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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.2.0 武士道とゲーマー魂の相乗効果
450/476

442.『一般層を楽しませる』『トップ勢も満足させる』「両方」やらなくっちゃあならないってのが「運営」のつらいところだな

 まだある。


「まだあるの?」

「さすが整数バージョン……」

「バージョン2.0っぽいものの登場です。過去のストーリーイベントを追体験する機能が出ます」


〈お!?〉

〈そう! それ欲しかったんだ!!〉

〈マジナイス運営〉


 《追憶》イベントサーバーだ。これまでの《メインストーリー》カテゴリに分類されたイベントたちが後から遊べるようになる。私たちのような最序盤からずっと攻略に参加しているプレイヤー以外にとっては、これも待望の機能だろう。

 だいたいRPGのストーリーモードみたいな感覚で、だいたい街ひとつ分単位に分けられて各街にあるポイントから体験可能になる。探索やお使いクエストから、防衛戦やダンジョン攻略、ボス戦に至るまでひととおり追体験可能だ。

 ただしいつでも中止可能で、本来の世界に戻ってくることができる。クリアマークと報酬を獲得するには一定以上の貢献をした上で、クリアまでその追憶サーバーにいる必要があるけど。


 《追憶:○○》への参加は個人から可能で、同時期に同じものに参加したプレイヤーと局面を共有できる。示し合わせればレイドどころかユニオンでのプレイも不可能ではない。

 一方で参加者が足りない場合は、足りない分だけ実際の攻略時を元にしたダミープレイヤーが生成される。


「それ、攻略組は自分のダミーが知らないところでたくさん作られるってことでは?」

「一部を除いて、人格的な個性は不名誉にならない範囲でランダムに再設定されるらしいよ。能力面はモデルがわかるそうだけど」

「一部を除いて」

「トップ勢はそういうの慣れてるから」


〈お嬢はどれに行ってもしれっといそう〉

〈トップ勢はもはやゲーム自体の顔要素ですらあるもんな〉

〈まして公式プレイヤーなら〉

〈*運営:公式プレイヤー以外については、《超越者》認定者に追憶登場可否のアンケートを送っています。ご確認を〉

〈超越者判定公認されてて草〉

〈桜怪道のアレも再現されるんかな……〉


 参加条件としては『自力でその街に到達すること』と、『各街に設定された規定プレイヤーレベル』のふたつだ。同じことをしているプレイヤー同士で共有されることもあって、ちゃんと実力不足で紛れ込んで足を引っ張ったりはしないようになっている。もちろん迷惑行為や犯罪(レッド)への対応も普段と同じ。

 また、レベルが高すぎる状態で無双して他のプレイヤーの邪魔をしたりもできないように、レベルシンク(一時的レベル下方調整)は強制で行われる。一応、ステータスは「そのレベル当時のもの」と「今のステータスをそのレベルまで下げたもの」から選択可能だ。


 全体的に、当時と近い温度感で実際の攻略を体験できるモードだね。スタンドアローン化ではなく、MMOとしてやることができる。


「で、これにはしっかり報酬があります。……当時実際に配られたものと、大半が同じです」

「おお、それは美味しいですね!」

「わたしたち的には、配信の内容としてもおもしろいかも……」

「今のマギにゃたちには簡単すぎるし、前線に追いついてやった方が面白いから安心して」

「それあんしんできる?」

「実際、一度圏外まで追いついたプレイヤーは格段に上手くなるからね。追憶はレベルシンク込みでも簡単に感じるかも」

「あとは、レベルシンクで古い追憶に潜ったときは経験値は渋くなるよね。これは仕方ないけど」


〈迷うなそれ……〉

〈面白そうだけど、それやってる間にも前線は進むよなぁ〉

〈ここにいるのはもう圏外組だし、リアルタイムをやった方が盛り上がりそう〉

〈そっか経験値渋いから古いのやるとどうしても置いてかれるのか〉


 大半と言ったのは、ダンジョンコアやダンジョンチップのような性質上数に限りがあったり後から再入手不可と認識されているものは手に入らないから。それと住民好感度とか、双界人の記憶に残るとか、そういうのも。

 クリア称号については『追憶:○○』という形で区別されて付与される。と、このようにあちこちに、結局本筋の攻略に参加しないと手に入らないものが残されていた。順当だし、いいことだと思う。


 余談だけど、現在ではプレイヤー所有ダンジョンとなっているところについては、ダンジョンマスターにDPは入らない。これはメインストーリーに属するダンジョンとそれ以外で余計な格差を生まないためだ。

