表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.0-1 戦いの始まり、《天竜城の御触書》
15/472

15.兎狩り(拡大解釈)

《ルヴィアの配信が開始しました》






「はい、皆さんこんにちは。ルヴィアです」


〈きちゃ〉

〈こんー〉

〈待ってた〉


「今日はですね、いよいよボスを倒しに行きたいと思います」


〈キター!〉

〈やったぜ〉

〈ついにか〉

〈早いなぁ〉


「今回はレイドボス戦になるのですが、メンバーがこちらですね」


 3月16日の土曜日。ベータテスト開始から一週間が経過したこの日の午後、予定通りボス戦を行うことになった。

 集まったプレイヤーは40人と少し、集合場所はボスエリアの手前に発見されたセーフティエリアだ。

 DCOのレイドパーティは6人かける8パーティの48人だからやや足りないけど、開幕からわずか一週間で最前線のレイドボスに挑む用意ができた人がこれだけいたと思えば充分だ。

 そして嬉しいことに、この中には私が知っている人がかなり多かった。






「ルヴィアさん」

「ユナさん。やっぱり来てましたか」


 まずはユナさん、アルフレッドさん、ジルさんのエルフトリオ。この三人については出会ったのがつい一昨日だし、その時もかなりボスに近い位置まで来ていたから、今回も間違いなくいると思っていた。

 なんだかんだで相性も都合もいいとのことで、そのままパーティを組み続けているそうだ。


〈お、レアMob動画の〉

〈パリィできなかった人か〉


「イジられてますよ、アルさん」

「もう勘弁してくれぇ……」

「カットされてなかったですからねー」


 一昨日の狂猪戦はしっかり動画化されていた。彼らは配信に出るのは今日が初めてだけど、その動画がよく伸びているから知名度も高い。

 そしてその動画内でのやり取りをうまくオチに使われたことで、アルさんの扱いは同情を誘うようなものになっていた。






「ルヴィアっ」

「はいはい、どうどう」

「こっちは見ての通りですね。リアフレなのは前に言った通りです」


〈双子ちゃんきたー〉

〈扱いが狂犬で笑うって〉

〈ミカンちゃんちっちゃい〉

〈かわいい〉


 猪もかくやの勢いで突進してきそうなフリューとそれを止めるルプスト、それを後目にするりと近寄ってくるミカン。普段はこの三人だけだとあまり相性がよくないけど、今日はレイド戦だからか幼馴染組も集まっていた。


「あとの二人は?」

「あっち。『わたくしはまだ未熟、大衆の目に見苦しい姿を晒すわけにはいきませんわ』だってさ」

「……姫騎士ロールって言ってたよね」

「あれが姫騎士なのかは、私にもわかんない」


 まあ、本人が嫌なら私から行くつもりはない。そのうち面白いものが見られるんじゃないかな、たぶん。

 改めて思うと、本当に個性的な幼馴染たちだ。……誰だ、類友って言ったの。






「お次は……あれ、どちら様でしたっけ」

「うおぉぉい! 俺たちだよ、シルバとリュカだよ!」

「ああ、イノシシの」


〈wwwww〉

〈草〉

〈覚え方雑すぎて草〉

〈雑ゥ!〉


 というわけで、こちらは日曜日にご一緒した人間のシルバさんと狼のリュカさん。さすがというべきか、こちらの雑な扱いにすかさず乗ってきてくれた。ノリのいい人たちだと覚えていたんだ。


