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若菜

「先生! 1位の奴って誰ですかっ? 」


 ほとんどの生徒が帰り、静まり返った校舎で俊樹の声が響いた。その声には、明らかに怒りが込められている。


「そ、そんなに気になるか…?」


 俊樹がここまで怒りを表すことは珍しいので、担任の早川創介はやかわそうすけ先生はたじたじだ。いつも中学校で1位を取っていた俊樹にとっては、これ以上に気になることなんてない。


 俊樹は、そんな早川先生の様子もお構いなしに言う。


「お願いします、先生! 教えてくださいっ!」

「あぁーー! 分かった、分かった。教えるからっ!」


 このままではきりがないと判断した早川先生は、若干老けたように見える。溜息をつき、目の前にいる俊樹の黒い瞳を見つめて言った。


「中間テスト学年1位はー……。柚里若菜ゆうりわかなだ」


 一瞬、俊樹は目を見開いたが、すぐに眉をひそめ、ゆっくりと早川先生から足元に目線を移動させながら


「………ありがとうございました。…さようなら」


 と言った。そして先生の返事も待たずに歩きだした。


 すでに俊樹の頭の中は、柚里若菜という人物のことでいっぱいだった。




――――柚里若菜。


 俊樹と同じく、1年2組の女子生徒だ。


 ウェーブのかかった茶色っぽい髪をポニーテールにし、揺れる度にシャンプーの香りがする。前髪は伸ばしてポンパドールにして1つにまとめている。くりくりっとした飴色の瞳に、黒く四角い額縁の眼鏡がよく似合っている。


 見た目はとても可愛らしい若菜だが、実は………サボり常習犯だ。


 ほとんどの授業を受けていない若菜だが、唯一、数学だけは真面目に受けている。


 休み時間は本を読んでいるか、寝ているか、どこかにいってしまうかの三択だ。


 俊樹は、左隣の席に座る若菜と話したことがなかった。話しかける前に、どこかに行ってしまうからだ。だから、若菜がどんな人なのかよく知らない。


(よし、明日、柚里さんに話しかけてみよう)


 まだ納得していない気持ちを自覚しながら、俊樹はそう心に決めた。








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