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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.1.2 枯れた世界に魔の華を

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163.これアーツボールと考案者同じなんだぜ

 翌日、9月17日の火曜日。


「まず最初にご連絡。来週の火曜日、24日からは大学の秋学期が始まります。配信時間は大きく減りますので、ご理解ください」


〈OK〉

〈りょーかい〉

〈そういや学校との両立初めてか〉


 そうなるね。ベータテストは自由登校期間と春休みに重なっていたし、正式サービスは綺麗に夏休みと被っていた。春学期はDCOの方が準備期間だった。

 だけどいよいよ夏休みも残り一週間となって、大学生活との両立を始める時期が見えてきた。……まあ、問題はないだろう。春学期も余裕はかなりあったし。


「前置き終わり。本編へいきましょうか」






 さっそく今日も攻略……といきたいところなんだけど、今日はそういうわけにもいかない。


「昨日から《バージョン1.2》が始まっているんですけど、私は昨日一日を精霊関連に費やしてしまいました。なので、遅ればせながら今日はまず新要素をおさらいしていきましょう」


〈お〉

〈いろいろ変わったもんな〉

〈助かる〉

〈まだ知らないから早く教えてくれ〉

〈お嬢が教えてくれなきゃ困るんだ〉


「いやほんと、そろそろ自分たちで調べる振りくらいはしてくださいよ」


 ひとつめ。サーバー無制限解放が行われた。これによってプレイヤーの数は一気に増えて、とりあえず15万人以上いるということになっている。

 ただ、現時点で参入しているプレイヤーはチャレンジャーか新しもの好きが大半だ。というのも、そもそもVRゲーム自体が往年の家庭用ゲーム機ほどの普及を見せていないから。

 一般にはまだ「VRダイブゲームはゲーマーたちのもの」という認識が根強い。そのうち氷解するものだとは思うけど、今は待つばかりだ。


「そして、これに伴うバランス調整。一部初心者向けフィールドの難易度や分布帯が調整されました」


 具体的には、本当に全くの初心者が行きやすいフィールドの面積が増えた。ただ、このあたりは私の配信で深く触れる必要はないかな。






「ふたつめ。これも目玉ですね。転移門システムが更新されました」


〈転移門が?〉

〈いい変更よな〉

〈2陣だけど恩恵めっちゃある〉


「具体的には、行ったことのない街でも転移門が起動されていれば行けるようになりました」


 これまでは自分の足で訪れたことのある街にしか転移できない、RPGでよく見る仕様だった。この仕様は使い古されていることもあって、さしたる問題点はないんだけど……もちろん、変えるからには理由がある。

 変更後はどうなったかというと、全員が全ての街を転移先に選べるようになった。もっとも、もちろん制限は別の形で存在するんだけど。


「ただし。外から自分で入ったことのない街は、門から外に出られません。自由に動けるのは街の中だけですね」


〈なるほど〉

〈なら自力で行かないと意味ないか〉

〈これどういう意味があるんだ?〉

〈生産職とかか〉


「裏で話を聞いてきたところ、この変更には二つの狙いがあるそうです」


 まずひとつめに、コメント欄にも指摘する人がいたけど、生産職の自由度の上昇。現時点では、特に《鍛冶》と《細工》だね。

 街の中でなら自由に動けるから、商売にも仕入れにもかなり行動がしやすくなった。しかも、《如良》や《フィーレン》のようなクラフトに補正のある街にも行きやすい。


「具体例でいくと、リオネッタちゃんですね。彼女、昨日あっさり《如良》に行けるようになって複雑そうでした」


〈あーみくりん〉

〈そういやそんな感じの話あったな〉

〈護衛だなんだって面倒だってなったのか〉


 リオネッタちゃんは昨日の配信にて無事にエルジュちゃんへの弟子入りを果たしていた。私も今度様子を見に行こうと思っている。


「ふたつめの狙い。観光です」


〈観光?〉

〈ゲームで?〉

〈なるほど〉

〈そっか旅行が楽になるのか〉


 ゲームで観光? となる気持ちは、正直とてもよくわかる。実感わかないよね、私も運営さんに言われるまではそうだった。

 だけど、ちょっと考えてみてほしい。ほとんど現実と遜色のないVRワールドは、擬似的にとはいえ旅行だって再現できるのだ。現にVRゲームのソフトの中には、旅行の再現に特化したものもすでに存在している。


