106.効果確認は大事、古事記にもそう書いてある
翌日のこと。
今日は二十四日、土曜日だね。海イベントからは早くも一週間となる。
「今日はちょっと約束があるのですが……少し時間に猶予があるので、雑談ついでにいろいろと整理しておきましょうか」
〈OK〉
〈最近情報量多いもんな〉
〈情報整理助かる〉
場所は夜王都 《リベリスティア》の北方、先日攻略された《フィーレン》の街だ。この街を守っていた火の精霊も無事復活して、少しずつ鍛治の街の姿を取り戻しつつある。
火の精霊とはさっき少し話してきた。まだ本調子じゃない様子だったから配信は控えたけど、ひとまず問題なさそうでひと安心だ。
「私のスキルだったり、前線の進行状況だったり、私があちこちに寄り道している間に進展があったものも多いですからね。そろそろ話しておくべきかと思いまして」
あと、この間「詳しくは今度」って言ったこともあったからね。サイド攻略続きで私自身もあまりのんびりできていないし、そろそろ羽休めもいいだろう。
〈初見さん騙されないで、お嬢の羽休めは前線攻略だから〉
〈雑魚戦闘は雑談回〉
〈格上のMobとソロで戦いながら普通に喋るのお嬢くらいだぞ〉
お黙り……と言いたいところなんだけど、全部事実なんだよね。ここのところ気を抜けない唯装クエストや特殊イベントが多かったし、メイン攻略の難易度で普通の敵と戦うと時々雑談になる。
三つ目については、ソロプレイを多用しながらレベルに余裕がある配信者が私くらいしかいないからだけど。
とはいえ、今回は本当に雑談だ。今も街中の広場にいるし、待ち合わせがここだから喋りついでに戦いに行くつもりもない。
だからみんな、そういうフリみたいなコメントは一旦やめようか?
「さて、まずはこれからいきましょうか。私のステータスと、スキル関連の話ですね」
言いつつ、自分のステータス欄を見る。今回も例によって、リスナーに全部見せたりはしないけど。
“虹剣の精霊”ルヴィア Lv.38
性別:女
種族:精霊
属性:幻
特殊:《魔力生命体》、《本質の精霊・虹魔剣アイリウス》、金属防具・アクセサリー装備不可、《虹の魔術》、《魔力覚》
状態:正常
VIT:42(+0)
STR:109(+0)
AGI:285(+20)
DEX:195(+5)
INT:325(+20)
MND:308(+35)
種族スキル:《エレメンタルステップ》Lv.65 《植物魔術》Lv.72 《薬草看破》Lv.29 《鷹目》Lv.58 《虹魔術》Lv.70 《魔力察知》Lv.65 《瞑想》Lv.17 《精霊の唄》Lv.18 《浄化》Lv.48
汎用スキル:《片手剣術》Lv.61 《パリィ》Lv.64 《回避》Lv.56 《治癒術》Lv.46 《解体》Lv.52 《直感》Lv.61 《攻撃予測》Lv.66 《鑑定》Lv.39 《採集》Lv.35 《罠探知》Lv.31 《生活魔術》Lv.50 《魔術学》Lv.64
そろそろ新しいスキルを取って育てようかとも思っているんだけど、これといったものが見つからずなあなあになっている。だって私、《虹魔術》のせいで攻撃魔術は全て回収されているし、アイリウスがゴネるから他の武器は使えないし、さすがに《陰陽術》は使わないし……。
《精霊の唄》は裏でちまちま育てているけど、表では必要になるまでは使わないつもり。汎用系も今のところあんまり必要性を感じないんだよね。
ただ、既存スキルはそれなりに育っている。前回細かく紹介したのはベータのときだったから、それ以降に習得したものを挙げていこうか。
「《片手剣》。スキルレベル50と60の習得アーツですね」
〈お嬢はあんまり使わないけど〉
〈もっと剣アーツ使ったげて〉
「MP消費が痛いんですよ。特に火力系、私の場合は魔術を撃った方が強くて」
まあ、それは当たり前。だって私、既にINTがSTRの3倍になっているから。このままのプレイスタイルである限りは私はVITとSTRはほぼ使わないから、そもそも振っていないのだ。
《片手剣》SL50、アーツ名は《カウンターアタック》。敵の懐に入って、回避した攻撃の威力に応じた火力上昇を得る。ただしこの時に《回避》スキルのアーツは併用できない。
というか、ぶっちゃけると《回避》SL40の《カウンター》と思いっきり被っている。性能はこちらが上位互換で、片手剣使いだけ倍率を高く使えるという仕様だ。
SL60、《ジャイアントキリング》。いかにもな名前の通り、大型の敵に対して使うアーツだ。地面スレスレから斬り上げる動作とともに、刀身が伸びるようにエフェクトの刃が発生して攻撃範囲を広げる。
威力にも少しブーストがかかるが……皆さんお察しのことかと。
