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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.1.1 たのしかった、運動会!

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137.コント回

 なんか流れでセレスさんも連れていくことになりました。

 ただ、彼女は魔術アタッカーだ。多少サポートもできるけど、基本的には火力役として考えた方がいいだろう。


 となると、サポーターが必要になってくる。タンクとヒーラーだね。

 まずは《精霊の小聖堂》の扉を開いて……。


「ユーナーちゃん、あーそびーましょ!」

「はーあーいっ!」


〈草〉

〈小学生かな?〉

〈それで来るユナもユナなんだよな〉

〈お嬢が楽しそうで何より〉


 ほら、こういうの私はしたことなかったから。今更だけど追体験というか、ね?


「というわけでヒーラーを用意しました」

「小聖堂って便利だねー」

「イシュカさんには登場頻度で負けてられないの!」


〈準レギュラー狙ってんな〉

〈さっき準レギュラー不在を消したから〉

〈精霊になってまずやることそれ?〉


 ユナ、召喚。

 私が雑にヒーラーを呼ぶときは大抵ユナかミカンになる。最近ユナが精霊になったから、急に呼ぶならこっちの方が手っ取り早くなったんだよね。

 これでヒーラーは確保。あとはタンクだね。




「タンクは精霊界からは呼べないよね」

「どうしましょうね。近くに暇なタンクがいたら楽なんですけど」

「いなかったら?」

「私自身がタンクになることだ」


〈言わされたな〉

〈あまりにも誘導尋問で草〉

〈久々にお嬢タンクあるか?〉

〈チカちゃん容赦ないな〉

〈もしかしてイルマに先越されたの普通に根に持ってるのか?〉


「うふふ、そんなわけないでしょ? 我慢してたのに私やスズランを置いて一人だけ抜け駆けしたくらいで、怒るわけないよ?」

「うーん、完膚なきまでに怒ってますねコレ」


 チカさんから殺意の波動を感じる。思い返せば確かに抜け駆けだったね、あれは。

 特に名前が出たスズランさんとは以前からエルフや精霊の掲示板でやり取りしているから、彼女が私に会いたいと公言していることはけっこう多くのプレイヤーが知っている。チカさんがここまで怒るのは予想外だったけど、それでも無理のない部分はあった。


 …………で、これは言った方がいいのかなぁ。

 まあ、いいか。


「そのあたりどう思います、そこで隠れている光属性の狐獣人さん?」

「ルヴィアさん!? 人の心とかないの!?」


〈草〉

〈おるんかい〉

〈当たり前のように出てくるな〉

〈出歯亀は感心しないぞイルマ〉


 たぶん撮れ高の匂いを嗅ぎつけてきたんだろうね。イルマさんが物陰で様子をうかがっていた。来ようとしたところでチカさんの様子に気づいて身を潜めたみたいだけど、私の魔力覚にはお見通しだ。


 さすがにバレては仕方ないとばかりに、大人しく出てきた。出てきたんだけど……うん、そうだよね。なんかもう一人いるよね。


「もうっ! 本ッ当にズルいよイルマさん! ずっと付き合って我慢してたのに!」

「いや、ほんとゴメン。流れというか、呼ばれちゃってさ。しかも魔術師縛りだったから」

「それはわかってるけどー……! スズランへの言い訳は一人でするんだよ!?」


 ここでイルマさんは背中に隠していた“もう一人”を前に出した。




「足りないと思ってタンク連れてきたから許して」

「じゃあ許す」

「何してるんですかゲンゴロウさん」


〈誰かと思ったら〉

〈秘密兵器のノリからド常連で草〉

〈付き合うなよゲンゴロウニキもそういうとこで〉


 怒られることがわかっているのに準備をしてまで来るイルマさんもイルマさんだけど、文句ひとつ言わずにお詫びの品扱いされるゲンゴロウさんも大概だよ?


 ユナの流れから思ったけど、そういえばゲンゴロウさんもこういう時の登場頻度が高いね。タンクの需要はどうしてもあるから仕方ない節はあるけど。

 フリューも同じ常連タンクだけど、あちらは基本的にルプストとセットだ。二枠ある時は呼べるけど、最後の一枠としてタンクが欲しい時はだいたいゲンゴロウさんの出番になる。


「思えば初登場の時もそんな感じでしたね」

「傭兵スタイルは雑に使えるのが特色だからな。雑に使えるゲンゴロウ、略して雑ゴロウだ」

「あの、人の配信でパワーワード広めるのやめてもらえます?」

「そういうこと自分でいうんだこの人……」


 ほら、案の定コメント欄が「雑ゴロウ」でいっぱいになっている。たぶんしばらく流行るよコレ。

 今日の主役はチカさんとセレスさんだと思っていたら、思わぬ方向から印象が飛んできた。最近こういうの多くない?


