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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.1-epilogue ちょっと長いエピローグ、あるいはやることの尽きないインターバル
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419.【オフコラボ】ルヴィアさんのおうちに突撃だー!【愛兎ハヤテ/電脳ファンタジア】

「みんな、お待たせ!」

「皆さん、これが本気になった愛兎ハヤテです。本当はあと少し早く本気を出してほしかったんですけどね」


 二日連続で電ファン回なのはどうかご容赦を。最近私に寄ってくるの、そもそも電ファン比率が高いんだ。

 というのも、昨今のDCOでちょっと妙な風潮がある。おとといの双葉のときに確認されたように、最近は私の配信への新規参加者が大幅に減っているのだ。その原因は出たがる人の減少にあるんだけど、これは枯渇といってもいい。

 一方でイルマさんあたりのところにはぽつぽつ新しい人が出てきていたりもするし、配信に出ること自体に憧れがある人なんかは最近は盃同盟に入ることも多い。私のところばかり減っているのはどうやら、私のチャンネルが特別視されてしまって畏れ多く見られてしまっていることによる。……これはある種仕方ないかもしれない、そもそも公式配信者という特殊な立場だし。

 そんな中で、例外的に私へのアプローチを強めているのが電脳ファンタジアなのだ。これはひとえに、少なからぬ人数のライバーがバージョン1決戦に合わせてトップ勢入りしてきたことが理由だった。彼らはさすがに人目に怯えたりなんてしないし。


「ルヴィアさん、けっこう電ファン見てるよね……?」

「発足当初からチェックしてたよ。傘下というのもあったけど、普通に楽しんだり」

「フロルちゃんは言ってたけど、『みなみのおさななじみ』も」

「私だからね。あれは私から水波ちゃん経由で明かしたし」


〈だよね〉

〈お嬢がファンファンなのは察してた〉

〈けっこう電ファンネタに明るいし〉

〈知ってた〉

〈秒速で本人からバラしてたから〉


 今回はそれとは特に関係なく、以前約束していたハヤテちゃんとのオフコラボだ。彼女、シェアハウスに引っ越してきてから十日ほどで希望者とコラボし倒したらしい。抜け駆けからまだ二週間しか経っていないし、間に決戦も挟まっていたから毎日コラボしかしていないくらいだろう。

 それにOKが出るのが電ファンだし、ルフェちゃんとフロルちゃんは全力で後押ししていた。……それが終わらないと自分たちが私の家に上がれないから。


 私はもともと、けっこう電脳ファンタジアは見る方だった。きっかけは九鬼の傘下だったからだけど、掛け値なしにファンと自称できるくらいには見ていたつもりだ。

 言及された『みなみのおさななじみ』というのは、主にフロルちゃんの視聴者参加型にお邪魔しに行くときに使っていた名義だ。詳細は端折るけど、水波ちゃんが「ヴァンパイアハンターハンターズ200%や再戦ノアEXTREMEをやった幼馴染がいる」と話してフロルちゃんのやる気に火をつけた経緯があって、その流れで。

 水波ちゃんと紫音が幼馴染で売っていることは言うまでもないから、自動的に幼馴染ということになる私がゲーム自慢で配信者になると話が出た時点で予想されていた。隠す理由もなかったし、むしろいいアピールになると思ってバラしに行ったけど……結果としては、それよりさらに前からフロルちゃん本人は知っていたことになるか。






「おお、これが噂の」

「あんまりじっくり見ないで。本人そこにいるんだから」

『ふふ。いえ、心ゆくまでどうぞ』

「……この自己肯定感は見習いたいよね」


 結局しまえなくなってしまったアメリアのフィギュアに釘付けになるハヤテちゃんと、AR状態でむしろ見せようとしてくるアメリア。恥を晒すようでタジタジの私としては、あまり見ないでほしいところなんだけど。

 アメリアは蝶よ花よと育てられたこともあって、自己肯定感はとても高い。その上で向上心に満ちていて人当たりもいいのだから、完璧超人といわれるのも頷ける。


「まあそれはさておき」

『あら』

「よかった、さておいてくれた」

「今日はルヴィアさんに挑戦しに来たからね」


 少し残念そうなアメリアを横に置いて、ハヤテちゃんは私にゲーム勝負を挑んできた。……といっても、オンラインでできるものや大人数の方が楽しいものは後回し。

 なんだかナチュラルに今後もDCO以外でもコラボしたりハウスにお邪魔したりすることになっている気がするけど、まあいいか。いまさら推しからの認知がどうこう言うには毎日のように大学で顔を合わせているし、向こうのマーケティングが歪んだりしない限りは私としても歓迎だ。


「いまどきオンラインでマルチプレイできないゲームもなかなかないですからね。では今日じゃないといけないものはということで、アナログゲーム回です」

「ルヴィアさんはアナゲーも強いのかを確かめていく……つもりだったんだけど、たぶん確かめるまでもないね。最初のボドゲがいきなり使い古されてる」

「幼馴染でけっこう集まって、というか毎日のように来てくれてやってたからね」

「ほえぇ……いまどきフィクションでもちょっと珍しいような理想の幼馴染だぁ」

「前半は私があんまり通えてなかったことを横に置いたら、幼稚園から大学まで全部一緒だよ」


〈アナゲー!?〉

〈それでARだったのか〉

〈そら絶対強いでしょ〉

〈お嬢単体でもそもそもフィクションでしか有り得ないような属性の塊だし〉

〈お嬢にフリュルプ、類友の類義語〉

〈そのまま老後まで離れなさそう〉


 たぶん離れないと思う。春菜のことだし、私もそのつもりでいる。秋華も実は負けず劣らずだから、墓場まで三人一緒かもしれない。案外ゲーム内とはいえ別行動の多い今が一番距離がある期間かも。