「わかってたんだ……なんとなく、こうなるだろうなって……」

「あんな面白いことしてたら、次に会った時にこうもしますよ」

「まあ、アレは近くにルヴィアさんいたから悪ノリでやったんだけどな!」

「でしょうね」


 これはやっぱりアレだ、二人して人を笑わせることに快感を覚えるタイプ。小中学校なんかではクラスに二人くらいいるよね。






「あ、いたいた」

「イシュカさん。お一人で?」

「妖精族、他にいないのよこれが」

「なるほど。やっぱり大変なんですかね」

「あたしは案外すんなりいけたんだけど……」


〈うっ、才能が眩しい〉

〈チクショウ、僕だってすぐに……!〉

〈ベータ妖精組へのダメージが〉

〈今更だろ〉

〈それもそうだな〉

〈配信主がアレだし〉


 このイシュカさん、基本的には純魔ビルドでソロプレイらしい。妖精族は素早い上に小回りがきくから《回避》スキルとPS(プレイヤースキル)さえ育てればできる、と本人は言っていたが、彼女の真に凄いところはわずか数日でそれを会得しているところにあった。

 ドワーフのようにそもそもいない種族は他にもあったけれど、妖精族は彼女一人だけ。種族ごとの格差や扱いにくさを、実力で覆しているということなのだ。


「パーティの誘いはいくつかあったんだけどね、遠慮したのよ」

「ああ、色々ありますか」

「ソロの女はツラいわ。……まあ、私が必要以上に警戒してるだけかもだけど」

「いますね、強い女が二人ほど……」


 まさに女性ソロで他の様々なパーティにお邪魔しているミカン、ゲームの中が初対面のパーティで紅一点どころか牽引までしているユナさん。

 見習いたい、そのバイタリティ。






「けっこう集まりましたね」

「ええ。正直、想像以上です」

「来たね、ルヴィアさん。よかったよ、君がいないと少し作戦が変わってくるところだった」

「何やらされるんですか私」

「後で説明するよ。大丈夫、変な事じゃない」


〈やっぱりあいつらがリーダーか〉

〈おっ上コメの名前にも見覚えあるぞ〉

〈前ゲーのライバルまで見に来てるのか〉

〈ベータ当たんなかったんだよ!〉

〈ルヴィア嬢の扱いにみんな慣れてきたっぽいな〉


 このレイドのリーダーはブランさん、サブリーダーはカナタさんだった。これは予想通りだ。彼が指揮に慣れていることは、私たちをはじめとして知っている人も多い。彼らの《明星の騎士団》が登場する動画、動画サイトで平均で50万再生は軽く突破しているから。

 私はそのリーダー直々に何かを言い渡されるらしい。変な事じゃないという言い方、難しいことを頼まれる時の常套句だと思うんだけど。


「それじゃあ、そろそろ直前ミーティングを始めよう。みんな、こっちに集まってくれ」








「今日はここに集まってきてくれてありがとう。レイドリーダーを務めさせてもらうブランだ」

「補佐のカナタです。そしてこちらが」

「サブリーダーに任命されました、ルヴィアです。よろしくお願いします」


 はい。なんかサブリーダーにされました。作戦に必要なことらしいけど、肝心の作戦はまだ聞いていない。


「さて。今回はフィールドボス討伐ということで、1レイド相当のトッププレイヤーに集まってもらったわけだけど」

「先ほど参加者の確認を行って、こちらである程度の配分を行わせていただきました」

「具体的には、ひとまず均等に二分割。この二つのグループでまとまって、交代しながらボスを受け持っていこうと思う」


 数十人単位で挑むことが前提のレイドボスは、他の敵とは比べ物にならないほどHPが多い。これから戦うボスも50人で数十分はかかるように作られているから、少し人数が足りていない今回は余計に時間がかかるはずだ。

 そしてもちろん、そんなに戦っていれば疲れるし、集中力も切れてしまう。だからそのために隊を二分して、片方ずつ休みながら戦闘を続けようという魂胆だ。大規模だけど、いわゆる「スイッチ」だね。


「その二つのグループのうち、片方は俺が受け持つ。そしてもう片方は、ルヴィアさんに指揮してもらおうと思うんだけど……大丈夫かな」

「なるほど。たぶん、できると思います」

「それなら任せよう」


 そんな話がされた時点で流れはわかったから、いきなり振られても動揺せずに済んだ。二つ返事で承諾すると、他のプレイヤーたちも次々に得心顔に変わっていくのが見えた。経験のないプレイヤーはここで即答できない。