「私の場合、そもそも飛べば届くのでMPの無駄です。つくづくこの時点では想定されていませんね、飛行能力付き剣士……」
〈草〉
〈お嬢らしいわ〉
〈想定を超えていけ?〉
さくさく行こう。次、《パリィ》と《回避》。私はまだ《回避》のスキルレベルが60に届いていないけど、前回の紹介時点で《パリィ》スキルレベル40は不明だった。未紹介のアーツは合わせて三つだね。
先に《回避》から。SL50、《インターセプト》。敵の攻撃を回避してから次の攻撃が繰り出されるまでの間、自身に少量のバフがつく。
効果は微々たるものだけど、狙わなくても達成できるほど条件が甘いのが特徴だ。速度バフのような感覚が狂うものは付与されないから、あって損するものではないだろう。現に私もよく発動している。
続いて《パリィ》SL40、《ドラッグパリィ》。これはそれまでのアーツと真逆の使用感になっていて、どちらかというと受け流しに近い挙動となる。払わずに接触時間を長く取りながら鈍角に流すことで、敵の体勢を崩しやすくなる。
これは非常に有用。なにしろパリィ主体の戦法というのは、狙えるのであればむしろ積極的に受け流しを狙う。DCOではこの《ドラッグパリィ》の効力を警戒して、そうされないために攻撃側はなるべく刃を立てて武器を使うことが多い。戦闘の立ち回りにまで影響される超重要アーツである。
続いて《パリィ》SL50、《ホームラン》。これは……
〈!?〉
〈なんて??〉
〈待て待て待て〉
〈お嬢が壊れた〉
〈は??????〉
〈聞き間違いかもしれん、もう一回頼む〉
「なんですかいきなり。……《パリィ》スキルレベル50、《ホームラン》です」
〈マジじゃねーか!!!〉
〈バントどこに行ったんだよ〉
〈バントホームランとかバグか?〉
〈おいバントしろよ〉
……うん。言いたいことはわかる。SL40までのアーツは全部バントからきていたものね。でもね皆、本当にホームランなんだ。私も配信外で習得した時には面食らったんだけど、結局話す機会がないまましばらく経っちゃったんだ。
気を取り直してSL50、《ホームラン》。もうバント系の名前が思いつかないのか、それとも野球の打撃関連ならなんでもいいのかはわからないけど、もうこのまま続けるからね。
性能は単純、思いっきりフルスイングでパリィを成功させた時、敵に物理バッドステータスを与える。具体的にはSTRに応じた行動遅延と、敵が武器を使っていた場合は確率で取り落としが起こる。
……うん、扱いづらい。そもそもフルスイングなんて隙だらけの行為を、それも攻撃を受けるタイミングで使うこと自体が非常に稀だ。成功したら確かに強力だけど、発動条件のフルスイング自体こちらがディレイしているようなものだし……。
しかも極めつけにはSTR参照。私には縁のない技だろう。
〈柿〉
〈タンコロリン〉
〈むしろお嬢にしか……〉
知らないやい。
次、《パリィ》SL60、《スクイズ》。
……それでは皆さん、ご唱和ください。
「戻るんかい! バントは打ち止めだったんじゃないんかい!!」
〈戻るんかい!!〉
〈かい!!!〉
〈俺らの代弁助かる〉
〈ほんそれなんだよな〉
〈お嬢って普段は清廉だけどこういう時に俺らと一緒になってくれるから好き〉
ちなみに性能はというと、パリィをクリティカルで成功させた時の効果を上昇させるパッシブアーツだった。
もはやスクイズ要素、難易度しか残ってないじゃない……。
「次は属性魔術ですね」
〈切り替え早いっすね〉
〈さっきまであんなに叫んでたのに〉
〈さすがお嬢、俺たちとは“速度”が違うぜ〉
「どんどん行かないと時間がかかりますからね」
スキルレベル40、《エッジ》系。これは私も……というか、私が飛び抜けて多用している。
刃のような形の魔術を飛ばすもので、性能はやや極端。高威力と低燃費という相反する要素を兼ね備える代わりに、魔術師としては本来非常に重要な射程距離を捨てている。《シュート・キャスト》の場合、なんと射程はわずか5メートル。パーティ戦闘の時の魔術師は10~15メートルほど離れることが多いから、これでは届かない。
では《ポイント・キャスト》を使えばいいじゃないか、そう思う方もいるかもしれない。しかし実は《ポイント・キャスト》には重大な難点がある。「術者と発動地点が離れれば離れるほど、詠唱速度と威力が落ちる」のだ。
これはつまり、火力効率とDPSが落ちるということ。無理やり《ポイント・キャスト》でエッジ系を使うより、素直に射程の長い魔術を使った方が結果的にはいい。
そういうわけで、これは普通のパーティ純魔ではうまく扱えない。では誰が使うのかというと、これは二種類が存在している。魔法剣士と、妖精だ。
