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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.1-epilogue ちょっと長いエピローグ、あるいはやることの尽きないインターバル
426/473

418.ちょうどこの少し前に本人たちが本卦還りとか言ってる

「仮に関係があるとしたら、こっちですね。《採掘》、《解体》、《採集》の素材系三銃士です」

「あ、確かに。取っておいた方がいいね」


 この三つは私はあまり触れていないけど、戦闘職のほうが習得率は高い。一応生産スキルの部類に入るけど、素材が採れるポイントまで生産職が行くことは稀だから。

 どれも基本的には名前の通りだ。《採掘》は鉱脈や洞窟などから金属資源を取り出すために必要なスキル。少し特殊な仕様として小数点以下の存在する個数で手に入ってスタックし、手持ちのうち整数部分をインゴットとして取り出すことができる。このときのインゴットの品質に、このスキルは大きな影響を及ぼす。


「私はこれだけ取っていません。なにしろ金属素材は自分で使えないので」

「それは私も同じだけど……精霊には特に恩恵がないものね」

「それに、取り出せない小数点以下がわずかとはいえインベントリを圧迫するんですよね。指摘する機会がなかったですが、ここはよくない要素です」


〈金属装備不可か〉

〈あったなそんなの〉

〈お嬢の衣装、金具とかに金属光沢あるから忘れてたわ〉

〈これだけ取ってないやつは多いと思う〉

〈魔術師は精霊じゃなくてもなかなかね〉

〈そんな仕様なん?〉

〈そもそも取り出せないのか〉

〈まあ小数点単位とか枠的には誤差だけど、基本的に0にはならんのよな〉


 一応、今も装備に使っている魔珪鉱なんかも採掘の領分だから、全く恩恵を受けていないわけではない。ただ、対象のほとんどは金属なのも事実だ。自分で使えないものを採る気にはあまりなれないという気持ちはどうしてもあるんだよね。

 もちろんそれだけではなくて、取っていない理由は多い。採掘にはSTRが必要だから、カースドソード進化後はSTR全切りの私には難しいとか。STRが低いことの現状唯一の難点として、インベントリが狭いから余計なものに枠を割きづらいとか。解体は違うけど、採集と採掘はポイントまで足を伸ばして能動的に採るから、戦闘して回るだけなら必須にならないし。

 特に金属の必要度とSTR要求のせいで、三銃士とは呼んだけど採掘だけ習得率は明確に低い。エティアちゃんもそうらしいけど、魔術師ビルドのプレイヤーは取らない方が主流だ。


 そしてそう、現状では小数点以下の単位をインベントリから取り出す手段は存在しない。実害はほぼないとはいえ、これにモヤモヤしている人は少なくなかった。


「残る解体と採集ですが、これは《解体知識》と《採集知識》という形で持っています。私は普通の探索を比較的していないので、スキルレベルは低めですが」

「たぶん圏外組のほうが平均値が高いよね、この二つ」

「そうだと思うの。トップ勢は双界人の相手みたいな採取のないことをやってることが多いの」


 これらは一定のスキルレベルを条件に窩待(むろまち)大学で変化したスキルで、しっかり知識をつけたということで習得した上位スキルにあたるらしい。使い勝手そのものに変化はない分純粋な上位互換になっていて、これがないとドロップしない素材があったり、品質にプラス補正がついたりする。

 未検証だけど、たぶんここでも習得できるんじゃないかな。採掘以外は習得しない理由がないし、その採掘は今取ってない人は取りたくないから、検証が新規勢でないとほぼ不可能なのがネックだ。


 《解体》は敵を倒した際に発生するドロップを強化するスキルで、対象は主に獣と動物系の魔物。ただし魚のような丸ごとアイテムになるものは除く。戦闘職にとっては他にも増して必須スキルだ。私も初日に取ったね。

 なおパーティでの戦闘リザルトではどうなるかというと、検証の末に「プレイヤーごとに自身のスキルレベルが参照される」と判明した。妥当というか、それが一番トラブルにならないと思う。

 あと、例外処理として汚染住民からのドロップには参照されない。倫理的な話だとは思うけど、そもそもボスを除く彼らからのドロップは髪や爪のような元に戻るものや装備品と《汚染の欠片》なる魔化石と同等のアイテムだけだったから問題はなかった。


 《採集》はこれら二つ以外の、直接フィールドに存在するものや土を掘り返すものなど全般に反応する。たとえば果実や薬草のような植物素材とか、あとは貝やキノコのようなそれ以外のものも動かなければこちらだ。ただし転がっている鉱石や石、木の枝などはスキルも何もないからか、そもそも品質が固定されていて何のスキルも乗らない。

 あとは、一部の植物系魔物素材もこちらだったりする。トレントとか、マンドラゴラとか。同様にゴーレムやガーゴイルのような無機物系魔物は採掘だったりするんだけど、これは《ゴーレムの魔鉄》や《ガーゴイルの石材》のようなワンクッション置かれた形でドロップするから私のような未習得者は素材単位で売ったり交換する。

 余談だけど、プレイヤーが育てた農作物は《農業》、木材は《伐木》という別のスキルの範囲になっている。前者はこのおかげで盗んだ野菜はほぼゴミになるという泥棒抑止効果もあったり。