〈なんでこんな気さくなだけのおっさんでずっと笑ってんだ俺ら〉

〈この素人感がいいんだよ〉

〈*セージ:そろそろ凸らないと席なくなりそうだな……〉

〈雑ゴロウニキと真逆みたいなのおるが〉


「ルヴィア、なんかセージさん焦ってるよ」

「なんで? 基本的に来るものを拒む気もないので、焦られても困るんですけど……」

「説明しよう。セージさんはルヴィアさん周囲の慢性的タンク不足を解消するべく登場タイミングを図っていたが、雑ゴロウさんが雑ゴロウ宣言でルヴィアさんの躊躇を消したせいで出番がなくなることを危惧しているのだ!」


 それがわかってるならなんでセージさん連れてこなかったのイルマさん。

 あとみんな、私のチャンネルのコンテンツ的な問題を考えるのは私だから。頼んでもいないのにみんなが考えて悩んだりしなくていいから。


「そろそろ行こ、みんな。すっごくにこやかに見守ってくれてるけど、これ以上わかんない話でセレスさんを待たせるのよくないと思う」

「それもそうですね。出発しましょうか」


 見れば、セレスさんはなぜか楽しそうだった。しばらく分からない話で放置されていたのに、苛立ちどころか不愉快そうな様子ですらない。

 これはあれだ、公園で遊んでいる子供たちをにこにこ見ているお母さんの顔だ。窓越しの遠目に病院の庭で見かけたことがある。

 ……あのねセレスさん。私たちもう子供ではないから、そういう目を向けられるとちょっとむず痒いというか……はい。ごめんなさい。早く行きましょう。


 

 





 シュピーグ近辺のフィールドでは、ヴォログとは打って変わって人型の魔物が多く出現する。

 具体的には、ゴブリンとオーク。ただし南方にいる奴らとはレベルが違うし、装備もそれなりに違う。





アイアンゴブリン Lv.40

属性:光

状態:汚染


アイアンオーク Lv.40

属性:火

状態:汚染





 アイアンという名の通り、こいつらは鉄製の武器防具を使う。……まあ鉄といわれても素材としてはけっこう今更なんだけど、ランクが上がっているというのがミソだ。

 薄汚いのは相変わらずだけど、装備は上等になってレベルも上がった。これまでのゴブリンと同じだと思ってかかると痛い目を見る。


「……まあ、それはなんとかここに来たくらいの中堅勢の話ですけどね」

「ちょいやー!」

「トップ向けダンジョンの魔物に慣れている人たちが手こずる相手ではないよね」

「おお、チカさん火力高いですね。弱点で急所に入れば乱数一発あるかも」


〈知ってた〉

〈だろうな〉

〈やっぱトップ組人外だわ〉

〈またポ○モンみたいなこと言いよる〉

〈あいつ結構強かった気がするんだけど、気のせいか……〉

〈トップと中堅の差ってなんでここまで埋まらないんだろうなぁ〉


 ……まあ、私たちのような最近ちょっと人外呼ばわりに反論しづらくなってきたフロントランナーにとってはそのへんの虫と同等だ。完全にサンドバッグ。

 こういうことはあんまり言いたくないんだけど、中堅勢との差がどこにあるのかは私たちにもよくわからない。ログイン時間からくる基礎練習量の差は確かにあるだろうけど、傍目から見てもそれだけとは思えないくらい動きが違うのだ。


 ねえみんな、そのあたりどう思う?


「さあ?」(チカ)

「確かに不可解だよね。あくまで感覚的にだけど、指数関数みたいというか」(イルマ)

「……あ、潜れば潜るほどリアル経験値効率が上がるってこと?」(ユナ)

「VR慣れか。実際あるかもしれんな」(ゲンゴロウ)


 ……なんか真面目に答えてくれた。

 これじゃあ様式美の気配を察知してぞんざいな返答をしてくれたチカさんがバカみたいじゃない!


