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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.1.1 たのしかった、運動会!

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155/506

150.開会宣言

「皆さんこんにちは、ルヴィアです。……今日が何の日かは、皆さんご存知ですね」


〈わこ〉

〈こんルヴィ!〉

〈いよいよか〉

〈もう保護者気分よ〉

〈俺、この配信を見たら明後日そっちに行くんだ……〉


 というわけで、9月14日土曜日。運動会当日でございます。

 今日はDCOとしては珍しく朝からのイベント日程になっている。朝から夜までずっと開催はしていて、プレイヤー各々が参加できる時に参加する方式だ。私はどこで休憩するかは未定だけど、なるべく参加して雰囲気を伝えようということで開幕から参加だ。


 さっそくだけど、イベント概要の説明をしておこうか。





《Event:幻双界大運動会・夜王杯!》

 宣誓! 我々プレイヤー一同は、正々堂々競技を行い、全力で勝利を目指すことを、誓います!


 幻双界では今、来訪者の世界を想像することがちょっとしたブームになっている。そのブームに乗った夜界女王 《シア》は、来訪者の世界を知るとある存在から『運動会』についての話を聞いた。いまだ厳しい情勢もあって娯楽不足を認識していたシアは、運動会を実際に興行として行うことにしたようだ。

 優勝チームには豪華賞品が、敗れたチームにも敢闘賞が用意されている。君たちがするべきことはただ一つ、熱い戦いを見せることだけだ。





「予告されていた通り、運動会ですね。大筋は皆さんもご存知のものと同じ……だと思います」


〈微妙な言い回し〉

〈断言してくれないと不安になるんだけど〉

〈あっお嬢もしかして〉

〈お嬢は運動会も知らないのか〉


「はい。私は運動会も初めてです。まして、体を動かすこういう行事に参加すること自体が初めてなので……ふふ、ちょっと楽しみです」


 私は中学の頃まで入退院を繰り返していたから、もちろん運動会の経験なんてものはない。一度だけ退院していた時期に遠目から見たことがあるけど、それだけ。

 病院生活を脱した頃にはもう『体育祭』だったし、それにすら私は参加したことはない。だから今回も人一倍楽しみにしているのだ。


「プレイヤーレベルの横割りで分けられた会場に入って、紅白の2チームで争います。このチーム分けはランダムですが、初入場時点でパーティを組んでいた場合は同じチームになるとのことですね」


〈結局あれそのまま通ったのか〉

〈妥当だったしな〉

〈あの切り抜きシーン〉


 そしてそれぞれの会場で用意された競技を行って、成績に応じたポイントがチームで加算される。中には個人や小さなグループ単位で行う競技もあるから、それらを加算した個人ポイントも記録されるらしい。

 そして全日程が終わったら、個人ポイント、会場内チームポイント、全体チームポイント、詳細不明の特別ポイントで表彰と報酬獲得が行われる。いざ始まったら殺伐としたボス戦が始まった先月とは違って、どうやら純粋に運動会をやるだけのようだ。


 つまり、なるべく多くの競技に参加して成績を残そうということである。実際の運動会と違って時間内は同じ競技がいくつも同時に、かつ何度も行われるから、何度も参加することもできる。

 内容は運動会なんだけど、こうして見るとオンラインゲームのイベントらしい作りになっているものだ。ゲーマーから見ても慣れ親しんだ形式になっている分、とっつきやすさもある。


「さて、さっそく会場へ向かいましょうか。……あ、私はソロで入ります。今回はその方が面白そうですから」








〔イベントエリアに入りました。レベルを検索中……検索完了〕

〔《Aグループ》に編入されました。指定された会場へ移動してください〕

〔あなたは《赤組》です〕





 今回は四方浜の時のような「最良の結果を出したサーバー以外は正史に反映されない」なんてことにはならない。会場となるコロッセオはいくつもあるから、いくつかのグループには別れるがサーバー分けはせずにそれぞれの会場で行われる。