「私とはどうしても無縁ですが、伐木と採掘には専門のプレイヤーもいます。ミニゲーム的でそれはそれで楽しいんだとか」

「ものが重くて戦闘職との両立が難しいのもあって、存在感を示すのも稼ぐのもこのふたつの専門は楽なの」

「伐木とも縁がないんだ。木製素材はルヴィアさんも使ってるけど」

「初期の影響でそのままね。伐木、エルフは習得不可だから」

「あー……」


 というわけで、《解体知識》と《採集知識》もアップデート。これらも一部の局所的な場面でバフがかかるパッシブアーツだった。






 あとは学問系も多めに掘り出されたけど、これらは悲しいかなスルーされた。というのも、内容的には《窩待大学》で習得できるものとだいたい一致しているのだ。しかも窩待のほうが初期スキルレベルが高い。

 漫談を楽しみつつオマケがついてくる大学と手早く済ませられる図書館、使い分けということだろうか。

 唯一気になったのは《魔術学の基礎》という本。魔術学史のパートがあって読めたんだけど、《ヒトニス》なる人物が功績の大半を占めていてとても目立っていた。以前にも名前は出てきたことはあったけど、一体何者なんだろう。魔術学会とか言っていた気がするけど、ラマヌジャンか何かだろうか?


 他もいろいろ見て回った結果、特に興味を惹いたのはこれ。


「歴史書を見つけました」

「これは気になるね」


〈おっ〉

〈やっぱりあったか歴史書〉

〈MMOの図書館にありがちなもの第一位〉

〈もうある程度聞いてはいるけど〉


 《幻双界史》。ちなみに隣に《紅葉界史》もあった。一度世界が滅ぶと歴史書そのものも切り替わるんだね、諸行無常だ。

 しかも紅葉界史のほうはほぼ知られていることしか書かれていなかった。神秘が色濃く存在し神も妖も悪魔も実在した地球に近い世界が、最終的に『神に抗し得る武力』の発生によって終末戦争へ突入していく顛末だ。具体的な名前が多数出てきて、彼らの動向が詳細に記されていたくらい。


 それよりも気になるのはやっぱり幻双界史のほうだ。見てみると……。


「創世当初、過ちを繰り返さないためのストッパーとして精霊界を創造した……ですか」

「つまり、順序が逆ってこと? 精霊界にある魔力を双界に配るんじゃなくて、もともと双界にあるべき魔力を管理するために精霊界を通してる」

「たぶん、そう。そのためにエルヴィーラさんを精霊に作り変えて、他の精霊を作らせたってあるし」

「原初精霊ってそういう……」


〈ほう?〉

〈なるほど〉

〈そっちなのか……〉

〈エルヴィーラさんは元々精霊じゃなかった?〉

〈精霊界は蛇口と〉


 確かに、そもそも世界に巡る魔力を止めてしまえば紅葉界史に記述があった大抵の破界兵器は機能停止する。精霊界はその元栓を締める役割のほうを期待して作られたわけだ。

 そこの責任者となるととてつもなく重い役目だと思うけど……紅葉界史には一度も名前が出てこなかったエルヴィーラさんを見出して、永遠に精霊として任せた経緯にはいったいどんなことがあったんだろう。いざ疑問になることほど、全体を辿る歴史書には書いてないものである。




「それにしても、けっこう頻繁に小さくない動乱がありますね。民への被害が最小限に抑えられているあたりはさすがですが……」

「双界人の物言いだと、幻双界が生まれてからのここ1000年は世界を揺るがすほどの事件は起きていない、みたいな言い草だったけど……」

「そんなもんなの。誰だって聞かれてもないのに自分たちの不手際を話したりしないの」

「まあ、それはそうか」


 そう、意外と幻双界にもちゃんと事件や戦いはあった。だいたい50から200年おきに、有力者どうしの争乱が起こっている。それでも地球よりは遥かに平和で、また今回の汚染異変が桁違いに過去最悪の被害を出していることは確かだけど。

 ただ、それは確かにアイリウスの言う通り。私たちが聞いたことがなかったのだから、こんなことは隠す気がなくともわざわざ話さない。そもそも何かが繋がったりしない限りは、別に確認する必要もないことだろう。


「あとは、《サナ》の発生はかなり最近なんだね。それこそ紗那さんと夜霧さんが出てきてからじゃないと載ってない」

「そこはなんとなく予想できてたよ。概念にサナと名前がついている以上、紗那さんが代表例になっているはず。つまり彼女が生まれる前に概念が定着するほど発生はしてないはずだったから」

「確かに……じゃあ、けっこう最近になってこの世界は激変しているといっていいのかな」

「そうだね。具体的には、ここ60年から100年弱くらい」


〈それ〉

〈サナってめちゃくちゃ新しい概念なんだな〉

〈明らかにもっと長生きしてるサナもいるし、後天的になるものなのか?〉

〈え〉

〈60!?〉

〈あの見た目と性格で!?!?〉


 急激に動き出すコメント欄だけど、見た目通りの年齢なわけがないからね。思い出してみてほしい、掲見のマオミィさん、52歳だからね。見た目通りそのままであるアメリアやプリムさんとエヴァさんはレアケースだ。


 と、そんな感じだった。何度も起こっている幻双界内の大事件は幻双界史には詳細までは書いてなかったけど、わざわざひとつひとつを読みに行くほど気になっているわけではないからいいや。

 ひとつ気になったとすれば、《幻双界史》に大きな扱いで載っていた事件のうち、ひとつだけ単体で扱った本が見当たらなかったこと。他にもまだ読めない事件はいくつもあったけど、それらは読めない本が表紙だけとはいえ用意されていた。

 何かが隠されている、のだろうか。数ヶ月ぶりに開いたその日の図書館から? それとも元々?

 タイトルは先週の異世界剣客です。

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『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


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