「あ、そういうノリだったの?」

「イルマさん、あなた何回配信してるの……?」

「ユナもゲンゴロウさんも最初すっとぼけた表情作ってくれてましたからね。このあたりのコントムーブはイルマさんも早めに覚えましょう」

「ねえねえ、それルヴィアだけは言っちゃいけないやつじゃなかった?」


〈お嬢ときどきメタいのよ〉

〈意識してコントするようになってるあたりお嬢も成長したよな〉

〈最初期の初々しいお嬢はもういないんやなって〉


 もちろん、こういう露骨なやつは応えてくれる信頼がある人と配信者さん相手にしかやらないけどね。思っていたよりイルマさんが純粋だった。


 この件について真面目にいうと、私もダイブVRそのものの経験値がものを言っているのではと思っている。個人差はあるけど、VR空間ではちゃんと慣れていないと現実と同じだけのパフォーマンスを発揮できないんだよね。

 それが長くVRダイブを続けて体ごと慣れてくると、ステータス抜きに現実よりもいい動きができるようになってくる。脳がVRアバターの現実を凌駕する性能を把握してくれるようになる……のではないかという認識だ。

 あくまでいちプレイヤーの感想だけどね。根拠はないから、証明するには脳科学者さんにでも研究してもらうしかないだろう。






 フィールドを進みながら何度か戦闘をこなしたけど、チカさんはさすがの実力だった。特にゴブリンのような低耐久の魔物は、彼女にとっては得意な相手だ。


「《トリプル・アタックブースト》……せぇいッ!」

「うわ、ほんとにワンパンした……」

「張り切ってるね、チカ」

「張り切るってものでしょ。ルヴィアさんの配信はいつもとはワケが違うし」

「まあ確かに、リスナー数の桁が違うからね」

「言いますねチカさん」

「イルマより配信慣れしてるまであるな」


〈イルマの扱いぞんざいすぎて草〉

〈当人が認めちゃおしめぇよ〉

〈それでいいのか銀盾配信者〉

〈ゲンゴロウニキも大概では?〉


 チカさんは《陰陽術》で自己強化して近接戦を仕掛ける、物理型魔法剣士のエキスパートだ。できることが多い分ビルドや立ち回りが難しいスタイルだけど、彼女は自力で確立してのけた。いわゆる「魔法剣士のテンプレ」というものが既に存在するのは、チカさんともう一人の功績である。

 そんな彼女が本気を出すと、このように守りの薄い雑魚は一撃で倒すことすらできる。応用力に長けたトリッキーなプレイヤーだ。


 もっとも、DCOでは適正レベル帯の敵は基本的に一撃では倒せないような調整になっている。それこそクレハのような異常なDPSを持つプレイヤーでも、前線でのワンパンは基本的にはない。

 だけどゴブリンは守りを金属防具に頼っているから、その合間を狙って急所へ攻撃を通すと大ダメージが入りやすい。うまくやれば例外的に一撃必殺もやりやすい魔物なのだ。

 それに加えて、チカさんの方もワンパンを狙うと本気でバフを掛ける必要がある。当然ながら消費も馬鹿にならないから、そんなことをいつもやるわけにはいかない。

 つまり、今のワンパンは魅せプレイのたぐいだろう。実際こちらのコメント欄はいい具合に盛り上がっていたから、珍しいものを見せてくれた彼女には感謝だ。


「というわけで、今のは切り抜きお願いしますね」

「なんで全部言っちゃうのルヴィアさぁん!?」


〈草〉

〈草だが〉

〈チカちゃんマジでいいキャラしてんね〉

〈*サープリ切り抜き班:ここまでクリップしました〉

 そういえば連載一周年過ぎてましたね。これからもまったりやっていくので、どうぞよろしくお願いします。

 お祝いついでにブックマークと評価をつけていっていただけると嬉しいです。

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『Dual Chronicle Online Another Side 〜異世界剣客の物語帳〜』

身内による本作サイドストーリーです。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です! 遅ればせながら一周年おめでとうございます!これからもお体にお気をつけて頑張ってください! ネタの宝庫ですねー…wそしてイルマさんのお土産として登場ゲンゴロウさん。 雑ゴロ…
[一言] 1周年おめでとうございます♪ 更新頻度の割にとても1話1話が長くて正直驚いてます 今後も無理しない程度に頑張ってください
[良い点] もう1周年だったんですね!?時の流れが早すぎる…… おめでとうございます!!
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