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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.2.0 武士道とゲーマー魂の相乗効果
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461.「薄明から出てくるな」:厄介な魔物への皮肉を込めた賛辞(DCOwiki内、語録辞典より抜粋)

 睨疚の解放が済んで、少し余裕ができた。しばらくは睨疚勢の協力も受けつつそこを前線防衛としつつ、背後の伊豆半島を固める流れになるようだ。ただこのあたり、紗那さんは旗印として行脚する姿勢を見せた一方で、火刈さんは睨疚に残って支度を進めるという別行動になっていた。

 このように攻略の強度は比較的低めになりそうなこともあって、私はこのあたりで他のタスクを回収していくことにした。紗那さんは都を傍に置いておくことにしたらしい。


「いきなり歯応えのある攻略があったこともあって、いろいろなものを放置していまして」


〈せやな〉

〈まる一週間かかったもんな〉

〈やっぱV1より攻略速度はゆっくりになるんやなって〉

〈前が早すぎたというかね〉

〈雑多にやるの初日以来か〉


 バージョン2開幕から二日目にさっそく出発して以来、ずっと前線付近を動いていたけど、そこから睨疚解放までは八日間かかっている。これはバージョン1で順調にいったどの街よりも長い。途中に特異的なレベリングが挟まったとはいえ、やはり攻略の速度は下がる傾向にあるのだろう。

 というわけで、今日は初日に少しやっていたことの一週間越しの回収をしていく。




 まずはここから。


「遅くなってごめんね」

「ぜんぜん大丈夫だよ。試作品はあれこれつけてもらってたし」

「感想としてはどうだった?」

「性能面では、やっぱりアクセサリーとしては強めにできていると思う。種族縛りの恩恵は大きそうだし、縛りをつけることの恩恵は大きそう」


 メイカーズ工芸館だ。実はときどき王都まで戻ってきて、そのたびに羽飾りとベルトの試作品を付け替えていた。といっても尻尾もなく金属バックルもつけられない私はベルトのほうはオマケで、メインは魔力飛行用の羽飾りだ。

 これまでもステータス制限という形で装備者に縛りを課す代わりに、性能を上げることができるシステムはあった。どうやら自然と種族制限が発生する装備は自動的にその補正は入るようになっているらしい。

 ……というのは、実のところカタログスペック時点でわかっていたことではある。使用感で再確認はしたけど、その点ではもうひとつ気にすべきところはあった。


「ただ、着用感は……片翅にだけつけるには、これでも気になるかな。どうしても飛行感覚に出てくる」

「うーん、そっかぁ……けっこう小さくしたんだけどなぁ」

「当座は両翅につけるタイプにすればよさそうだけど、デザイン的には挑戦が続くわね。コレでダメとなると、《魔力飛行》は相当デリケートなのねぇ……」

「……その言い方だと、《随意飛行》は大丈夫だったの?」

「そうだったんだよね。これより一回り大きいのでも、ほとんど影響が出てなかった」


〈お?〉

〈これで違和感出るんだ〉

〈相当軽そうだけど……〉

〈二種で違うのか〉

〈そりゃ大変だ〉


 着用感という点では、小さなカフをつけているだけとはとても思えないような違和感があったのだ。普段と全く同じ感覚だと少しだけ方向もズレてしまうような、操作に影響するものが。

 両翅に同じものをつければ、少しだけ重くなるとはいえまっすぐにはなる。ただ左右差が出てしまうのはまずいから、当面は片翅だけの飾りは避けた方がよさそうだった。本当にごく軽いものなんだけど、どうやらここはずいぶん敏感らしい。

 しかも聞くに、翼人や竜人の随意飛行の場合はそのような影響は出ていないのだとか。実体を持って体を支える翼と、魔力の制御器官ともいえる翅ではそうまで違うか。


「なんというか……コントローラーのLボタンにだけシールが貼られてるような感じ」

「あー……ちょっと嫌なやつだ」

「魔力飛行は、速いと特に精密操作って話だものね。とりあえずしばらく使ってもらえるのは、両翅型で用意しておいたから安心してちょうだい」


 さておき、両翅につけるタイプのカフ型翅飾りと、着用中の《狭間の瞬き》に合う金属不使用の革ベルトを受け取って装備した。しばらくはこれでやっていくことになる。

 離れていてもひとつの装備品として扱える製作技術は、もとはライバー組の再現衣装のために開発されたものだ。……両翅でも違和感は多少出るけど、これは慣れでどうにかなりそうだった。






 工芸館の次は自分のダンジョンへ。sperから受け取ってあるデザインを読み込んでおいて……発注はせずに待機状態に。インターバル期間を経てようやく街の復興ができてきてギルドハウスに着手された段階だから、まだまだ大工は大忙しなのだ。