 実は私、従来のMMOでならレイド指揮もしたことがあったりする。これも迷わず受けた理由の一つだ。感覚は違うだろうけど、やることはそれと変わらないから。


「それじゃあメンバーを分けるから、呼ばれた人はこっちに集まってくれ。残りはルヴィアさんの方に」






 というわけで割り振られたんだけど。


「……配信に優しいリーダーですね?」


〈ここまで綺麗にやるか〉

〈見る側としてはありがたいな〉


 なんとこちらのグループ、ブランさんとカナタさんを除いて私の配信で目立ったプレイヤーが勢揃いしていた。偶然を疑うには人数が多すぎるし、どう考えても作為だろう。

 とはいえ、知らない人も何人かいる。彼らの特徴を今のうちに掴むため軽い自己紹介をしてもらって、それを元に私が4パーティに振り分け。


「……それでは、このパーティ分けでよろしくお願いします」


 基本的には、私の面識がある人とない人で分けておいた。知名度が独り歩きしている今、私(というか、私の配信)に慣れていることは、私と組む時に限って大きなアドバンテージになるから。


「ルヴィア、これわざと偏らせてるよね?」

「うん。ちょっと試したいことがあるの」

「試したいことって?」

「ボスのAIの再現度だよ。相手の戦い方が変わったら、ちゃんと戸惑うのかなって」


 ブランさんの方を見ると、どうやらタンクが一パーティ、それ以外を三パーティにバランスよく分けていた。タンクが一箇所に攻撃を集めつつ、三方からバランスよく攻撃を与える形だ。

 それに対して、私は四パーティを半分に分けた。前衛と後衛でそれぞれパーティを作って一組にし、12人のグループを二つ編成する形だ。

 この二つをローテーションすることで、ボスのAIがどう反応するのかを確かめる。今後のことも考えると、仕様の確認はここでしておきたいし。


「私も前線に出ますが、指示は私から直接出します。状況確認と伝達はユナさんにお願いしようかと」

「わかりました、フレンドチャットですね?」

「はい」


 《DCO》において、フレンドという機能で得られる恩恵はそれなりに大きい。フレンドチャットもそのひとつで、これはゲーム内に限り通話ができる。

 今回は使わないけれど、繋いでいる人にしか通話内容が聞こえないように設定することもできるらしい。内緒話が簡単にできるのはかなり便利そうだ。






「そっちも準備はできたみたいだね」

「オーソドックスな敵ですからね。作戦というものもありませんし、形の確認だけです」

「それにしても、よく集まりましたよね。てっきりアタッカー過多になるものとばかり」


 一応確認しておくと、私のパーティは他にアルさん、フリュー、シルバさん、リュカさん。組み合わせになる後衛パーティはユナさん、ジルさん、ルプスト、ミカン、イシュカさんだ。

 他にも組み合わせを考えはしたんだけど、元々組んでいたパーティを崩さないようにも気をつけるとこの形にしかならなかった。なんか妙にバランスが良かったんだよね。

 もちろん、もう片方の2パーティもバランスが保たれている。これだけ後衛もタンクも揃ってくれると、レイドを動かす側も助かるというものだった。


「さて、そろそろ行こうか。化け物ウサギがお待ちかねだ」


 というわけで《DCO》初のボスバトル、張り切っていきましょう。

ちょっと短め。おさらいです。次回はボス戦……なんですけど……。

やるかやられるかの死闘はもう少しだけお待ちください。


やっぱり大型連休って凄いですね。いつもとは比べ物にならないくらい伸びております。100ブックマーク(今回投稿時点でもう110越えてるけど)、総合300pt(今回(略)もう360越え(略))、累計10000PV(今(略)12500(略))、その他もろもろ。改めて感謝、感謝です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


小説家になろう 勝手にランキング

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