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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.1.3 魔物も妖怪もいる世界でハロウィンをやったら
251/473

243.両手に花だと剣を持てない

 ある程度紹介したのと、見ていたプレイヤーたちが押し寄せそうだったから逃げ出すことにした。人の波に揉まれるのって、体力使うんだよね。


「まだ呼び出しがないようなら、近くの防衛を……」

「ううん、ルヴィア。連絡なの」


 ちょうど手持ち無沙汰になるところだったけど、いいタイミングで進展があったようだ。さっそく内容を見てみると……。


「あ、ダンジョン攻略付きの招待状クエストが始まったみたいです」

「あ、いよいよですか!」

「腕が鳴るです」

「ちょうどうずうずしてたの!」

「では早速向かいましょうか」


〈おお!〉

〈とんでもねえ、待ってたんだ〉

〈戦闘タイムだ〉

〈漫談もいいけどやっぱバトルがなきゃな!〉


 高難度要素の招待状お届けクエストが始まるようで、夜津さんから呼び出しだった。いよいよ腕の見せどころだ。

 実際にどんなダンジョンなのかは見てみないとわからないから、まずは確認だ。さっそく夜津さんのところに……。


 …………いま何かおかしくなかった?


「えっアメリアさん来るんですか」

「もちろん。これも祭事の一環なのでしょう?」

「違いますよ?」


〈草〉

〈当たり前のように〉

〈そういやこいつセレスの主人だったわ〉


 なんか覚えのある流れだと思ったら、それだ。セレスさんが似たようなことをしていたことがある。さもそれ以外の選択肢がないかのような流れで攻略についてこようとするやつ。

 しかも今日のアメリアさん、「ハロウィンを学んで自国に持ち帰るため」という大義名分があるからいつもより強い。ダンジョンについてくるのはハロウィンとか関係ないけど。


「ふふ、いいではありませんか。来訪者の皆様にとっては、これも催しの一環のような扱いなのでしょう?」

「ルヴィアさん、この王女様手強いですよ。なんかゲームシステムのたぐいに若干の理解があります」

「断りづらいところ攻めてきましたねぇ……」


 それは禁じ手だと思うんだけど、アメリアさんに躊躇はなさそうだ。こちらがなるべくゲーム用語やシステム系の言葉を減らしているのに、向こうは普通にきわどいところまで攻めてくる。

 確かに「召喚に伴う現象や異世界の文化」で済むからそれでもいんだけど、未だにどこまで攻めていいのか測りかねている私たちが馬鹿らしくなってくる。なんて恐ろしい王女様。


 ここでアメリアさんの指摘を肯定したら連れていくのが基本線になるし、否定したら私たちがなぜいつも精力的に攻略しているのかが説明できなくなる。つまり詰んでいる。

 結果として、私たちはやんごとないスーパーヒーラーをパーティに加えることになった。




 で、夜津さんに聞いてきた内容がこんな感じ。


 招待状の対象には様々な人物がいるけど、大きく三つに分けられる。普通に行ける場所にいて、そこに届けるだけのお使い型、元ボスや《迷守》のようにクリア済ダンジョンにいてそこを踏破するダンジョン型、そして結界の張られた未踏破ダンジョンにいるところを迎えに行く必要がある結界型。

 このうちお使い型は簡単だから一般向けのクエストとしてばら撒いて、ダンジョン型はそのダンジョンの難易度に見合ったクエストにする。……なんと武神様や芳乃ちゃんもこの対象だけど、ダンジョンマスターは総じて高レベルだから主人自ら迎えに行くことはないらしい。中堅層は人手が余り気味なのだ。


 で、私たちが関わるのは最後の結界型。全部で8つある高難度クエストになっていて、数奇なものでそれぞれ属性の要素が強いダンジョンになっているようだ。

 この結界型のクエストは準備ができ次第順次発令されるから、それらを夜までに全てクリアするのが私たちの役目というわけだ。


「今はさっそく二つのクエストが発表されました。それがこの二つですね」





○四方の海底結界

 四方浜湾の管理を担う水葵は本来、海辺にある自身の家で招待状を受け取るはずだった。しかし先日、海底に設置された対魔結界の点検に向かってから数日間帰ってきていない。結界内に向かって何が起こったのかを確認し、招待ついでに正常化と脱出を手伝おう


