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Dual Chronicle Online 〜魔剣精霊のアーカイブ〜  作者: 杜若スイセン
Ver.1.0-2 猫と精霊とヴァンパイア

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125/514

122.ドレインフラワーと芸人コンビの時価が暴落した日

 というわけで、いざ。


「今も満開なのね」

「外は夏なのに……」

「やっぱりダンジョンの中は季節も何も関係ないみたいね」


〈そらそうか〉

〈なんか不気味だな〉

〈外も桜だった前回よりよっぽど怖いわ〉


 ダンジョン内部はほぼ変わっていなかった。……変わっていないからこそ、少し怖いんだけど。

 この世界の季節は現実と同期している。前回ここへ訪れた時は外も三月で桜が咲いていたから、ここの光景もさほどの違和感は覚えなかったけど……今は八月の末だ。季節を無視して咲き乱れる桜は、思っていたよりも不気味だった。


「予定通りパーティごとに行動して、ボス前で合流しましょうか」

「了解、こっちは任せて」

「あれ、意外……フリューはてっきりゴネるものと」

「いい、ユナ。どんな形でも、ルヴィアの役に立てるのには変わりないんだよ」

「アッハイ」


〈せやな〉

〈せや……か?〉

〈わかるようなわからんような〉

〈よし、いつものフリューだな!〉

〈最近暴走天使落ち着いてきたよな〉


 あの様子なら向こうはフリューに任せておけば大丈夫そうだね。私たちもさっそく攻略を始めていこう。






 さっそく敵性反応……あれ?


「どしたの?」

「いきなり《タンコロリン》みたいです」

「へえ。つまり、敵構成が前と違うってこと?」


〈へえ、ちゃんと違うのか〉

〈前と同じとこと違うとこがある?〉

〈役割が変わったのかな〉


 初探索時のここ《落花繽紛桜怪道》は、前半は獣系の敵が占めていた。それがどうやら、今は入口付近から植物系の敵が陣取っているらしい。

 つまり、単純に難易度が上がっている。本来なら後半にいるはずのこれらが前半にいるということは、奥地にはまた別の敵がいるのだろう。


 先日の《荒れ果てた神宮》はほとんど元のままだったんだけど……そのあたりの変化は一様ではないようだ。

 考えられる要因でいうと、ダンジョンに割り当てられたゲーム的な役割が変化したといったところだろうか。《神宮》はフィールドに慣れた初心者が最初に入るダンジョン、《桜怪道》はどちらかというと慣れたプレイヤーが狩りや腕試しに来るダンジョン、といった具合だ。


「つまり、奥には《ドレインフラワー》とかいるかも……ってコト!?」

「おっとネタの香りがするイントネーション」

「希少素材が落ちるなら、嬉しい……です」


〈このフィートって子なかなかだな?〉

〈一時期めっちゃ流行ったよな〉

〈いまだに使うでしょ〉

〈ネットミームはときどき寿命がやたら長い〉


 さて、そんなそんなで最初の戦闘……なんだけど。


「《咆哮(ハウル)》……ッ!」

「ひゃっはー、いただきぃー!」

「最近の若い子は素直でいいよね。ナイスアシスト」


〈おお〉

〈流れるように〉

〈キャッチボールかな?〉

〈ええやん〉


 さっそくヘイトを引き受けて化け柿特有の突進を受け止めたロウちゃんの横から、槍を構えたフィートちゃんが回り込む形で突撃。完全に動きが止まった瞬間の柿に高威力の突撃技……と見せかけて、器用に掬い上げて跳ね上げる。

 コンボを繋げやすい連携を即座に選んだフィートちゃんに、デンガクさんもしっかり応えた。打ち上げられて的と化したところに、狙い澄ました《ハープーンシュート》。トップ弓使いの彼が止まったも同然の敵を外すわけもなく、真下へ墜落したところを再びフィートちゃんが《ハイスラスト》。穂先を勢いよく叩きつけられたタンコロリンはあえなく爆散した。


「……連携、上手いですね」

「モノになってる……」

「組むの初めてなんじゃなかったの?」

「初めてだよ。あの二人、よく周りが見えてるみたいだね」


〈デンガクが初手褒め!?〉

〈デンガクってあんまり人を褒めないイメージだったけど〉

〈実際上手いな二人とも〉

〈前から前線にいたみたいな安定感〉


 デンガクさんは普段はおちゃらけ気味だけど、戦闘中とその振り返りの間は真面目な姿を見せる。前線の戦いに参加しつつも、自主的に後発のプレイヤーとパーティを組んで育てる面倒見のよさも有名だ。

 後進には必要なら手厳しい意見も遠慮なく言うと評判のデンガクさんだけど、今回は手放しの賞賛だった。私の配信チャット欄でもトールくんたちを厳しめに評していたのを覚えているから、私もけっこう驚いている。


