相乗効果

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495/500

486.得意だからといって楽勝していいわけじゃないんだけど……

 どうやらここは、狩場としてはアイスゴーレムの純氷が主体らしい。それ以外は高レベルながらどこかで見かけたことのある敵ばかりで、美味しいとはいえさらなる新顔はいなかった。とはいえ充分すぎるだろう、関連しうるクラフターにとって純氷はあまりに魅力的だ。

 ざっくり言えば、氷属性の高レベル敵をうまくいなしながら迷路を進むダンジョンだ。なんか、私が関わるダンジョンってことごとく典型的な通路と部屋型のものにならないよね。あれ、ステレオタイプすぎるとは思いつつけっこう好きなんだけど。


「《クロリロ》みたいな?」

「ここでその名前を出すあたりわかって言ってるよね」

「ま、言ってましたもんね」

「《宙渡り》合成なし突破者が擦られないわけないだろ」


〈クロリロみたいな〉

〈まあお嬢だしアレの話になるよ〉

〈wikiにとんでもないこと書いてあってびっくりしたぞ〉

〈お嬢がクロリロで何かあったんです?〉

〈!?〉

〈なんて???〉

〈怖いよな。俺も怖い〉


 かつて私が最難関ダンジョンで縛りプレイを達成した九津堂の不思議のダンジョン系ローグライクゲームの話はそこそこに、どんどん進んでいく。……いや、そのね。あそこまでされてフロルの正体に気付かなかったのには理由があるの。水波ちゃんと橙乃に完璧にカモフラージュされちゃって。

 ……やっていて思ったんだけど、マッピングシステムのあるDCOとリアルな迷路って相性悪いね。マップが出回ってしまったりすればただの曲がりくねった道になりかねないし、再解放時は何かしら対策しないと面白みがなくなってしまいそうだ。






 とはいえ初見ではある程度迷路として楽しめていたけど、右往左往で完全に迷ったりはせずに中央付近へ。


「ルヴィアさんの体内地図どうなってるんですか……?」

「ここまでなんでもできるんだから、地図が読めなくて方向音痴くらいデメリット特性ついてないとバランスが……」

「はがね・フェアリーの禁伝やさかい、何言っても無駄やで」


〈行き止まりのときの引き返し方完璧だった〉

〈なんで?〉

〈そもそもなんで来た道がわかるんだ〉

〈座って見ててすらこの速度じゃ迷路わからなかったぞ〉

〈VR空間では完全無欠すぎる……〉

〈お嬢はザ○アンだった……?〉


 いやまあ、だいたいどのあたりで曲がったかはわかったから、こっち側には進むような道はなさそうだな、というのはなんとなく。

 とはいえ別に、全てを頭の中で済ませていたわけではなくて。


「印はつけてたからね。こんな感じで」

「うわ、やっぱソードガードずるい!」

「雪の壁に線を入れるくらいはできるのかこれ」

「ルヴィア、ここは『ずっと片方の壁に沿って進んでたらいつかはゴールに着く』をやるだけで褒められてるとこだよ?」

「それやったら明らかなハズレの道で強い敵に遭いそうだから……」

「それはルヴィアはんがダンジョンマスターになったらやるいうことやろか」


 どうだろう。もしやるとしたら救済措置というか、何かしら指標としてわかるようなものを用意すると思う。クイズ的な感じで。

 迷路の楽しみ方って、いろいろあると思うんだ。迷いながらも試行錯誤を重ねるのもいいし、理論的に解いていくのもいい。ただ今回のように自分自身が中で歩く迷路はどうしても、賢く解く方法がなくなりがちなんだよね。だからこそどう作るかは難しい。

 ……いやまあ、別にまだここのダンジョンを与えられると決まったわけではないんだけど。でもさすがに、渡されそうというか。




 迷路の終着点は広場で、目の前にはわかりやすい大きな扉。この時点で察するところはあって、しっかり準備して身構えてから中へ入る。

 案の定だ。中で待っていたのは、いかにもな白系統の怪物。名前は……《ウェンディゴ》。


「ウェンディゴここで来るんですね!?」

「思ってたより惜しみないみたいやね」

「ごめんウェンディゴってなに!?」

「同じくわからん!」

「確かアメリカの魔物じゃなかったですっけ」

「合ってるよ。北米大陸で冬に現れるという精霊の一種」


〈ウェンディゴ?〉

〈なんで当たり前のように何人も知ってるんだよ〉

〈知らないの少数派なのかよ〉

〈ユナちゃんは癒し〉

〈高校生二人とも知ってて泣いちゃう〉

〈精霊なのか〉


 そう、ウェンディゴというのは北米の先住民族が伝承している精霊だ。冬の間にだけ存在するようで、一人きりの旅人の背後で気配だけを悟らせて驚かすらしい。夜雀に似ているかもしれない。

 なにしろ民間伝承な上にそもそも見ることができない存在だから姿は諸説あるんだけど、今回はひょろりとした幽霊のような姿だ。





ウェンディゴ Lv.100


属性:氷

状態:

特殊:物理軽減





 言ってしまえば、順当な氷属性ボスだ。物理軽減、つまり物理攻撃の効きが悪いことさえ除けば。

 ……いや、わかるよ。普通ならそれは大問題だ。本当ならてんやわんやになると思う。大半のパーティにとって、物理攻撃はメインのダメージ源だから。敵の攻撃を引きつけて後衛を守るため、前衛はタンクの他に二人くらいは欲しいし。

 だから本来それこそが高難度の理由なんだけど……ところがこれ、攻略者が私であるという一点において気にする必要が薄れていた。私は近接前衛としてカウントされるけど、ほとんどの攻撃が魔術ダメージだから。