 そしてこの《Aグループ》というのは、ほぼ間違いなく上位勢が集まった激戦区だろう。先月と比べれば正式サービス組、特に第一陣は大きく増えているだろうけど。


「というわけで、私は赤組ですね。ある程度バランスの取れたチーム分けになっているとは思いますが……陣地の方を少し見てみましょうか」


〈あれケイ?〉

〈あっちリョウガおる〉

〈ユナ向こうかー〉

〈イシュカ赤だ〉

〈*デンガク:お嬢赤じゃん勝つる!〉


 見たところだけど、私とケイさんは赤、ブランさんとリョウガさんは白。四大ギルドマスターは綺麗に分かれている。

 イシュカさんが赤で、ユナに加えてリョウガさんのところにいるペトラさんも白。精霊ないしその亜種も2対2だ。ブランさんのところのメイさんも白だから二妖精も分かれた。

 そして、Vtuberは……。


「ルヴィア殿」

「巴ちゃん、赤組なんだ」

「はいっ。ようやく一度きりの催しにて轡を並べられるとは……!」

「うん、よろしくね。……ハヤテちゃーん、運次第なんだから睨まなーい」


〈よかったね巴ちゃん〉

〈先月かわいそうだったしな〉

〈草〉

〈人気やねお嬢〉

〈ハヤテちゃんお嬢ガチ勢になってきてない?〉


 巴ちゃんとソラちゃんは四方浜の時、私たちと別のBサーバーに送られたことを不満に思ってこれでもかと大活躍していた。確かにそんな彼女たちにとって、Aサーバーは念願の場そのものだろう。

 一方で白組に割り振られたハヤテちゃんはものすごい形相で巴ちゃんを睨んでいた。……隣で手を振っているソラちゃんを見習って。




「あとは……イルマさんのところはこっちなんですね」

「ちょっと探してみたけど、配信者の数も質もうまいこと均等になってるよ。うまく分かれたねぇ」


 他のメンバーは今は散っているようで、一人のイルマさんを見つけた。ある程度「いつものメンバー」が存在するパーティの中では、彼のところはイルマさんの配信スタイルもあって集合率が低めだ。いつも同じ顔触れが確立されているブランさんとは真逆といえるだろう。

 そんなメンバーたちの中では、私が面識を持っているのはチカさんだけ。他の4人も個性派揃いだから、いたら顔を繋いでおきたかったんだけど……。


「あ、ルヴィアさん!」


 と思っていたら、一人戻ってきた。


「ああ、初めまして。スズランさんですよね」

「はい! ご挨拶が遅れちゃってすみません、どうぞよろしくお願いしますっ!」

「ええ、ぜひ。……あれですね、フリューやイチョウさんに近いものを感じる気が……」

「スズランはルヴィアさんに追いつくために最前線まで来た子だから」


 彼女はスズラン、イルマチャンネルの準レギュラーとして有名なエルフの剣士である。

 プレイスタイルはというと、私から魔術を抜いて剣による近接戦闘に特化したような形。物理型だから精霊志望ではないものの、近接エルフの中ではトップクラスの実力者だ。

 私とは直接の面識はなかったけど、割と早い段階からエルフの種族掲示板ではよく話していたから認知はしていた。どうやら私のファンらしいとは察していたけど、思っていたより距離が近いし、少し尊敬の眼差しが強いかな。


 彼女はベータ出身なんだけど、当初はあくまでエンジョイ勢というか、あまり攻略に精を出すプレイヤーではなかった。しかしどうやら私の配信を見て「一緒に戦いたい」と思ってくれたようで、ベータ後半あたりから本格的にレベリングを始めたそうだ。


「でも、だとしたらなぜイルマさんのところへ?」

「ああ。それは僕も伝えたんだけどね、『他の配信者のところにはしばらく行かないでもらうことになる』って」

「それは、その。私は元々ソロだったんですけど、いきなりルヴィアさんのところに突っ込むほどの勇気はなくて。イルマさんに誘われた時、『ここで実力と知名度をつけてから会おう』と思ったんです」

「僕としても欲しい人材だったし、ルヴィアさんが作るまで僕もギルドに入らなかったのはスズランとの約束だったんだよね」


 ……こう聞くと、先に挙げた二人とはちょっと違うね。フリューは幼馴染ということもあって私との信頼関係に疑いを持ったことがないし、イチョウさんは実力がついてからは圧倒的な精神力でそのままクレハのもとへ突っ込んできたらしい。