 そう考えると、VRデバイスとDCOのソフトだけでいくらでも異世界旅行ができるのはいいものなのだ。ほんの数万円で何度でも、気分は世界一周旅行。しかも時間の都合も圧倒的につけやすい。

 九津堂はこのあたりにも最初から目をつけていて、実は完全解放と同時にこの転移門システムを導入することは最初から決まっていたらしい。


「そしてこれに合わせて、通貨 《エル》は観光用に限り課金購入が可能になりました。レート、というか物価はだいたい日本円の10分の1くらいですね」


〈はえー〉

〈確かになあ〉

〈興味出てきたわ〉

〈ちゃんとゲームしなくても観光できるようになってるのか〉


 この観光客向けの商売として、《料理》や《裁縫》あたりには多少のテコ入れが入ったようだけど、そのあたりは管轄外。門外漢の私が説明するより、掲示板かwikiを見た方がわかりやすいだろう。


 ちなみに、この通貨課金は通常プレイヤーには役に立たない。というのも、これで購入したエルには用途の制限があるのだ。

 戦闘において一定以上の効果があるものは買えないようにできているから、アイテムのRMTはシステム上不可能。おまけに購入物の売却もできないし、DCOは対価なしでの振込は不可能だからマネーロンダリングも防がれていた。抜かりない。




 この二つのインパクトが大きいからか、それ以外は小粒な変更が多かった。中でも話題になっているものがいくつか。


 種族進化の追加。昨日付で実装されたのは、狐獣人とエルフだ。進化レベルは45らしい。

 唯装および想装の入手イベント発生確率増加。これは先週マナ様が言っていたことだね。……NPCAIの突発的な発言がそのままアップデート内容に入るの、普通に常識破りである。

 一部スキルの調整と追加。変更量だけなら今回一番だ。いろいろとあるけど、紹介しきれないからとりあえず割愛。

 プレイヤーショップの解禁。これまでは露店でやっていたクラフターたちだけど、ようやく店舗を構えることができるようになった。

 他には、ギルドハウス制度がしっかり整備された。これについては後ほど。


「それ以外にも細かい新要素はありますが、それはおいおい。きりがありませんからね」








 さて、次なんだけど……。


「ちょっとだけ私自身のステータスを整理します。いつも通り気になる点だけ挙げるので、適当に聞き流してください」


〈OK〉

〈恒例行事〉

〈いつものやつか〉


 確か、前回この確認をしたのは9月1日。自分ではこまめに確認していたけど、改めて整理するのは二週間ぶりだ。





虹剣の精霊・ルヴィア Lv.49


性別:女

種族:精霊

属性:幻

特殊:《魔力生命体》、《本質の精霊・虹魔剣アイリウス》、金属防具・アクセサリー装備不可、《虹の魔術(レインボースペル)》、《魔力覚》、《魔力飛行》

状態:正常


VIT:42(+0)

STR:127(+0)

AGI:400(+25)

DEX:251(+10)

INT:421(+13)

MND:400(+22)


種族スキル

戦闘:《植物魔術》Lv.90 《虹魔術》Lv.88 《精霊の唄》Lv.30

探索:《エレメンタルステップ》Lv.82 《魔力察知》Lv.80 《精霊眼》Lv.77

生活:《浄化》Lv.63 《薬草看破》Lv.37


汎用スキル

戦闘:《パリィ》Lv.86 《魔術学》Lv.81 《攻撃予測》Lv.82 《片手剣術》Lv.79 《回避》Lv.73 《治癒術》Lv.46 《威嚇》Lv.33

探索:《直感》Lv. 78 《解体》Lv.66 《罠探知》Lv.44

汎用:《生活魔術》Lv.67 《鑑定》Lv.53 《採集》Lv.47 《瞑想》Lv.28





 半月前からスキル表示はいろいろと試してみて、最終的に「種族/汎用→用途→スキルレベル」のソートに落ち着いた。私にとってはこれが一番見やすかった。


 とりあえず、ひとつずついこう。


「特殊の欄に《魔力飛行》が追記されていますね。おそらく《翼人》の実装で飛行プレイヤーが増えるからでしょう」


 足掛かり的なエクストラという前評判の通り、翼人は早くも二桁のプレイヤーが進化を果たしている。妖精こそ諦めたものの、やはり空を飛びたいプレイヤーは少なくなかったのだろう。