前者は魔法剣士というよりは、魔法前衛と呼んだほうがいいかもしれない。その難易度から当初は私だけだった魔法前衛だけど、クレハとジュリアが手を出したのを機に余裕を得た前線組の一部が練習を始めたのだ。そろそろ実戦での使用者も現れるかもしれない。
なお、この場合の魔法前衛とは「近接武器を使いながら魔術も併用する前衛職」だ。……思い返せば、私のアイリウスには《魔装》といういかにもなカテゴリが付属していた。これがあるということは、魔法前衛は想定内のスタイルということか。
一方で後者の妖精は、昨日のイシュカさんとメイさんを思い浮かべてもらえれば早いかもしれない。妖精は的の小ささと飛行能力のおかげで、飛びながら回避行動を取ることで比較的近距離に詰めることができる。これを用いて、戦闘機のごとくヒットアンドアウェイを行うのだ。
これは特殊な挙動だから連携が難しいということで、今もまだ一部妖精を擁するパーティで研究中。もしもこの戦法が上手くいけば、妖精たちの火力はさらに上がることになるけど……。
「続いてスキルレベル50、《ペイン》系。エッジほどではないにせよ、これも最近はたまに使いますね」
〈ロマン砲?〉
〈当たれば強い〉
〈隙があれば強い〉
〈“たまに”だな〉
〈あの弱そうなエフェクトすき〉
《ペイン》系は侵食というか、毒というか(いや、毒は状態異常として存在するけど)、そういうイメージの魔術だ。弾速が遅く当たりにくい代わりに、一度当たってさえしまえばスリップダメージを含めて合計ではかなりの高火力を誇る。
問題点はふたつ。弾速があまりにも遅すぎて鈍重なゴーレムにすら簡単に避けられることと、スリップダメージが大きい分瞬間火力には劣ること。行動遅延や硬直を作れば当たるけど、ペイン系のためだけにこれらのバッドステータスを狙うのはさすがに非効率だ。
総じて、大型で当てやすく高耐久なボス戦専用の魔術である。警戒があるのか動かないボスですら迎撃などで潰してくるから、やはり隙を狙う必要はあるんだけど。
「スキルレベル60、《ブレス》。なかなか出番がありませんでしたが、昨日やっと使いましたね」
〈なんか饒舌だな〉
〈まあお嬢も攻撃面は魔術だから〉
〈ブレスかっこよかった〉
〈あれいいよね〉
《ブレス》系は昨日見せた通り、45×45度の円錐型範囲射出攻撃だ。多段ヒットの判定もあり、超近距離の火力と範囲による複数の小型敵巻き込み攻撃の二面性を持つ。
ゼロ距離からならエッジ系よりも高火力で、一方で離れれば密集した敵をまとめて攻撃できる。……これだけ聞けば聞こえはいいんだけど、少なくとも後者は《プロード》系でいい。前者も魔法前衛ならともかく、妖精にとってはその距離の危険度はエッジ系の比ではない。
絶妙に器用貧乏で、やや扱いにくい魔術といえる。これを上手く使えるようになれば、もっと幅が広がると思うんだけど……。近接の時に使ってみればもう少し変わるかな?
「そして最後、《トラップ》系。これはスキルレベル70での取得ですね。実は私も昨日覚えたばかりで、ついさっき試し撃ちしてきました」
〈最新鋭じゃん〉
〈まだトップ組でも一部しか覚えてないやつ〉
〈お嬢SL70あるのか〉
「そんなトラップですが、一言で表すなら『地雷』です」
名前から想像がつくかもしれないけど、これは珍しい設置型の魔術だ。《シュート・キャスト》なら自分の足元、《ポイント・キャスト》なら指定した座標の地面に仕込んで、敵がその上を通過したら炸裂して噴火のような攻撃が発生する。
これが非常に高火力で、当たってさえしまえばペイン系にも勝る火力が即時与えられる。詠唱も射程も目立って悪くはなく、なんと対象が飛んでいても起動するし当たる。
ただ、やはり全てが上手くはいかないもので、一度仕込まなければならない分どうしても取り回しが悪い。既にいる敵の真下には置けないし、魔力感知や危機察知ができる敵は避けてしまう。当てる難易度だけを見るのであれば、ペイン系の方がマシだ。
「とはいえ、これは使いようですね。当たりさえするなら最強なので、察知して避ける能力のない敵を狩るには凄くよかったです。イノシシなんかもう餌ですよ餌」
〈お嬢が怖い目してる〉
〈お嬢……いつの間にそんな立派な狩人に……〉
さて、これで属性魔術は終わり。続けて他の魔術も見ていこう。
RuviPedia編集班「よしきた」
攻略スレ常駐組「よしきた」
攻略wiki編集班「よしきた」
いろいろな振り返り、またの名をデータベースとも。30話と次話と合わせて読めば現時点のルヴィアの手札は網羅できるはずです。