 それに。


「ご挨拶です。《蝕ミ、変若水》」

「ナイス! じゃあスズランちゃん、あとはサポート重視で!」

「わかりましたっ!」


〈キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!〉

〈綺麗に入った!〉

〈やっぱズルいわ変若水〉

〈お嬢とスズラン、普通にコンビ殿堂です〉


 今回ここに来ている前衛プレイヤー、もう一人はスズランちゃんだ。実はボス部屋に入るときに一人だけ外で待機していて、私たちが側面から戦闘を仕掛けていたからスズランちゃんが《蝕ミ、変若水》のために背後に回る隙ができていた。

 そして彼女、サポート重視型の前衛だ。隙を作って仲間の攻撃を強める性質があるから、そのサポート対象が私である以上は物理軽減の影響を受けづらい。


「これで物理耐性じゃなかったらスズランちゃんまで弱点殴りしてたと思うとズルいよねほんと」

「まあオマケ程度ですけど……」

「そのオマケがほんとにオマケでいいスタイルしてるのがズルいんだよな」

「《クアトロ・カレントフォール》!」

「ほらもう言ってるそばからアレだし」


〈もうウェンディゴが可哀想になってきた〉

〈ズルいのはトップ勢全員なんだよなぁ〉

〈オマケ(トップ勢基準)〉

〈スズランちゃん普通にそのへんの圏外組アタッカーより火力出せるのはもっと知れ渡っていい〉

〈オマケなのはガチでして〉

〈スズラン横のトップ勢みんなクリティカル安定しててこわい〉


 スズランちゃんの強みは細かな動作にある。DCOの敵はAIがしっかりしているから、どこからどう打ち込むかによって対応も変えてくる。つまりフェイントをかけやすいということだ。

 上段に構えて踏み込めば、敵はそれを防ごうと上に意識が向く。これを囮にして中段の左横薙ぎに切り替えると、ちゃんとそちら側に意識が集中するのだ。それも、少し反応が遅れる形で。

 スズランちゃんはそこでわざとそのまま、しかも軸をブレさせながら斬りかかった。当然ながらブレのある攻撃を受ければそれが受ける側にも伝わるし……二段構えの囮は敵の反応速度を削り取って、私のいるほう、ウェンディゴにとっての左半身ががら空きになるのだ。

 この状態だとクリティカル、つまり急所に当てるのがとても簡単になる。それこそ、トップ勢なら安定して命中させられるくらいには。


 ……まあ、まだ第一ゲージだからね。最初のうちは比較的おとなしいし、まだ完封に近い動きができる。必ずしも初見でそうなれとは言わないけど、何度も挑戦してなおそれが難しいようだったらまだ適正レベルに届いていないということだ。

 何もトップ勢の感覚乖離というわけではない。DCOの場合はそのくらい、同じボスでも攻略中の難易度変化が激しいということである。




「第二ゲージ来るで、気ぃつけや!」

「さあ何が来るかな……っと!?」

「なるほどね!? 回避最優先で!」

「ほんとに直前の直前まで気配しませんねこれ!」


〈ゲージ攻撃だ!〉

〈ボスの必殺技待ってました!〉

〈どうせ防がれるから何が出るか自体を楽しむ常連たち〉

〈慣れって怖い……〉

〈なんで普通に避けてるんだアレ〉

〈やっぱバケモン軍団すぎる〉


 その始まりともいえるゲージ攻撃は、その凶悪性から全力で被害を最小限にしなければならないものといえる。もちろん理想は全回避なんだけど……今回のそれは、そもそも避け切るか大損害かの両極端なものだった。

 不意にウェンディゴが消えたかと思えば、次に現れたのは最前列にいたセージさんの真後ろ。そのまま首目掛けて刃が振るわれかけて、セージさんは間一髪それを避け切った。

 続けてスズランちゃんの真後ろに。不可視の不意打ちを繰り返してきて、避けられなければ大ダメージというのがギミックということになるのかな。


「……これに限らずだけど、今回やたら私が攻略しやすい性質になってるよね」

「だよね、ルヴィアが得意なのばっかり!」

「取らせたがるほうだと楽だよなぁ」


 ……ところが、これは私にとっては簡単になってしまうギミックだ。私に限らず、このパーティの後衛全員を占める精霊にとっては。

 なにしろ、これは魔力覚に引っかかる。だから実際に現れたその瞬間、精霊は振り返って見る必要すらなく即座に把握できてしまうのだ。ほんの一刹那分のアドバンテージでしかないけど、その一刹那があればだいぶ楽になる。

 とはいえ全員精霊パーティなんてものはもちろん無理があるんだけど……精霊ではない二人がしっかり避けたことで、早々に危険は事実上去ってしまった。あとはしっかり魔力覚を使うだけだ。


 物理耐性に対する《魔撃》といい、私にとっては特異的にやりやすいギミックだった。……実はDCO、特にダンジョンや唯装のような個人を意識した攻略のときは二つのパターンがある。その対象者が露骨にやりづらいよう対策を張るか、やりやすいよう接待するかだ。

 それぞれにどんな意図があるかまでは一概に言い切れないところなんだけど……ともかく、どうやら今回は後者だったらしい。それならありがたく、このまま攻略させてもらおう。

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『Dual Chronicle Online 〜幻双界巡りの物語帳〜』

身内による本作別視点です。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
試練型と待ち人型とでも言うべきだろうか…… 前者の代表例はアイリウスのとこになるのかな、 あの子多分自分がヤバい存在なの認識して封じ込める方向性でなんかしてた気がするし…… というかそういえば今回おと…
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