 それもあって、《飛行》と《魔力飛行》が明確に区別されるようになった。操作方法、速度や軌道、制限などの諸要素を見ると、全ての種族の飛行能力はこのどちらかに集約されるのだ。

 《飛行》は翼人と天使、《魔力飛行》は妖精と精霊。あとは紛らわしいところだと、《竜人》は前者で《龍人》は後者らしい。


「また、《瞑想》が汎用スキルに移行されました。全種族が使えるようになったようです」


〈お〉

〈便利スキルなんだっけ〉

〈純後衛ならかなり強いらしい〉


 前衛である私や平気で前に出て遊撃しているメイさんには関係ないけど、ユナあたりは割と重宝していたスキルだ。状況を見ながら温存で詠唱をやめればMPが回復するのだから、唱えっぱなしではないヒーラーにとっては垂涎のスキルだったそうだ。

 そういう事情もあって、このたび史上初の種族スキルの汎用化。確かに、元々べつに精霊っぽいスキルではなかったよね。




 続いて、スキルレベルに応じた習得アーツ。


「まずは《片手剣》スキルレベル70、《サイドワインダー》。横薙ぎの三連撃ですね」


〈あれかっこいいよな〉

〈動画上がってたわ〉

〈やっと片手剣にも必殺技っぽいの出た〉

〈あれ自分でやるとかっこよくならないんだよなあ〉


 まず内側から右へ切り払う形で行動遅延(ディレイ)効果強めの初撃を入れて、素早く右から左に切り戻す二の太刀。即座に切り返して、全力で左から右へ薙ぎ払う決め。

 《片手剣》に不足していた威力重視の汎用アーツだ。これの発覚と同時にやや下火だった片手剣の人気が再燃したとか。


 ちなみにDCOのアーツのシステムアシストは最低限になっている。だからこの手の技をかっこよく決めようとすると、一定のAGIとDEX、ついでにリアルDEXが必要になる。威力自体は発動さえすれば変わらないんだけどね。




「《虹魔術》は以前ご紹介しての通りです。レベル80で《ガード》系」


 ちなみに《ガード》のネーミングは惑星の英語名で揃えられている。水と火はそのままで、土が《アースガード》。氷が《ネプチューン》、雷が《ヴィーナス》、風は《ジュピター》である。あとは光が《ウラヌス》、闇は《サターン》といった具合だ。

 氷はちょっと無理やり感があるけど、他はイメージカラーまで考えれば上手くハマったものである。


「私はまだ88なので習得していませんが、ついさっきイシュカさんから連絡がありました。スキルレベル90は《ランス》だそうです」


〈!?〉

〈まーたイシュカか〉

〈*検証班:待ってそれ知らない〉

〈掲示板まだそんな話してないんだが!〉

〈あいつ配信撮れ高を優先しやがった!?〉


 うん、私も配信開始前には確認していた。まだ情報が出ていなかったから、もしかしてそろそろイシュカさんにも追いついてしまうのかな、と連絡を受けるまでは思っていたところだ。