「とーぜん。私、ここで通用したら最前線に行くつもりだから!」

「わたしも……です」

「うん、今の戦闘ができるなら問題ないと思うよ。今は判断も速かったし、正確だった。……だけどそれは」

「今の戦いが安定してできれば、だね?」


〈デンガクべた褒めすぎて怖いんだけど〉

〈偽物か?〉

〈今日なんかネタ発言少ないしな〉

〈デンガク調子悪い?〉


 散々な言われようである。ただ真面目にやりながら共闘している後輩を褒めただけなのに。


 一方の二人も、今のような戦闘がいつもできなければ合格にはならないとよくわかっていた。緊張はほぐれてきたようだけど、気は緩んでいない。いい雰囲気だった。








「それにしても、妙ですよね。これだけ花びらが降っているのに、いっこうに散る気配が見えません」

「散るそばから花びらが生えてるとか?」

「サメの歯みたいに?」

「こ、怖いこと言わないでよユナさん……」

「……(こくこく)」

「いっぺん掘ってみる?」

「桜の木の下をですか?」

「嫌よ。出てくる物によっては夢に見そう」

「……(ぷるぷる)」


〈知性のあるボケ〉

〈この面子だと即座に突っ込んでもらえるしな〉

〈お嬢は博識だしイシュカもけっこう〉

〈ねえロウちゃんかわいすぎん?〉

〈*シルバ:やめろデンちゃん! 俺らの居場所が!!〉

〈シルバ練習しろ〉


 このダンジョンは前半は桜並木の街並みだけど、後半になると見渡す限りの桜林になる。昼界ではやや珍しい満月の夜空が、薄紅にほとんど覆い尽くされそうになりながらも夜桜を照らしている。

 横を向いてもほとんど桜、折り重なった桜花と幹がその向こうを見通させない。この数え切れない桜の木々が、全て根の下に死体を敷いていたらと想像すると……鳥肌が立ってきた。

 でも、そんな想像を容易にしてしまうような幽玄そのものの光景だ。今なら梶井基次郎の気持ちがわかりそうな気がする。なるほど、壮麗とは行き過ぎれば恐怖をもたらすものであるらしい。


 ……まあ、文学的なことを素人の私が言っても仕方がない。というか映像で配信中だから、リスナーのみんなにはわざわざ言葉で伝える必要がなかったりする。

 それでもちょっと飾った言葉を使ってみたいような、そんな気持ちを誘うような魅力があるのだ。桜は見慣れたつもりだったけど、こうしてみると新たな発見は出てくるものだね。




「季節外れの花見ですけど、これも案外楽しいものですね」

「もっとプレイヤーが増えたら、入口のセーフティが年中花見客で賑わったりして」

「ダンジョンとはいえ、入口でしか安全な花見はできないのはなんかもったいないなぁ」

「おっと、話の途中だがワイバーンだ!」

「いないわよワイバーンなんて」

「ありゃ、じゃあ言い直すか」

「いいですよわざわざ」


〈余裕あるなぁ〉

〈実際危なげないしな〉

〈イルマの方も似たような感じだしな〉

〈ネタ発言しながら戦闘準備させる魔法の呪文じゃん〉

〈ん、お嬢どした?〉


 豊富な戦力にものを言わせて危なげなく攻略を進めていることもあって、私たちは常時雑談を続けていた。弓手らしく索敵能力も持ち合わせているデンガクさんが敵を察知しても、それとなく戦闘準備を促しながら会話は楽しんでいるくらいだ。