○雷鳴峠

 シュピーグ北方にある山脈の一角には、雷鳴峠と呼ばれる常に帯電した山道がある。ここを根城にする精霊・ラインは綾鳴から盟約を破った来訪者への誅罰を命じられているが、その任を果たす時以外は滅多に山を降りてこない。そんな彼女だが、夜津にとっては大切な友人の一人であるようだ。人類圏ぎりぎりの雷鳴峠に赴き、招待状を手渡そう





 なんでだろうね、知り合いがいる。


「水葵さん、だんだん扱いが雑になってきてません?」

「二ヶ月前は単騎の大ボスだったのに……」

「ルヴィアを食材として見た頃あたりから雲行きは怪しかったの」


〈新キャラじゃなかったのか?〉

〈両方判明済キャラだが〉

〈もう片方もwikiにあるぞ〉


 まあ、前回の釣りの獲物と比べれば昇格しているかもしれない。いいのかそれで。……いや、またボスになられても困るんだけどさ。


 ちなみにもう片方のラインという人物は、いわゆる対レッドのお仕置きキャラの一人だ。主に夜界北方でPKが発生した時に光の速さで現れて、雷で黒焦げにして監獄送りにする黄色い翼人のような少女。おそらくモチーフはネイティブ・アメリカンの伝承にある《サンダーバード》だろう。

 貴重な無事な有力精霊ということで、私も触れておきたいと思ったことのある相手なんだけど、これまではお仕置き時に現れてすぐに帰っていくから接触不能だった。ここで本格登場となるなら、遅くともイベント後にはお話できるだろうか。




「どちらに行くです?」

「それなんだけど……今回のダンジョンは、それぞれ属性強化の性質があるようです」

「ええ。高難度ダンジョンであるほど頻出する、定番の特殊な性質ですね。属性一致の攻撃が強化されたり、属性相性の効果が大きくなったりします」


 属性強化は細部こそ違えど、様々なゲームで存在する定番の要素だ。《DCO》では弱点相性が1.3倍、属性一致補正が1.1倍になっているんだけど、この倍率に作用して数値が大きくなる。

 詳しい補正後倍率は実際に行ってみないとわからないけど、そこまでは気にしなくていい。「指定属性に有利な属性か、または一致する属性が強くなる」と覚えておけば問題ないだろう。


 今回なら、《四方の海底結界》は水属性だから水か風、《雷鳴峠》は雷属性だから雷か土だ。


「これを見ている攻略勢はぜひそこを参考にしてみてください、というわけで、皆さんお気づきかと思いますが私にはこれ関係ありません」

「ですよね。幻だし、虹だし」

「わたしはそういう性質なの!」

「なので、スズランちゃんが風属性という点を考慮して《四方の海底結界》へ向かおうと思います」

「わ。ありがとうございます、ルヴィアさん」


〈不意打ち〉

〈スズランちゃんあんまりそうなると思ってなかったな〉

〈油断しておる〉

〈お嬢そういうとこあるぞ〉


 お礼を言われるほどのことではないと思うんだけどね。私一人では決めようがないから、同行者のことを考えて……。


「でも嘘ですね。たぶん水葵さんが気になるだけです」

「おお、スズランはルヴィアのことよくわかってるの」

「少し考えればわかりますよ。アズキはサブ土ですもん」


 あ、そこから?