 なんと彼女、昨晩SL90に到達したのに誰にも言わずに抱えていたらしい。もちろん、私はそんなこと頼んでいなかった。


 《水環の精霊》イシュカ、彼女は完全に私の配信の準レギュラー気取りである。……いや、歓迎なんだけども。


「効果は久々のスタンダードな遠距離火力ですね。威力は《ロア》より明確に上、消費は《エッジ》並」


〈は?〉

〈つっよ〉

〈さすがに……〉

〈いや何かデメリットあるやろ〉


 まあ、わかるよね。さすがにカタログスペックが強すぎる。九津堂はこんな露骨な調整ミスはしない。

 《ランス》系にもちゃんと弱点はある。それがクールタイムだ。DCOの魔術には、「発動から一定時間は同一魔術の発動ができない」という制限がある。

 詠唱時間そのものは並だけど、一度撃ってから再び《ランス》を撃つことができるようになるまでの時間がかなり長いらしい。


「イシュカさんが試したところによると、《ランス》のクールタイム中に《ロア》を二発撃てたそうです」


〈マジ?〉

〈そりゃ長いわ〉

〈考えること増えそうだな……〉


 《ロア》は詠唱時間が長いものの、クールタイムが詠唱時間よりも短いから連打ができる。《ランス》はちょうどこの逆ということになりそうだ。




「《植物魔術》ですが、これは私がスキルレベル90に届いています。新しい魔術は《パラサイトスプラウト》」


〈パラサイト〉

〈寄生虫?〉

〈スプラウトってなんだ〉

〈なんかエグい気配が……〉


 スプラウト(sprout)とは、植物の新芽のことだ。ブロッコリースプラウトといえば知っている人もいるんじゃないかな。

 有名どころなら、もやしや豆苗、かいわれ大根あたりが代表的……なのは日本の話だ。日本では発芽野菜を指す言葉だけど、英語では植物の芽全般を指す。


 効果はというと、わずかに強くなった《ペイン》系が近い。種を投げつけて取り付き、寄生させてスリップダメージを与える。そしてそれと同時に術者のHPが微回復する。


「早い話が、宿り木の種です。ペトラさんの杖は得意かもしれませんね」


〈想像できた〉

〈あれVRで再現って割とグロくない?〉

〈HPの1/8を吸い上げそう〉


 なんとなく既視感があるPP10のアレのように永続ではないけど、なんだかんだでそれなりに使われている《ペイン》系の強化版と考えればなかなかのスペックだ。今後はお世話になることもあるだろう。






「ではオチ担当の番です」


〈待ってた〉

〈よしきた〉

〈wktk〉


 ……もはやお笑い枠になっているけど、仕方ないよね。この2つは向こうから笑わせにきているのだ。


 まず《回避》。

 スキルレベル60、《クロス》。回避と同時に攻撃を仕掛けると、それなりに威力が上がる。サッカー用語としては、サイドからゴール前へ入れるパスのことだ。センタリングとも呼ばれる。

 スキルレベル70、《アンカー》。こちらはアクティブアーツで、発動から一定時間だけATKが下がる代わりに回避力が大幅に向上する。回避盾にとっては願ってもないスキルだね。

 ただ、


「アンカーというのは、サッカーにおいては守備を強く重視するミッドフィルダー……つまりポジションのことです。ついにそこまで手を染めたか……」


〈草〉

〈もうなんでもありやんけ〉

〈ネタ切れか?〉




 そして《パリィ》。


 スキルレベル70、《スリーパリィ》。三回連続でパリィを決めた場合、一定時間ステータスにバフがかかる。

 ……皆まで言うな。


「元ネタはスリーバントでしょうね。そちらは二回失敗してからの、後がないバントのことなのですが……」


〈いや草〉

〈真逆やんけ〉

〈語感で考えてそう〉

〈元ネタ用意に必死になってら〉

〈そこまでバントにこだわる理由なんなんだ〉


 …………最後、スキルレベル80。


「先に効果をお伝えしますね」


 一定以上の威力に対するパリィでクリティカルした時、確率で敵に短時間の行動不能(スタン)を与える。


〈…………あっ〉

〈わかった〉

〈これあれだろ〉

〈wwwww〉

〈あのさあ……〉

〈失敗してるやんけ!〉


 それでは皆様、ご唱和ください。






「ストライク! バッターアウト!!」




 《パリィ》スキルレベル80、《ノックアウト》。

 ……この場合は、三振の俗称である。

 ステータス確認の儀にもオチを用意してくれる優しい運営です。

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『Dual Chronicle Online 〜幻双界巡りの物語帳〜』

身内による本作別視点です。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


小説家になろう 勝手にランキング

― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! あぁ…確かに。今までは都合よく休みが被ってましたもんね…勉強頑張ってください!(期末テスト突入民 最新情報公開の時間だー!! 15万人の参入…と転移門のアプデですか。 な…
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