 今のように玲さんもメイドもいなかった頃は、私は基本的に一人。遠巻きには守られていたのだろうけど、いわゆる鍵っ子だった。これは言われていないから邪推なんだけど、深冬と千夏は私と紫音と橙乃の近距離でのボディーガード的な側面を織り込んで引き合わされたのではとすら思っている。あの二人、幼少期から強かったし……特に同級生の深冬には何度か守ってもらったことがあった。紫音に対する千夏もそうだったらしい。


 そんな幼少期からガチガチの幼馴染たちで、昔からいろいろなゲームをして育ったのだ。デジタルゲームばかりではよくないと判断されたのかアナログゲームもたくさん用意されて、私の家でやり倒した。

 そこでの勝率は総合すればほぼ均等だったけど、それはそうして英才教育のようになった私たちの間での話。私たちにも自覚できるほど異常にハイレベルな切磋琢磨をしてきた経験は伊達ではなく、




「つ、強い……!」

「今回アナログゲームをやるって聞いてからずっと、いつ話すか見計らってたんだけどね。───私、たぶんアナログの方が強いよ」

「偏差値的にはDCOより高いんじゃない……?」


〈あのハヤテが全敗……!?〉

〈ちゃんと素直なルールのばっかりやってるのにここまでボロボロか〉

〈プロ棋士の方ですか?〉

〈ハヤテってファンボード出禁になりかけてたよね……?〉

〈かっけえこと言ってる〉

〈DCOより!?〉

〈普段見てるアレが真骨頂じゃないと???〉

〈プロの方ですか?〉


 開始から一時間半、ここまでは全勝。ボードゲーム各種からバランスゲーム、将棋やチェスにトランプまであれこれ手を出したものの、今のところ危なげもない。

 私からすれば普段の相手である幼馴染たちがいかにハイレベルかを実感する結果だけど、コメント欄は騒然としていた。というのもハヤテちゃんは電ファンがアナログゲーム主体で出している公式番組、『空騒ぎ! ファンボードパーティ』で強すぎてあわや出禁を喰らいかけていたほどの実力者だから。

 ただそのハヤテちゃん当人はというと、ややオーバーリアクションだけどさほど驚いていなかった。


「まあそんな気はしてたけどねー……年季が違いすぎるもの。挑んでおいてだけど、私べつにアナゲーはそこまで歴長くないし」

「さすがにフェアじゃないな、とは思ってたよ。私はそれこそ15年くらいやってるし」

「やっぱり喧嘩売るならデジタルかなぁ。そっちも勝算は高くないけど、フロルちゃん巻き込んで乱戦に持ち込めば」

「デジタルも10年以上やってるけど、そっちは勝てる自信まではないな。ハヤテちゃんとフロルちゃんなら互角くらいだと思ってるけど……四人ゲーの残り一枠どうしよっか」



〈言うてハヤテもいいプレイしまくってたんだよな〉

〈ボドゲ歴20年だけどハヤテに勝てる気しないぞ〉

〈やっぱりビデオゲームか〉

〈ホームグラウンドだし〉

〈*Flor ch. 月雪フロル【電脳ファンタジア】:せれなさん呼びましょ〉

〈ここにせれなwwww〉

〈ここぞとばかりに推し欲を満たそうとするな〉

〈*イシュカ/せれな:あたし!?〉

〈実際せれなレベルじゃないとついてけないとは思う〉


 フロルちゃんたちを差し置くために始まったコラボで、結論がフロルちゃんを巻き込むになるのはなんだか世知辛い気がするけど……私もゲームは大人数なほど楽しいと思う派だから否やはない。イシュカさんは呼ぶとしたらいろいろ準備が要るけど、本人が乗り気ならやってみていいと思うし。

 勝ちっぱなしというのもあれだし、やるならある程度やり合える方がいい。ハヤテちゃんの得意分野であるパーティゲームとか、フロルちゃんが伝説的な切り抜きを輩出した麻雀とか、イシュカさんが記録を持っているゲームのマルチプレイとか、いろいろやってみたいよね。


「じゃあそろそろ次! ルヴィアさん決闘者でしょ、デッキ持ってきたよ!」

「コラボキャラに申し込まれるとは光栄だね。いいよ、やろっか」


〈あっついにデュエ兄を差し置いてカード始めた!〉

〈電ファンコラボといえばTCGよ〉

〈デュエ兄のせいで4種11回ものTCGコラボをこなす電ファンを信じろ〉

〈カメラセッティングが迅速すぎるだろ、玲さんか?〉

〈アメリア様目を輝かせてて草〉

〈お嬢のデッキにセイサガコラボカード入ってるに1500ペリカ〉

〈でっけえストレージ出てきた〉

〈そうだったこの子大富豪だった〉


 総まとめのような会話はしたけど、まだまだ配信は続く。今度はカードゲーム、私たちとしてはこれもアナログゲームの一環だ。さすがにこれまでに大会に出たことはないけど……これだけゲーマーという括りで売り出すようになった今なら、暇を見つけて出てみるのもいいかもしれないね。これに限らずだけど。

 DCOをきっかけに表舞台に上がるようになって、できることもやることも飛躍的に増えた。時間に限りはあるけど、これからはいろいろやってみるのもいいかもしれないね。

 サブタイがフロルのほうに寄ってるのは別に考えるのがめんどくさかったわけじゃないです。ほんとですよ。

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『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


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