 一方で行動力がないわけではなく、私がギルドを作ることをひと月前から予見してイルマさんを誘導してもいたと。やや慎重だったのは、私から見て年下だからかもしれない。


「で、そんなスズランさんを置いてリーダーが単独で私とコラボしたと」

「そうなんですよ! しかも私たちに一言もなかったんです! いくらメイさんに呼ばれたからって、本当にひどいですよね!?」

「いやホントごめんって。一月半越しに狙い通りの形ができたってことで、どうか許して」

「怒り方がチカさんのときと全く同じなんですよ」


 ちなみにあの時、スズランさんやチカさんが我慢していることを知りながらイルマさんを招集したのはメイさんだったんだよね。


「……へぇ」

「いいこと聞いたね。今度“潰し”に行かないと」

「うわびっくりした。チカ、いつの間に」

「一緒に()りましょう、チカさん」

「…………グッドラック、メイさん」


〈南無〉

〈(-人-)〉

〈さてはお嬢人の心がないな?〉

〈強く生きろよメイ〉

〈本人の知らないところでブランの撮れ高が増えた〉


 ごめんね、メイさん。頑張って。

 知らないうちに話が通ってイルマさんが来ていたからびっくりしたし、私もこの件に関しては二人を応援したいんだ。






 しばらくそのまま雑談しているうちにプレイヤーはさらに増えて、見知った顔もいよいよ出揃ってきた。かなり多くのプレイヤーが開幕から参加するようだ。

 そして開始時間。会場奥にある壇上にプレイヤーたちの視線が向くと……。


『諸君、今日はよく集まってくれた!』


 そこに現れたのは、近所のおじさんだった。

 ……うーん、ちょっと待って?


「お父様ァ!?」

「ねえルヴィア、なんであの人こんなところにいるの」

「わからないけど……確か運動会イベントの案を出したのはあの人だったって」


〈は?〉

〈ジュリアパパ?〉

〈ルヴィアパパに続いて〉

〈竜娘凄い声出してるが〉


 普段から見慣れたような格好のはずなんだけど、この世界でスーツ姿を見ると違和感凄いね……じゃなくて。

 いろいろと疑問符を浮かべていたら、イベントメニュー経由で運営から何か送られてきた。すぐ開けて使って、と書かれたメッセージと謎の添付アイテム……これ、マイク?


「『質問をよろしいでしょうか』」

『ああ、どうぞ。演出の一環に巻き込まれてGMチームからマイクを押しつけられた、契約条項に『イベント時の特別扱いがありうる』とあったルヴィアくん』

「『あ、ご説明ありがとうございます』」


〈草〉

〈草ァ〉

〈あまりにも説明口調〉

〈全部言ってくれたじゃん〉


 ……うん、まさしくたった今説明してくれた通りだ。私は確かに公式配信者としての契約時に、『イベント時には他プレイヤーと扱いが異なる可能性がある』と言われている。

 それをわざわざ言ってくれるのは、妙な勘繰りや誤解がなくなるからいいんだけどね。それすらネタにする構えさえなければ。


「『その、どうして運営の方がこちらへ?』」

『《王立運動会実行委員会》との協議の結果、今回のような来訪者の催しは我々が仕切った方がいいだろうとなったんだよ』

「『……召喚、できるようになったんですか』」

『ああ。来週から召喚上限を撤廃するから、その肩慣らしとしてね』

「『説明中に別の爆弾を投げ込むのやめてもらえますか???』」


〈王立運動会実行委員会とかいうパワーワードなんな〉

〈は?〉

〈なんつった今〉

〈召喚上限を撤廃?〉

〈完全開放来る!?〉

〈しかも早くて明後日!?〉


『まあそんなことは今はいい! 今ここに、《リベリスティア王立運動会》の開始を宣言する!!』

「『いやよくな……誰もついていけてませんってば小父様ぁ!?』」

 予定では7~8話にまたがる運動会の時間だァ!

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『Dual Chronicle Online 〜幻双界巡りの物語帳〜』

身内による本作別視点です。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


小説家になろう 勝手にランキング

― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! まぁ、確かに娯楽は必要ですもんねー…お嬢は開幕から参加ですか。 人生初の運動会なんですか!目いっぱい楽しんでくださいね…! なるほど、ポイントを集めて競う。典型的な運動会…
[一言] あ、適切な小父の使い方
[一言] こう・・・ちょくちょく悪ノリするけど基本冷静に振舞ってるキャラが身近な人に振り回されて取り乱してる姿って良くない?
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