 確かにそうで、私はどちらに向かうこともできた。この二択の場合、スズランちゃんとアズキちゃんの取るべき択が違うから。


「では、わたしは向こうに行ってくるです」

「いってらっしゃーい。闇属性のクエが出たらルヴィアさんに着いて行かせるからねー」

「話が円滑すぎて楽……どころか私の行動指針まで固定されましたね今」


〈配信よくわかってるヴァンパイアーズ〉

〈お嬢より判断が早い〉

〈お嬢、このままだと主導権奪われるぞ〉

〈アズキたそ迷いすらしないのな〉


 いやまあ、確かにそうするつもりではあったけど。この二人に限った話ではないとはいえ、話が早すぎて怖いねなんか。私に近しい人たち、もはや全員一人で配信できたりするのでは?








 しばらく後、《四方浜》郊外の海岸付近。二ヶ月前に決戦が行われた砂浜にて。


「まずは残り三人のパーティメンバーを」

「集めておいたよ」

「イルマさんは向こうでしょうが!!」


〈草〉

〈スズランちゃんブチギレ〉

〈あのさあ?〉

〈あいつ配信でこの下準備延々と垂れ流してたぞ〉

〈配信やってる癖に主役になりたがらないのなんなん?〉


 もはや考えるどころか言う前に話がまとまっていた。あまりにもおあつらえ向きな一団が待っていたのだ。

 しかし主犯とおぼしきイルマさんはスズランちゃんに怒られていた。私にはまず向けられない剣幕が元の雇い主を襲う。……無理もない、イルマさんのサブウェポンは《雷魔術》だ。


「あとチカさん土属性だよね」

「そうだよ?」

「二人ともさっさと行ってください!」

「そんな、手伝ってあげたのにその言い草はないじゃないか」

「こんな明らかにイルマさんが集めなくても寄ってきていた面子でよく言えますね!?」


〈それ〉

〈ド正論〉

〈マジでそれで笑う〉

〈そういう顔ぶれなんだよな〉


 ちなみに集められていたのはイシュカさんとゲンゴロウさん、そしてジュンくんだった。誰とでも組める幻属性の雑タンクと、このダンジョンで有効な《風魔術》と《水魔術》それぞれのトップである。

 特に前者の二人は確実に単独でも私に突撃してきていたような顔をしているし、なんともいえない様子のジュンくんもイシュカさんに肩を組まれて捕まっている。……強く生きてね。


「というわけだから、任せてくれ」

「バッチリ援護したげるから、どーんと頼っておきなさい」

「はい。共に頑張りましょう」

「釈然としない……!」

「諦めも肝心だよ、スズランちゃん」


〈お嬢……〉

〈達観してやがる〉

〈真っ先にアメリア様が順応してるのが一番おもろい〉

〈スズランちゃん……〉


 ちなみに風属性ヒーラー精霊であるところのユナはというと、火属性で参加しづらいベルさんに代わってブランさんのもとにいた。現時点であの形でまとまっているということは、おそらくクラフター取材の段階でアメリアさんがついてくると予知していたのだろう。

 そして代わりにイルマさんについて行くようで、去り際にサムズアップしてくるベルさん。うるさいよ?

 250話記念(ただし話数番は挿入などでズレる場合があります)ということで(?)、男もすなる質問コーナーといふものを、作者もしてみむとてするなり。

 感想や専用の活動報告へのコメント(更新に前後して設置します)に、以前から気になっていたことなど作内外問わずぜひ質問をください。あとがきを中心にお答えするコーナーを作ってみたいと思っています。それだけ集まるかはわかりません。集まったらいいな。

 断じてあとがきのネタ作りではありません。はい。

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『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


小説家になろう 勝手にランキング

― 新着の感想 ―
[気になる点] 質問 ・現状トッププレイヤーが持っている唯装ですが、今後生産職向けの唯装が開発されることはあるんでしょうか。それとも装備強化システムで対応していく形なのでしょうか。 ・ルヴィアの影が…
[良い点]  男もすなる質問コーナーといふものを、作者もしてみむとてするなり。  作者は女性かと一瞬思わせておいて、よくよく考えると元ネタは男性だったので、性別がバレそうでバレない素晴らしい言い回しだ…
2022/09/16 07:12 アーカイブの視聴者
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