 これによって初心者向けダンジョンなどの価値が薄れる……ということはなかった。同じ場所の追憶モードは、一度クリアすると再挑戦できなくなるから。


「重要な要素としてもうひとつ。クロニクルクエストは現時点では追憶の対象外です」

「これは……後方参加でも経験値と報酬はもらってるし、重複獲得になるからかな?」

「どこからを前線参加済とするかで難しいとか?」

「あとは、ボスがたくさんいるから一度の追憶では全てを体験できない、という事情もあると思うよ。これについては実参加してた私たちですらそうだし」


 なので、クロニクルクエストのボス戦をやりたい、という人には今回は応えられず。いつかは実装されるかもしれないけどね。






 サブ要素ではあるけど、こんなのもある。


「プレイヤー個人単位でのハウジングが本格解禁されました」

「目玉要素じゃないですか!?」

「まだめちゃくちゃ大事なのが残ってましたね……」


〈でっっっか〉

〈何オマケみたいな扱いしてんねんお嬢〉

〈待ってた!!〉

〈ついに来たか……〉

〈ほんとついにMMOとして完成したって感じだな〉

〈面白くなってまいりました!〉


 ハウジング、つまりプレイヤーホームの取得とカスタマイズだね。昨今のRPGでは多くに、特にMMOにはほぼ確実に搭載されているこの機能もDCOに参戦だ。

 もっとも、このタイミングになったのは妥当だろう。なにしろ最初期はそもそもプレイヤーが行き来できる範囲が狭すぎて活かしきれないし、素材も少なくて自由度も確保できない。


「正直なところ、VRMMOのハウジングというだけでもう充分な個性なのですが……それで終わる九津堂ではありませんでした」

「というと?」

「ダンジョンのマスタールームは無条件でハウジングの対象になるの」

「おっと爆弾」

「今回全体的にボリュームゾーン向け多いなと思ったら、そんなところにトップ層向け要素が」


 レイアウト面のクリエイト要素というくくりでは、DCOにはこれまでもダンジョンマスターシステムが存在した。その延長として捉える分には、これは妥当ではあるよね。

 後方が追憶モードを堪能している間、攻略勢はハウジングで遊んでねと言わんばかり。私はクロニクルクエストのときに攻略本部にすらしたけど、マスタールームがやたらと気軽に入れる調整である点もまた伏線だったことになる。


「具体的なところは各々が後日やることになるでしょうから省略しますが、他にも特色はあって。たとえばこれ、双界人が向こうから来ることがあるそうです」

「こっちから誘わなくてもくるんだ……」

「さすがに仲のいいひとだけみたいだけどね」

「マスタールームにも?」

「マスタールームにも」


〈お宅訪問!〉

〈ほんまフッ軽〉

〈当たり前のようにそうなるよねここ〉

〈これはVRクラブハウスお役御免か?〉

〈やっぱりこのゲームのトップ層って運営のおもちゃなのでは?〉


 何をいまさら。私たちと運営さんはお互いで遊び合う関係だよ、それはずっと前から。

 クラブハウスについては、むしろ差別化が進むと思う。ハウジングはかなりオープン寄りになるということだから、特に双界人に聞かれたくない密談は心理的にしづらいし。


 あとは……一応、一人が複数のハウジングを持つこともできるらしい。といってもそれはダンジョンや種族的要素で特殊な立地に建てる場合で、一般向けハウジングエリアには一人ひとつまでだ。具体的には、私の場合は精霊界にも持つことはできる。

 まあ、実際に保有するかは別問題だ。ひとつあれば交流は問題ないし、精霊界はそもそもごく一部の人物やプレイヤーしか入れないし、何よりただでさえものすごくお金のかかるハウジングを複数持つ余裕はトップ勢にもおそらくない。ほとんどの場合、マスタールームにひとつ持つだけになると思う。


「また、これに伴って自分が入れて、かつ入ったことのあるマスタールームには転移門から直接入れるようになりました。ただしこの場合は入口前への退出とダンジョンへの挑戦は不可」

「あー……ダンジョンの入口ってかなり奥まったところのこともあるもんね。だから元々自分のダンジョンはそうやって入れたし」

「あくまで交流を円滑化する機能で、実利には繋げさせない……という、DCOではよくあるパターンだね」




 他にも細かくはまだまだあるし、「レベルキャップの開放」や「新スキル・アーツ追加」など重要なものもあるんだけど、それらは適宜ということにしよう。アーツについてはそもそも、現時点ではスキルレベル130のままだから追加習得していないし。


「ついに諸々の確認が済んだとのことで、《ローカルプラクティス》に《魔力覚》が実装されたとかありますが、これは余談として」

「いやそれ気になるんですけど」

「この場では最後、こちらは本当にオマケです」

「ここでオマケをわざわざ話すということは、配信的に意味があるということでしょうか?」

「うん、みんなも覚えておいたほうがいいよ」


 それは果たして。


「───アチーブメントの取得が、通知形式でポップアップとログに出るようになりました」

「うわ」

「…………むしろなんでこれまでそうなってなかったの?」


 それは本当にそう。

 とはいえ、これは配信的には美味しい。達成したことを明確にしてくれたり、オチを作ってくれるから。


 というわけで、一旦ここまで。この後は解散して、各自で新バージョンを動いていくことにしよう。

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『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


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