 一見すれば慢心や舐めプレイの類いだけど、私も魔力覚で同時に索敵しているからこその余裕だ。余裕はあるなら見せていた方がいいからね。


 だけど、私はソレを見つけて思わず黙ってしまった。警戒や恐怖ではなく、どちらかといえば望外の歓喜のほうだけど。

 だって、精霊の魔力探知に引っかかったその魔物は……。


「みんな、話の途中だがドレインフラワーだ!」

「な、なんだってー!?」

「まさかホントにいるとはね!」

「帰ったらナイトウルフで焼肉よ!」

「よし、みんな戦闘準備!」

「おまつり、ですね……!」


〈そのネタお嬢もやるんかい〉

〈露骨にテンション上がってて草〉

〈焼肉言い出すのが一番見た目似合わんイシュカなんだよな〉

〈ドレインフラワー明日には暴落してるな〉

〈いうてそこそこで止まりそう〉

〈ここまで奥だと上位勢しか狩れないだろ〉


 哀れドレインフラワー、縄張りに目が血走った狩人たちが入ってきたばっかりに。ロウちゃんの言う通り、血祭り(おまつり)の開催が決まってしまった。




「《咆哮(ハウル)》……せぇ、やッ!」

「ないすロウ! うらー(Урaaaа)っ!」

「イントネーションがロシア語だ……」

「《トリプル・パープルエッジ》……フィートちゃん、キャラ立ちがいいですね」

「だねー。面白い子だ」

「負けてられないわよね。……《トリプル・フリーズロア》!」


〈同志フィート!?〉

〈しれっと張り合ってんなイシュカ〉

〈やっぱ精霊二人の火力おかしいよ〉

〈ロウちゃん唖然としてるが〉


 フィートちゃんのそれ、突撃時の鬨の声だからね。槍向けて突っ込みながら言うとよく似合う。

 まず最初の一撃をロウちゃんが受け止めて、できた隙を突いてフィートちゃんが吶喊(とっかん)。ヒットアンドアウェイで切り裂きながら離れるフィートちゃんに当たらないように、私と後衛火力二人が追撃。

 ただでさえ過剰戦力なのに、ロウちゃんとフィートちゃんもいい動きをするからイージーモードになっている。私が一歩引いて前衛を二人に任せていても問題ないくらいだ。


 結局、急に現れたドレインフラワーも簡単に処理されてしまった。




「こいつ、前は強かったのにね」

「フィートちゃんの存在が大きいのよ。槍の間合いの広さが上手く使えてるから、攻撃の前を潰せるのね」


〈後衛組も息ぴったりなんだよな〉

〈デンガクやっぱ上手いわ悔しいけど〉


 イシュカさんが呟いた通りだ。私とイシュカさんとユナは《宿り木の小路》の時の苦戦が記憶に新しいドレインフラワーだけど、今回は相性がよかった。

 フィートちゃんが使っている槍は、平均的な物よりも少しだけ長い。これによって間合いも同時に長くなって、敵にとっては「超近接攻撃の間合いに誰もいない」状態になる。

 こうなるとあちらは間合いの広い攻撃をするしかなくなるんだけど、そういう攻撃は予備動作が長いんだよね。


「そして、こちらには有効な遠距離攻撃を使える火力職が三人います。これを上手く使うと……」

「ある程度は嵌め技が完成するってわけだね」

「なんとなくやってはみたけど、上手くいくものなのねコレ」


〈んなことできんの?〉

〈なんとなくで人外プレイするな〉

〈トップ組はほんと人間超えてるからな〉

〈やっぱこいつらおかしいよ〉

〈若者の人間離れ〉


 敵の攻撃の出を読み切って、その直前に合わせて強攻撃を当てる。これにより敵の行動予定がキャンセルされるから、畳み掛けたいところを少し我慢。敵が立ち直って攻撃をしようとしたところに、また強攻撃をぶつける。

 これを繰り返すことができてさえしまえば、ある程度だけど一方的に殴ることができる。DCOの優秀なAIはこれを何度か続けると打開行動を取るから、無限ループにはならないんだけど……強攻撃三発で倒せてしまう敵なら関係ないよね。

 イシュカさんの火力はわかっていたけど、あまり人気な武器とはいえない弓でこれについてくるデンガクさんも紛れもない強者である。


「ただ、それができたのも初動を潰してくれたフィートちゃんのおかげ……」

「ルヴィアさん。それさ、最初から三つ同時にぶつければ倒せるんじゃないの?」


 それを言われると弱い。事実そうで、これは魅せプレイのたぐいである。

 ただ、私が何かを言う前に別の声が聞こえた。


「…………フィートちゃん」

「な、なに、ロウ」

「……突っ込まないほうがいいことも、あるんだよ……」

「…………はい」


 ……もしかして、ロウちゃんって最強だったりする?

やっぱりルヴィアと愉快な仲間たちなのでは?

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『Dual Chronicle Online 〜幻双界巡りの物語帳〜』

身内による本作別視点です。よろしければご一緒に。

『【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】』

こちら作者による別作となっております。合わせてお読みいただけると嬉しいです。


小説家になろう 勝手にランキング

― 新着の感想 ―
[一言] ルヴィアと愉快な仲間達です(真顔) Урaaaа!!!!!!!!
[一言] 更新お疲れ様です! 確かに、季節関係なしに咲く花ってのは幻想的ですけど、怖くもありますね、、、 はぇ~、、、ちいかわ構文、ですかぁ、、、 そしてそのセリフはッ!例の多くのFGOプレイヤーの涙…
[一言] やっぱりルヴィアと愉快な仲間たちだね ネットミームの不可解な寿命の長さは分かるヲタクに分類されない人でも野獣先輩、エルシャダイはミーム汚染食らってる位には生命力強いからね あとは、ねこですよ…
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