「どっちにしろハウジングはいくらお金があっても足りないですし、仮に大工が暇でも即発注するかは微妙ですけどね」

「今の残高だと……最小限なら建つには建つけど、内装とかは無理なの」

「というのも、立地が立地なものですから。増築前の第一段階の時点で、他のところよりもだいぶ大きくて高いんですよね」


〈あー〉

〈まあここでこじんまりしたら格好つかないもんな……〉

〈やっぱハウジングたけーな〉

〈富豪の遊びよね〉


 観光用の物価に合わせて相対的に日本円の価値に直したら、私のエル資産は一等地に豪邸が建つくらいにはなっているんだけど……そもそもハウジングはプレイヤー強化にはあまり繋がらないオマケの余興だからか、かなり相場が高くなっている。ギルドハウスの値段と比べると一目瞭然で、同じ建物カテゴリとは思えない。

 その上で少なくとも見た目は本当にだだっ広い《薄明と虹霓の地》マスタールームだから、建物も大きく建てるしかない。第一段階の完成すら当分先になるのも当然のことだった。




 悪いけどフレンドの溜まり場的な薄明ハウジングもまだまだ我慢してもらって、そのままダンジョンマスターメニューから管理に移る。

 例によって《荒れ果てた神宮》は私が手を出すほど大きな変化は起こす必要のない場所だから飛ばして、《薄明》から手をつける。といっても、ここ最近は新しい高難度ダンジョンも手を出しづらい新Mobも少ないから、手を加える量はさほど多くない。


「《薄明》がDCO博物館たる所以は、再解放待ちダンジョンの新種を希少性を保ちつつ会えるようにする役割ですからね。新種といっても、ダンジョンではなくフィールド産なら取り込む必要はありません」

「むしろ、出さなくてよくなった魔物を減らす作業のほうが多いの」


〈バージョンアップ直後だしな〉

〈このタイミングで新ダンジョンはなかなかないよなぁ〉

〈マップは広がったしもう少ししたら増え始めそう〉

〈この操作してるときの上位存在感すき〉


 数える程度には新ダンジョンが出ているようだけど、今回対象になった新種は二種類だけ。一方で圏外レベル引き上げもあって、大幅にレベルが上がって新たな魔物を導入したダンジョンは多い。

 他のダンジョンマスターが取り入れたことでウチで出す必要がなくなった魔物は、順次出現を止めていく。……RuviPediaのオーダーリスト、本当に便利だ。助かっている、あれ一応非公式wikiだけど。


「出現種類数がけっこう減っているので、一点狙いは今が狙い目ですよ。ここにしては各々の出現率が高くなっています、薄明フェスですね」

「とか言いながら難易度はまた上がってるの」


〈ソシャゲガチャかな?〉

〈まあ確かに狙いやすくはなってる〉

〈排出停止になったやつらの方が会いやすくなってるんだよなぁ〉

〈厄介なやつばっかり残ってね?〉


 まあ、そう。ここから出現しなくなったということは、他のクリアさせる気があるダンジョンで一般敵として出せるようになったということだ。レベルさえ追いつけばダンジョンの難易度を上げすぎない魔物ばかり減っていって、《薄明》には自然と対処の難しい難敵が残る。

 蠱毒のようになっているし、実は《薄明》には何種か居座っている古株がいる。普通に置いておくだけで強いせいで、なかなか引き取ってもらえない子たちが自然と出てきてしまうのだ。まあ仕方ないんだけど、私としてはそういう子たちの扱いは難しいところだった。道の真ん中に湧かせてガンガン戦わせるべきか、端っこに置いて戦いたい人以外は避けられるようにすべきか判断しかねることがあって。


 そうこうしているうちに配置が終わったら、あとは全体のレベルをトップ勢に合わせて上げれば完了だ。もちろんテストプレイはしていないけど、それは半ば意図的なものでもあった。

 だって、どうせトップ勢しか来ないし。トップ勢があれこれ試行錯誤すればなんとかなる、のような難易度にする場合、私のソロテストプレイで全部クリアできる調整ではどうやら足りないようだし。




 あとは《落花繽紛桜怪道》だ。ここはジムのひとつだから、前線が進むごとにレベルを上げていく必要がある。ちょうど今やったように。

 芳乃ちゃんは留守だったから、とりあえずメモを残しておく。彼女も積極的にあちこち動けているようで何よりだ。


「レベル帯は……80と。一応私の魔物図鑑を更新しておくけど……」

「ちょうどいい塩梅のところに植物系はいないの」

「適正レベルが110くらいになったら、《白い花》を入れてみてもいいとは思ってるけどね。まだまだ先」

「《異界に通じる暗路》、やっぱり行くタイミング間違ってたの」


〈ヒェッ〉

〈なんてこと考えやがる……!?〉

〈後生ですからお考え直しを……〉

〈110レベっていつになるんだ〉

〈それを倒せてたトップ勢よ〉


 《暗路》は本当に容赦なかったからね。とはいえあれはプレイヤーより20以上も高かったレベルもあってのことだから、レベルで追いついてからなら「ちょっと厄介なギミックMob」で済むと思うんだ。

 このままのペースなら、二~三ヶ月ほど先になるかな。そのときには一度試してみたいと思っていて。自分たちがどのくらい言い逃れできなくなっているかも、わかりやすくなりそうだし。

 類語:「暗路以外に出るな」

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『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


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